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働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜  作者: 烏羽 楓
第二章 動き出す利権争い

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第16話「忍び寄る影、S級の脅威」

 双角の迷宮に、静かな時間が流れていた。


 進化を遂げた“ゴブリンロード”と“ビッグスライム”がダンジョンに加わったことで、戦力はさらに安定。新たな配置により死角も減り、増加する冒険者たちにも、以前に比べて柔軟に対応できるようになっていた。


 モンスターの巡回ルートはゼトスとレイラが調整しており、各階層に適切な配置がなされている。レアアイテムの再配置や、低階層におけるギミックの更新も進められ、ダンジョンそのものの質は日に日に向上していた。


 だが、妙だった。


 そんなある日、コアルームで浮かびながらモニターを眺めていた俺は、ふと小さく唸る。


「……最近、三階層までの到達率が、やけに高くねぇか?」


 統計データによると、ここ一週間で潜った冒険者のほとんどが三階層まで踏破している。たしかに、ここ最近はBランク帯の冒険者が増えてきていたが、それにしても進みが良すぎる。


「以前は一階層で迷う者が大半だったのに、最近は一時間もあれば三階層までたどり着く……さすがに変だな」


 そのとき、レイラがモニターの調整をしながら口を開いた。


(マスター)。冒険者たちは“配信”という手段を使ってダンジョン内の情報を流しているのですよね?」


「ああ、そうだな。視聴数稼ぎと収入目的が主だろうけど……」


 言いかけて、俺はふと息を飲んだ。


「……まさか」


 予感が脳裏に閃いた瞬間、俺はネット検索に意識を向けた。


 ダンジョンシステムと連動する情報収集モードに切り替え、脳内モニターでブラウザを起動。キーワードは――「双角の迷宮 攻略」。


 ページが読み込まれるのに時間はかからなかった。


 そして、そこに表示されたのは――


「やっぱり、出てやがる……」


 攻略情報がまとめられた大型サイトの中に、“双角の迷宮”の詳細な項目ができていた。投稿者や配信者の記録をもとに階層構造が再現されており、出現モンスターの行動パターンや、設置トラップの特徴、さらには“中級宝箱”や“転送トリガー”の場所まで記載されている。


「どこぞの考察系配信者が編集してるな、これ……分析力高すぎるだろ……!」


 まるでゲームの攻略Wikiのように、情報が集約されていた。動画からの切り抜き、SNSでの共有、まとめサイト……連鎖的に情報が広がっている。


「わかってはいたけど……もう攻略サイトに載り始めたか。この前の五階層の一件で懸念はしてたけど、ここまで早いとはな」


 情報共有の速度は、人間の強みだ。こちらが対処するよりも先に、対策を練られてしまう。敵は強さだけじゃない。“知識”すら武器にしてくる。


「何か、対策を講じる必要がありますね。ダンジョンの“未知”が薄れれば、脅威ではなく“娯楽”に成り下がります」


 レイラの言葉に、俺は頷いた。


 そのとき――視界の隅で、ひとつのモニターがちらついた。


 二階層の監視映像だった。


 違和感を覚え、俺はその画面を拡大する。映し出されたのは、数人の冒険者。その姿を見た瞬間、全身の神経が一気に研ぎ澄まされた。


「……こいつらは……!」


 見覚えのある顔ぶれ。あれは、前世の頃から業界では名の知れた存在――大手企業のお抱えS級冒険者チームだった。


 “戦闘能力・連携・実績・知名度”どれをとっても一級。戦うというより、“潰しにくる”連中。


 その瞬間、ゼトスから念話が届いた。


『主、二階層から強力な魔力反応を確認しました。いかがなさいますか?』


 ゼトスを向かわせるか? それともレイラか?


 いや、自ら対応するべきか……。


「いや、いい。一旦戻ってきてくれ」


 俺は即答できなかった。


 彼らが五階層を突破するのは、ほぼ確定事項。十階層まで辿り着くのも時間の問題だろう。もちろん、ゼトスやレイラをぶつければ、ある程度は食い止められる。


 だが、それでも――“万が一”という言葉が、頭をよぎる。


 あのメンバーなら、ゼトスを倒す可能性すら否定できない。


 レイラを失うリスクは、もっと避けたい。


「……くそっ、厄介なのが来ちまった……」


 目を閉じ、静かに考える。


 選択を誤れば、すべてが崩れる。だが、何もしなければ、彼らは間違いなく“ここ”へと近づいてくる。


 ――俺は、どうする?


 沈黙のまま、モニターを見据える。その奥にいる彼らは、もうすぐ“この迷宮の本当の姿”に手を伸ばすだろう。


 その時、何を見て、何を思うのか。


 そして俺は――それを、迎え撃てるのか。


 選択の時は、刻一刻と迫っていた。

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