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働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜  作者: 烏羽 楓
第二章 動き出す利権争い

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第20話「命を削る願い、応じたのは“元魔王”」

 魔法陣が蒼黒く脈打つ。光が走り、雷がバチバチと弾け飛ぶ。


 疲労感に耐えきれず、俺はその場にへたり込むように身体をついた。


(マスター)!? 大丈夫ですか!」


 すかさず駆け寄ったレイラが、俺の身体を抱きかかえる。彼女の眉が、不安そうに寄せられる。


「……ああ、大丈夫。少し……疲れただけだ」


 息を荒げながらも、俺は魔法陣から目を離さない。

 魔力が流れ出ていく感覚。ごそっと、魂ごと削られたような虚脱感。それでも俺は、期待せずにはいられなかった。


 その“願い”に応えるように、魔法陣の中心から一筋の光が溢れ、小柄な人影が姿を現す。


 白銀の長い髪。猫のように釣り上がった目。華奢な体格とは裏腹に、周囲の空気を支配するような威圧感。


 現れたのは、腰から黒い翼を生やした一人の少女だった。


 その姿にレイラは目を丸め、俺は安堵した。


「……ははっ、マジで上手くいきやがった」


 ぐったりとしたまま、笑みがこぼれる。


 少女は無言で辺りを一瞥し、視線をヴァルトへ戻す。黄色の静かな瞳が、鋭く射抜く。


「お前が私を呼んだのか。いや――今は、“主”と呼ぶべきか? 魔王ヴァルト・ノクス」


 低くも凛とした、冷たい声だった。


「好きに呼んでくれ。今はお前の力が借りたいんだ」


 俺は言葉を続ける。


「魔王――リルベア・ベルベッティ」


 口にしたその名は、かつて討伐された魔王の一柱。

 本来、いくつか格が上がってからでなければ不可能な眷属の“指定召喚”。

 しかも相手は――”魔王”。

 

 俺は、この危機に一か八かでそれを強行したのだった。


「ふむ。なら、ヴァルトと呼ぼう。わらわのことは、“リア”と呼ぶといい」


 淡々とした調子で名乗る少女。だが、その声には力があった。


 俺は小さく頷いた。もうそれ以上、動く余力も残っていなかった。


「にしても、ヴァルトも無茶をしよるな。普通、思っても……魔王を召喚しようなどと考えもせんぞ」


「俺も賢いとは言えないからな。正直、無理だと思ってた。新参もので、格も上がってない状態で、しかも指定召喚で”魔王”なんて……無謀に決まってる」


 言葉の端に、自嘲が混じる。


「で? そこまでして、わらわを呼び寄せなければいけなかった原因は――」


 リルベアは言いながら、視線を監視モニターへ向ける。


「……あれか?」


 映し出されていたのは、十階層での戦闘。

 

 ゼトスとS級冒険者たちの激突は、さっきよりも更に激化していた。

 双方ともに傷だらけで、呼吸すら苦しそうだ。


「……なんとかできるか?」


 静かに問いかける。すがるようでも、信じるようでもなく、ただ真っ直ぐに。


「誰に言うておる」


 リルベアはふっと口元を緩めた。


「ヴァルトよ、副管理者権限をよこせ。……管理者権限のところから出来る」


 その言葉に、俺はうなずき、魔力タッチでウィンドウを操作する。


 権限の付与が完了した瞬間、リルベアの周囲の魔力が濃く変化した。


「……行ってくる」


 そう告げると、リルベアは背を向けた。


「お前を呼べてよかった。……後は頼む」


 呟くように背中へ投げかけた言葉に、リルベアは振り返らず、短く答えた。


「そこで見ておれ」


 その姿が、眩い光に包まれ、消える。


 

 ◆

 


 ――十階層。

 ゼトスとS級冒険者たちは、互いに疲弊し、睨み合っていた。


 呼吸が浅く、剣の握りも重そうだった。

 ゼトスの動きも鈍い。大技を撃てる魔力量は残っておらず、傷が多すぎて動きに切れがない。


 冒険者たちもまた、限界は近い。

 

 剣士もタンクも肩で息をし、汗と血にまみれていた。


 そんな中、ヒーラーの少女が――ようやく、静かに目を開ける。


 掌の魔方陣が、完成の輝きを放っていた。

 彼女が唱えていた“何か”が、いままさに発動しようとしていた――。

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