第24話「魔王、ダンジョンの限界に挑む――“街”構築計画始動」
リアの助言を受けて、俺はさっそくダンジョンの構造を見直すことにした。
ただし、今回は前回と違って本気だ。
――いや、今までも本気ではあったんだけど、今回は単に迷わせるだけじゃない。
魔物の配置数を増やし、それぞれの特性が最大限に活きるような構成を目指して再設計していく。
……のはずだったのだが。
「んー……なんか違うんだよなぁ」
何が違うって、ピンとこない。
見た目も罠の配置も、確かに前よりはずっと良くなってると思う。思うんだけど……何かが足りない。モヤモヤする。
そんなときだった。
ふと気配を感じて後ろを振り返ると、徘徊から戻ったレイラが、後ろからマップをのぞき込んできた。
「なんだか、階層数のわりに、どこもこじんまりとしてますね」
「……え? レイラ、それってどういうことだ?」
こじんまり?
結構凝ってる方だと思うんだけどなぁ。
俺の頭の上にはハテナが浮かぶばかり。よく意味がわからない。
そんな俺の様子を見て、少し離れた場所にいたリアが、くくっと笑っているのが目に入った。
その表情を見た瞬間、俺は察する。
あ、今の笑い……絶対俺をバカにしてやがる。
むかつくが、今はあえてスルーしてやろう。心が広い魔王だからな!
「今までは、ポイントが少なくて、その中でやりくりしてたので屋内空間みたいな階層でしたけど、今はポイントも多いですし……フィールドを作ってもいいのでは? と思いまして」
レイラの一言に、俺の脳がビビッと反応した。
「フィールド!? なにそれ! ダンジョンって無限迷宮みたいなのだけじゃないの!? それってもしかして……ゲームでいうオープンワールド的なやつもいけるってことか!?」
想像が膨らむ膨らむ。
大草原! 遺跡! 山岳! 気候とか季節もいじれたり!?
うおおお、テンション上がってきた!
「レイラ、それって……階層として一つの“世界”を作ったり、できるのか!?」
勢いに任せてそう訊ねると、レイラは首を横に振った。
「さすがにそれは無理かと。街ぐらいなら作れると思いますが」
「そっかー……」
思わず肩の力が抜ける。
いや、街でもすごいんだけどね?
でもさ、せっかくだし“世界”ってロマンじゃん……。
そんな俺の背後から、唐突に声が飛ぶ。
「できるぞ? 階層に世界を作ること」
「「は?」」
俺とレイラは、思わず同時に反応した。
思考が一瞬止まる。今、何つった?
できる? 世界が? 階層に?
リアの方を振り向くと、どこ吹く風の顔でこちらを見ていた。
「そこんとこ詳しく!」
「詳しくもなにも、おぬしや下等生物どもはよく知っておるではないか」
いや、知りませんけど。知らないから聞いているんだけど、なに。これなんか試されてる?
わずかに疑心暗鬼になりつつ、返答を待っていると、リアがぽつりと語り出す。
「異世界転移とか聞いたことあるじゃろ。あれは、ダンジョン内で死ぬ錯覚を見せて、世界を構築した別階層に飛ばしておるんじゃ。そうすれば、その階層の世界を冒険すればするほど、魔法も使われてダンジョンレベルが上がって拡張ポイントも増える」
なにそれ、初耳なんだけど!?
ロマンも効率も両取りじゃん!
しかも、その仕組みなら溜まる魔素をガンガン使って魔物をその階層に召喚すれば、悪食の件も解決する。
世界の掘り下げにもなるし、一石二鳥!
「なんでもっと早くそれを教えてくれないんだよ! ロマンもあってめちゃめちゃ効率いいじゃん!」
俺が詰め寄ると、リアが冷ややかな目でこちらを一瞥する。
「おぬし程度の格でそれが出来たら、誰も苦労せんわ」
「……たしかに」
ぐうの音も出ない。これは完全に納得してしまった。
そりゃそうだ、そんなすぐに世界作れるならみんな魔王やってる。
そもそも、リアの口ぶりからして、リア自身でも世界構築は無理なんだろう。
なら、俺なんかにできるわけがない。
「はぁー、じゃあ、せめて横にダンジョン広げるかー」
「主、街は作られないんですか?」
レイラの問いに、俺は少し気落ちしながら答える。
「今の俺じゃ無理なんだろ?」
だが、そこでリアが首を横に振る。
「わらわはそんなこと言うておらん。“世界”を構築するのは今の格では無理だと言うただけで、“街”が作れんとは言うとらんぞ」
「――え、作れるの? 街を!?」
失いかけていたワクワクが、一気にぶり返すのを感じた。
俺の中の魔王魂が、再び熱く燃え上がる。
――だったら、まずは“街”を作るしかないだろ!




