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働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜  作者: 烏羽 楓
第二章 動き出す利権争い

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第15話「支配者の資質」

 訓練場に静寂が満ちる。


 対峙するのは、進化を遂げた“ゴブリンロード”と“ビッグスライム”――そして、俺。


 宙に浮かび、闇の魔力を体内で巡らせながら、じりじりと間合いを測る。敵意はない、だが殺気はある。この空気感が、妙に心地いい。


「さあ、来い」


 その一言を皮切りに、ゴブリンロードが咆哮を上げて突っ込んでくる。重たい金属音と共に振り下ろされる巨大な斧。その風圧すらも切り裂くかのような一撃を、俺はふわりと滑るように回避する。


 次の瞬間、ビッグスライムが圧縮したスライム弾を射出。空気を震わせて飛んできたそれを、俺は魔力を放ち、弾き飛ばす。


 ――悪くない。力も、スピードも、進化前とは別物だ。


「試してみるか」


 俺は手をかざす……いや、正確には“意識を集中”させた。そこから滲み出す黒の魔力は、滑らかに、そして鋭く空間を染め上げる。


「《シャドウニードル》!」


 足元から飛び出した闇の棘が、ゴブリンロードの脚をかすめる。その反応速度もなかなかだった。すぐさま、次の呪文を紡ぐ。


「《ナイトチェイン》」


 闇の鎖がうねり、ビッグスライムの身体に巻きつく。数秒間の拘束、それだけで戦況が変わる。


 ――攻撃系、捕縛系、妨害系。

 闇魔法、万能すぎないか?


「楽しいな……!」


 思わず笑みが漏れた。俺はくるくると回避しながら、的確にカウンターを差し込む。二体がかりでも攻撃が当たらない。いや、当てさせていない。


 訓練場の端で見守っていたレイラとゼトスは、その様子に目を見張っていた。


 「……想像以上ですね、(マスター)は」


 レイラが、わずかに驚きと感嘆を込めて呟く。


 「ふむ……レイラ殿。もし主と戦うとしたら、勝てますか?」


 ゼトスがふいに問いかける。


 レイラは少しだけ沈黙し、慎重に言葉を選ぶように答えた。


「“現段階”なら勝てます。ですが……戦闘経験のない今でこの強さ。これから成長されれば……間違いなく、勝てなくなるでしょう」


「同感ですな。進化の伸び代が規格外すぎます」


 再び訓練場に視線を戻すと、俺は既に攻守を逆転させていた。ゴブリンロードの斧を寸前で回避しつつ、ビッグスライムの跳躍を読んで魔法で妨害する。


 それでも彼らは進化魔物。反応は鋭く、持久戦に耐えうるだけの魔力もある。が――


 俺には“理解”があった。


 自分の動き、魔法の性能、そして彼らの癖と特性。


「なるほど……もう、わかった」


 そう呟いた次の瞬間、俺は体内から、別々の詠唱を発動させる。


 「《ダークホールド》《シャドウニードル》!」


 空間が震える。


 「なっ……!? 多重発動……!」


 レイラが目を見開いた。ゼトスも息を呑む。


 闇の鎖が二体を瞬時に拘束し、直後、地面から黒い棘が伸び――


 寸分の狂いもなく、魔物たちの“核”の目前でピタリと止まった。


 「……決着、ですな」


 「ええ。(マスター)の完勝ですね」


 静かな緊張が、訓練場を満たしていた。


 俺はゆっくりと魔法を解除し、二体を解放する。


 「お前たち、強かったな! 進化して、より力をつけたのがわかった。これからも俺のために、その力を尽くしてくれ。期待してるぞ」


 その言葉に、ゴブリンロードとビッグスライムは震えるように頭を垂れた。誇らしげに、そして心からの忠誠を誓うように。


 言葉はいらない。その仕草がすべてを語っていた。


 ――この瞬間、確かに俺は“魔王”として、ひとつ階段を登ったのだと実感した。


 模擬戦は終わった。


 だが、俺たちの物語は、まだ――始まったばかりだ。

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