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働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜  作者: 烏羽 楓
第二章 動き出す利権争い

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第12話「魔王とダンジョンと資本主義」

 記事の見出しが、視界の中で点滅していた。


『冒険者組合と数社の大企業が“双角の迷宮”制圧に向け、攻略を正式に発表』


 その文言を見た瞬間、俺は思わず眉をひそめる。


「遅かれ早かれくるとは思ってたけど、やっぱりきたか……」


 レイラが傍らで静かに画面を覗き込む。


(マスター)、ついに動き出しましたか?」


「ああ。組合も企業も、このダンジョンを奪いに本腰入れてきたってことだ」


 ――だが、そこでふと疑問がよぎる。


「なぁ、レイラ。ちょっと確認したいことがあるんだが」


「なんでしょう?」


「例えば……この“ダンジョン”のコアって、俺自身なわけだよな? 他のダンジョンみたいに、誰かがダンジョンコアを制圧できれば所有権を主張できるだろうけど……俺の場合ってどうなるんだ?」


 人間だった頃の知識では、世界中で確認されている魔王の数は片手で数えるほど。そのうち、実際に倒されたのは一人だけ。そしてその魔王のいたダンジョンは、今も消滅せず、国家管理下で運用されている。


「俺が知ってる魔王のダンジョンは、魔王が倒されてもダンジョンが消えなかったんだ。例外ってあるのか?」


 レイラは首を横に振る。


「例外はありません。ダンジョンコアが破壊されれば、そのダンジョンは確実に消滅します。ただし……(マスター)のように“ダンジョンコアを取り込んだ魔王”という存在は、私の知る限り前例がありません」


「……俺は特殊なタイプってことか」


 俺が倒されたら、このダンジョンも消える。そう考えると、さすがに身が引き締まった。


 そのとき、ゼトスがコアルームに戻ってきた。


「戻りました、主!」


 ……ん? なんか様子がおかしい。


「って、ゼトス! その肩……怪我してるじゃないか!?」


「ご心配なく! ただのかすり傷です! 少々手こずった相手がいただけでして!」


 血が滲んでるじゃねえか。俺は急いで回復薬をかける。


「……お前が怪我するなんて珍しいな。何があったんだよ」


「冒険者の中に、なかなかの強者が混じっておりまして。しっかり倒しましたので、ご安心を!」


「いや、俺が心配してるのは、ダンジョンじゃなくてお前の方だよ」


「主……! ありがたき幸せ!」


 ゼトスが尻尾をぶんぶん振りながら伏せる。ほんと、こいつはわかりやすいな……。


「でも、ゼトスが怪我するぐらいの冒険者が現れたってことは、この記事の内容……あながち間違いじゃなさそうだな」


 並みの魔物じゃ、対抗できなくなってくるし、上位の冒険者ならトラップも意味ないだろう。

 さて、どうしたものかな。


 俺が悩んでいると、ゼトスがふと提案してくる。


「主、魔物たちの“ランクアップ”を試みてはいかがでしょうか?」


「ランクアップ? なんだそれ?」


 問いかけると代わってレイラが説明を引き継ぐ。


「魔物たちにも、(マスター)と同じように“格”が存在します。条件を満たした個体には“進化の試練”を与えることが可能です。試練を乗り越えれば格が上がり、上位個体へと進化します」


 おお、それは面白い。が――


「ただし、失敗すれば……死にます」


 ……ですよねぇ。

 そんな簡単な話じゃないのは分かってたよ。


「なかなかシビアだな。でも、冒険者側も強くなってきてるし、やる価値はあるか……」


 そう言って画面を眺めていた、その瞬間だった。

 突然、モニターの一つが自動で切り替わる。


 そこに映っていたのは――


「五階層……!?」


 俺の声に、レイラとゼトスも一斉に反応した。


「これは……!」


「ついに五階層へ……!」


 設定していた監視機能。中ボスの部屋に誰かが侵入すれば、自動で表示される仕様にしておいた。


 俺たちは、息を呑んでモニターに見入る。


 “あの部屋”に到達するということは――


 このダンジョンに、新たな転機が訪れようとしているということだった。

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