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働きすぎた社畜、死んだらダンジョン核に転生して魔王に!? 〜自由に生きてたら、気づけば勇者と結婚してました〜  作者: 烏羽 楓
第一章 しゃべる石ころ、魔王になる

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第9話「“双角の迷宮”と呼ばれているらしい」

 五階層の“マザーウィッチ”――その召喚が完了した直後、コアルームの空気が一変した。


 禍々しい瘴気のようなものが地面を這い、空間が軋むような重圧が押し寄せてくる。


 召喚陣の中心に立っていたのは、腰を曲げ、ぼろ布をまとった不気味な老婆の姿。


 しかし、目だけはぎらりと光を放ち、その存在感は他の魔物とはまるで別格だった。


「……うわ。マジで、来たな。強者の“圧”ってやつだ……」


 俺はしばし、言葉を失っていた。


 この老婆――マザーウィッチは、間違いなくこのダンジョンに新たな“格”をもたらす存在になる。そう、直感で確信した。



 ◆

 


 ――それから数日後。


 俺はコアルームに浮かびながら、システム内の“冒険者配信チャンネル”を開いていた。


 ……いや、なんでこの世界のダンジョンシステム、ネット繋がってるんだ?

 便利だし、ありがたいけども。

 

 ふと疑問に思いながらも、しっかり配信をチェックしているあたり、もう慣れたもんだ。


 前世の社畜時代も、こうして夜な夜な他社のダンジョン配信を見ては勉強してたなぁ……。


「やっぱ、他のダンジョンって、ちゃんと作り込まれてるな……」


 改めて思う。罠の配置や誘導導線、演出の緩急――プロの仕事だ。


 俺のやってることは、まだまだ甘いな……。


 そんな時、ふと画面の横に流れていた配信のコメントが目に留まった。


『最近できたダンジョンで、“双角の迷宮”って知ってるか?』


『ん? 双角……?』


『あー、前にCランクの盗賊(シーカー)系冒険者が金髪の人型魔物に殺されたのが配信で流れたやつだろ?』


 え、それって――レイラのことか?


 ダンジョンが出来て最初の頃に、そんな出来事があったのを俺は覚えていた。

 このダンジョンが知られるようになったきっかけの一つでもある。


『確か、最近イレギュラーエネミーで銀の毛並みのでっかいウルフ系魔物も出るらしく、そいつもクソ強いらしいな』


 あぁ……ゼトスもバッチリ認知されてるわけね。

 レイラと日替わりで見て回ってもらってるからなぁ。


『そうそう。その二体のイレギュラーエネミーが強すぎて、“双角の迷宮”って名前がついたらしい』


 自分のダンジョンに名前がついていることに俺は思わず苦笑を浮かべた。


 双角って、レイラとゼトスの“金と銀”を対としてイメージしてるのかな?

 西遊記とかで見る金角と銀角みたいな。


『まぁ、あんだけ強かったらイレギュラーエネミーというより、イレギュラーボスだけどな』


『それはそう』


『だけど、あのダンジョンのヤバイところって、低階層から誰も潜れてないことなんだよな』


『は? マジで?』


『マジマジ。最高到達点でAランク冒険者4人のパーティが三階層に到達してるけど、断念して撤退してるしな』


『俺、あそこ行ったことあるけど、1階層が迷路になってて、ようやくクリアしたと思ったら外に出されて、マジで意味わかんなかった』


 うわ、めっちゃ評価されてるじゃん……!


 画面の前で、俺は思わずニヤけた。つい口元が緩む。


「いやぁ~、照れるなあ。俺、意外とやれてた?」


「……(マスター)。気持ち悪いです」


 レイラの冷たい声が背後から飛んできた。


「ひ、ひどくない!? ちょっとぐらい喜んだって良いじゃん!」


「別に喜ぶのは構いませんが、その顔……いえ、その目玉、どう見ても油断してる犬みたいに緩んでいます」


「誰が犬目玉だコラ!」


「言ってないです」


 軽口を叩いていると、ふと頭の中にゼトスからの念話が届いた。


『主。一階層ダンジョン北側通路にて、少し気になる人物の姿があります』


「……気になる人物?」


 俺はすぐさま、ダンジョン監視モードへ切り替えた。


 さて、今度は――どんなお客さんがやってきた?

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