第25話「街を作ろうとしたらポイントがめちゃめちゃ溶けた」
というわけで――さっそく俺は、コアルームと十階層の間に、新たな階層を追加した。
ここに“街”を作る。魔王としての、新たな仮拠点だ。
イメージは、中世ヨーロッパ風の城下町。
石畳の広場に噴水、風車が回り、角張った屋根の家々が並ぶ通りには、パン屋や武器屋なんかも設置したい。
教会もいいな。尖塔が天に伸びてるようなやつ。
まぁ、まずは雰囲気づくりだろ。最初は見た目が大事だ。
で、建物の設置はっと……
……と思ったら、いきなり資源の壁にぶち当たった。
ダンジョン本体の構築と違って、建物は全て“ポイントで購入”しなきゃならない。
買ってから作り替えて、オリジナルの建物にするようだ。
しかも、値段がエグい。
「え、宿屋一軒で500ポイント!? 魔王相手にふっかけすぎじゃない!?」
思わずシステムウィンドウに声をぶつける。
いや、別に誰かが裏で操作してるわけじゃないのは分かってるけど、これはもうクレーム入れたくなるレベル。
とはいえ、グダグダ言っていても始まらない。
まずは、階層そのものを広げるところからだ。
空間拡張はポイントさえ払えば割と自由が利く。
最初は城の周囲だけだった空間を、東西南北へと伸ばし、街らしい区画を作るための土台を整えていく。
空間に広がりが出てくると、なんだかそれだけで都市っぽく見えてくるのが不思議だ。
そして次は、環境演出。
昼夜のサイクル、季節の巡り、風と雲、雨、朝靄、夜空に広がる星の瞬き――
細かいオプションを一つひとつ選んでいく。演出といっても侮るなかれ、これが雰囲気作りにはめちゃくちゃ重要。
つーか、こういうのもいちいちポイント高いんだよな……。
一個ずつは地味な加算でも、積み重なると恐ろしく重い。
まるで魔王税でもかかってるかのようだ。いや、俺が魔王なんだけど。
それでも、少しずつ形になっていく景色を見るのは、思った以上に楽しい。
なんというか――そう、箱庭ゲームにハマってる感覚に近い。
「あー、これ昔やってた街づくりシミュレーションに似てるかもな……」
ポイントと相談しながら、地形に合わせて建物を配置していく作業は、妙な中毒性がある。
ある意味、魔王のくせにまんまと仕組みの術中にハマってる気もする。
そして、その街の中心には――城を置いた。
もちろん仮設だが、外見はとびきり豪華。
黒い石造りの外壁に、高くそびえる塔、広々とした前庭。誰が見ても「あれが魔王の居城だな」と思えるやつだ。
名前も考えた。“魔王城ケルベロス”。
由来は単純。眷属が三人いるから、三つの首の番犬ケルベロスからとっただけ。
……まぁちょっと安直だったかなとも思ってる。でも勢いって大事だよな?
城の中には、俺の居室はもちろん、レイラ、ゼトス、リア、それぞれの部屋も用意した。
小規模な応接間に、仮設の執務室、ちょっとした食堂もつけて、住居としての最低限は確保。
今後客人が来る可能性もあるし、迎賓室なんかもいずれ作りたい。
それでも、まだ街全体としては、城と数軒の建物が並んでいる程度。
本格的な発展はまだまだこれからだ。
けど――ひとつだけ確信できたことがある。
街づくり、マジでポイントかかる!!
階層の拡張、環境の演出、建物の設置、それに付随する装飾やインフラ……全部が全部、ポイントをゴリゴリ削ってくる。
しかも撤去にもポイントが必要とか、アホか。
この階層を“街”として完成させるには、途方もない労力と、途方もないポイントが必要になる。
そうなると、”世界”を作るとしたら――?
「これは……頑張らないとなぁ」
ぼんやりそう呟いたけど、よく考えたら俺自身はほとんど稼いでない。
魔物たちが戦い、眷属たちが管理してくれている。
そう、俺は作るだけ。働いてるのは、周りだ。
――俺は構築する側、彼らは稼いでくる側。ま、役割分担ってことで。




