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働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜  作者: 烏羽 楓
第二章 動き出す利権争い

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第14話「訓練場にて――魔王、初めての戦い」

 ――翌日。


 新たに強力な冒険者が現れることを想定し、俺たちは早速動き出した。


(マスター)、調べたところ、ランクアップの条件を満たしているのは、ゴブリンが三体、スケルトンが一体、スライムが二体です」


 レイラが報告してくる。


 条件を満たす魔物が、思ったよりも少ないのは意外だった。だが、質の高い個体が数体でも進化すれば、ダンジョン全体の戦力は格段に上がる。なにより、この“ランクアップ”という試み自体が、俺にとっても大きな転機になる予感があった。


「よし、それじゃあ準備を始めようか」


 俺はすぐさまコアルームの一角を拡張し、新たに“訓練場”を作り出す。


 広々とした円形の広場。床には魔法陣と連動した制御ラインが走り、壁際には観察用のクリスタルスクリーンがいくつも設置されていた。中央には魔素の循環を制御する柱。まるでゲームのボス部屋のような、荘厳な雰囲気すら漂っていた。


「おぉ……」と、ゼトスが感嘆の声を漏らす。


「さすがは主。短時間でこの規模の施設を作るとは……」


「昔遊んだゲームのステージを真似ただけなんだけどな」


 さっそくレイラの指示で、ゼトスが条件を満たした魔物たちを訓練場へ呼び寄せる。個体数こそ少ないものの、どれも一定以上の実戦経験を積んできた個体ばかりだ。緊張感を滲ませながら整列した魔物たちに、俺は静かに告げる。


「それじゃあ――始めようか。“ランクアップの儀”を」


 俺の言葉と同時に、訓練場の中央に配置された魔法陣が淡く光を放つ。その輝きが、魔物たちの足元に伝播していき、やがて彼らの身体を包むように黒い繭が生まれた。


 不気味なほどの静寂が場を支配する。


 繭に包まれた彼らの姿は、もはや確認できない。だが、そこには確かに“変化”の兆しがあった。


 数分――いや、もっとかもしれない。


 最初に崩れた繭は、音もなく砂のように崩れ、中には何も残されていなかった。続いて二体、三体と崩れ――


「……失敗、ですね」


 レイラの言葉が、静かに空気を割る。


 思ったより成功率が悪い。ランクアップの為とはいえ強くなった個体を失うのは痛いな。


 生き残ったのは、二体だけだった。


 一つ目の繭が脈動を強め、光を発したかと思うと――パァン!と音を立てて弾けた。


 現れたのは、筋肉質で黒鎧を纏った“ゴブリンロード”。身長は以前の倍近く、肩には棘のような瘤があり、目は深緑に光っていた。


「……すげぇな。オーラが段違いだ……」


 そしてもう一体。


 ぬるり、と音を立てて姿を現したのは、半透明の体を蠢かせる“ビッグスライム”だった。中心に輝く核は紫色に煌めき、まるで魔石のような重厚感を放っている。


 どちらも、見た目だけで明らかに格が違う。


 そんな二体を見て、ふと心に浮かんだアイディアに、俺はニヤリと口元を緩めた。


「なぁ、お前ら。ちょっと、俺と模擬戦してみないか?」


「「……え?」」


 レイラとゼトスが、揃って固まった。


(マスター)!? それはさすがに無謀かと! 魔王といえど、戦闘経験のない状態で進化個体と模擬戦は――!」


「ご冗談を……!」と、ゼトスも焦ったように言う。


 だが俺は、浮遊しながら静かに彼らを見渡し、言葉を返す。


「なんかさ、身体が教えてくれてるんだよ。負ける気がしないって」


 その声に、レイラとゼトスは不安そうに顔を見合わせる。


 だが俺は、ふわりと訓練場の中心に降り立つと、魔素を軽く練って構えた。


 「さて……俺がどれくらいやれるのか。確かめさせてもらうぞ」


 対峙するビッグスライムとゴブリンロードが、一歩前に進み出る。


 魔素が、訓練場に満ちていく。


 ――魔王と進化魔物の、初の模擬戦が幕を開けようとしていた。

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