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第9話 女子会

「それで?何を話せばいいの?」

 「昔話がいいですねぇ。小さい頃はどんな子供だったんですか?」

 「子供の頃ね…。私の両親はどっちも子供に関心のない親だったの。父は仕事、母親は遊び歩いていてどちらも家に殆ど帰ってこなかったわ。私の家には家政婦と家庭教師しかいなかったわ。」

 「うへー。金持ちの家も大変だー。」

 「…ふふ。何そのバカみたいなリアクション。」

 「あれ?私また何か間違ってました?すみません。人と関わることがないもので…。」

 「いや。玲が一番正しい反応なのかもね。だからね。私は親に認めて貰えるように必死に努力したの。運動も勉強も一番取れるようにね。でもあの人達は私が優秀でも落ちこぼれでも関係なかったみたい。私が両親に愛されたと感じたことは一度もなかったわ。」

 「金だけで子育てできるわけないのにねぇ!ミナを悲しませるなんて最低!!」

 「…うん。それから弟が出来たの。びっくりしたわ。あんなに私には関心がなかった両親だったのに弟にはベッタリだったの。あの人達は跡取りが欲しかっただけなのよ。女の私には何の価値もなかったわけ。」

 「ひどーーーい!!こんなに可愛いのにぃ!!私がミナの親なら溺愛しちゃうなぁ!!」

 「…あ、ありがとう。あのさ。自分で言うのも何だけどちょっとシリアス話してるのにシリアスな雰囲気ならないね。」

 「え?だって昔話だし。今ミナ幸せそうだからいいじゃん!過去だから!!」

 「まぁそんなんだけど…笑。それでも私は両親の関心を引こうとしちゃってさ。弟より優秀な成績をいつも残していたの。それが…。両親も弟も気に入らなかったみたい。生意気に見えちゃったのかな。家ではどんどん孤立してしまった。それでもわざと成績を落とすなんてバカな真似したくはなかったし、普通に勉強して大人しく過ごしていたの。そしたらね。小学校で変なおじさんに声を掛けられたの。」

 「こわ!早く逃げないと!!」

 「いや…。玲みたいにすぐ襲われるとかそんなんじゃないから…。そのおじさんは拓人の父親だったんだけど。言われたのよ。こんな優秀な子供を女と言う理由だけで放置するなんてお前の親は無能だなって」

 「おお!いいこと言うじゃん!拓人さんのお父さん!」

 「それで言われたの。俺の家に来ないか?俺ならお前を誰よりも優秀に育ててやるぞって。」

 「えぇ…。急に怖い話に…。なんですか?それ?ロリコンじじいじゃん…。」

 「ククククッ。アハハハハハハハハ!!確かに!!普通に考えたらそうよね!!でもね。私は初めて人に認められて嬉しかったの。あの家に未練も何もなかったし。だから即答で答えたのなるってね。」

 「ひぇーーーーー。なんですかそれ!こわすぎる!!知らないおじさんに着いて行ったらダメに決まってるじゃないですか!子供のミナ危機感無さすぎる!」

 「…そしたらおじさん笑ってね。今じゃなくて将来俺の息子の嫁に来てねって言われたの。」

 「え?それで?政略結婚乗ったんですか?子供の頃のその約束の為に?」

 「まぁ…そうね。」

 「あぁ…。それで今、おじさんに育てて貰ってると?」

 「そう。会社の経営のやり方とかね。」

 「それでミナは幸せだと。」

 「……。」

 「ミナはおじさんが好きだから離婚したくないと。」

 「そんなんじゃないわよ!!」

 「え?今の話の流れそうにしか聞こえないけど…。」

 「尊敬はしてるわよ?でもそこに恋愛感情なんてないわよ。相手は妻子持ちのじじいなんだから。」

 「おじさんが一番優秀でカッコいいんでしょう?同年代にミナさんより優秀な男がいるわけないしねぇ?バカな男なんて遊び相手にしかならないわよねぇ?」

 「………絶対誰にも言わないでよ。」

 「こわ。殺しそうな目してるよ?」

 「この気持ちがバレるなら今ここで拓人に食わせるから。」

 「ちょっと!今自白したようなものじゃん!」

 「この話は他の人にもしたけど私があの人のこと好きだって気づいたのは玲だけよ。」

 「ええ〜!皆察し悪すぎ〜!!」

 「玲の察しが良すぎるのよ。普通おじさんに恋するなんて考えないわよ。」

 「おじさんが好きなんて絶対誰にも言わないよ。誓ってね。小説の題材にするけど。」

 「その小説見つかったら私の人生終わることにならない?」

 「ミナの為の小説なんだからそれぐらいの秘密があってもいいでしょう?」

 「まぁ…。わかったわ。」

 「じゃあ次は思春期時代の話よろしくお願いします〜。」

 「中学、高校は大したことない普通よ。都内で一番いい学校に入って成績も上位をキープしたわ。拓人も中学で出会ってた。私も拓人も許嫁ってわかっていたけれど、特に仲良くなんてしなかったわ。向こうは中学生で結婚相手が決まってるという事実が嫌だったみたいで、私に対しては反抗的な態度の方が多かったぐらいよ。私は気になんてしなかったけど。私も拓人も恋人はたくさんいたし、遊びまくってたわ。」

 「それって楽しいから遊んでたの?」

 「そうよ。後腐れない関係だから。」

 「本命とは出来ないからねぇ。」

 「煽ってんの?」

 「すみませんでした。」

 「…拓人のことは好きでもなかったけれど、嫌いでもなかった。私は不純な気持ちで結婚したから拓人には悪いとは思ってるのよ。だから出来るだけいい妻でいようとしてたんだけどね。拓人と私は似てると思ってた。仕事が出来るけど、恋愛は煩わしいものでしかないから軽く遊ぶだけでいいっていう価値観がね。だから結婚しても案外上手くいくんじゃないかって思ってたのに…結婚する半年前に玲が現れてね。もうぐっちゃぐちゃよ。」

 「ハハハッ」

 「何笑ってんのよ。この悪女。」

 「いや笑うしか出来ないですよ…。」

 「謝れ!」

 「何も悪いことしてないから!付き合って別れただけだから!」

 「そういう頑固なとこもくそムカつく!」

 「私、女に嫌われることが得意なの。」

 「男を振り回す天才だからね。拓人もなんとか正気を戻してやってよ。」

 「ミナがやってよ…。私が出来るわけないじゃん。」

 「それこそ玲にしか無理よ。私は玲と拓人みたいに愛し合ってはないけど、過ごした時間だけは玲より長いからね。わかるわよ。」

 「…普通に友達じゃだめなんですか?」

 「ダメ。絶対無理よ。」

 「なんでわかるんですか?」

 「私達は似てるから。本命には一途なのよ。」

 「………。」

 「そろそろ寝るわね。」

 「じゃあ私は小説書いてから寝ます。」

 「今から?もう夜中の一時よ?」

 「今書きたいんです。パソコン借りてもいいですか?」

 「いいけど…。早く寝なよ。」

 「ありがとうございます。」

 私は部屋の電気を暗くしてそれから寝た。玲はデスクになる照明をつけて私のノートパソコンで小説を書き始めた。私はその様子を見ながら眠りについた。

 アラームがなり、目が覚める。朝起きるとまだミナは小説を書いていた。

 「ねぇ!ちょっと!!いつまでやってんの!?」

 私が声を掛けても反応しない。まるで何も聞こえてないみたいだ。取り憑かれたように小説を書く姿は恐ろしくもあり…美しくもあった。

 「ちょっと!!聞いてんの!!」

 肩を揺さぶって大声で声をかける。

 「わ!!びっくりした!」

 「もう朝よ?一旦書くのはやめなさい。」

 「もうちょっと…今いい所だから…。」

 「ちょっと!!」

 また小説を書き始めた。声を掛けてもまた届いていない。だから今度はノートパソコンをバン!と閉じた。

 「あ!!何すんるんですか!まだ終わってない…」

 「もう朝よ!!一睡もせずに何してんの!!」

 「だってまだ書き終わってない…」

 「後でにしなさい!先に朝食食べるわよ!」

 「朝食なんて一食抜いても死なないんだから大丈夫です!」

 「はぁ?一睡もしてないし、朝食も食べないつもり?」

 「早く!パソコン!!」

 「これは私が貸してるものだから。もうダメ。貸出終了です。」

 「え!?じゃあデータ移動させて私のパソコンで…」

 「いいから早く!朝食食べるわよ!!」

 「やだやだやだやだ!!まだ書きたいのに!!」

 そう言う玲を引きづりながらリビングへ移動した。

 

 

 

 

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