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第69話 仲人

私と迫田さんが出会ってからもうすぐ1年が経とうとしている

月に一度出掛ける約束は思いつきの契約内容だったけれど

私の人生で1番素晴らしい契約をしたと今となっては思っている

迫田さんに出会う前の自分の姿はもう思い出せないぐらい

私の人生はこの1年で変わってしまった

迫田さんと約束している日を楽しみに毎日を過ごす日々はとても楽しく生きていく理由や価値を初めて手に入れたような感覚だった

だが、その契約ももうすぐ終わるかもしれない

契約内容は美奈子を幸せにすることで私は美奈子の再婚相手を15人程探すように言われ、私は用意した

今日、その15人の再婚候補の写真と資料を迫田さんに渡す

これでお役御免にされ、私との契約を終了してしまえば金輪際迫田さんは私に会ってくれないかもしれない

そうなれば私はまた以前のような仕事しか脳がなく、生きていても死んでいても変わらない屍のように生きていくことになる

それは嫌だ

どうにかして私が迫田さんの興味を引くコンテンツを売り出さないといけない

迫田さんは小説やオタク活動以外にはほとんど無欲なので難しい

物欲があれば簡単に懐柔することが出来たのに

服も靴も鞄もアクセサリーも何もいらないと言うんだから困る

私は家にいて出掛ける機会がほとんどないからだそうだ

それでも私と月に一度は出掛けるのだからと一通りプレゼントしたけれど

“拓人と服の趣味が似ていて気持ち悪いですね。なんでこんな少女感溢れる清純派の服ばかりなんですか?女に幻想抱きすぎですよ。気持ち悪い。”

とバッサリ言われてしまったのはいい思い出だ

毎月出かけているが大抵はつまならさそうにされてしまう

それでも時々見せる太陽のように輝く笑顔が見たくて

私は何度でも会いに行ってしまうのだ



今日は迫田さんに美奈子の見合い相手の写真と資料を渡す日だ

ゆっくりと確認が出来るように私達は高級料亭に来ている

「約束通り用意したぞ。」

と言い私は迫田さんに美奈子の見合い相手の写真と資料を15人分渡す

「ありがとうございます!ふふーん。楽しみですねぇ!」

迫田さんはたくさんの小説を毎日読み込んでいる為、かなりの速読だ

資料の方はあっという間に目を通して読み込んでしまったようだ

写真の方もじっくりと一通り見て

「うーん…どの人もイマイチ。本気で探しました?」

「えぇ!?どの人も信頼出来るいい男だが…」

「仕事出来る男なんていらないんですよ!!」

「えぇ!?よく稼ぐ男が1番いい男だろう?」

「私の話聞いてましたか?美奈子を幸せにする男を探せって言ったのに!仕事ばかりの男なんてプライベートは美奈子とすれ違っていくに決まっています!家にいる時間が少ない男は全員不合格なのでこの9人は没です。」

「えぇ…」

「そして…なんですか?この男は。」

「幸男君か?誠実だから美奈子にも優しくしてくれるはずだよ。」

「なんですか!40歳って!!おじさんじゃないですか!!」

「まだまだ若いだろう!?」

「29歳の女子とお見合いするのに10歳以上年上の男を紹介するなんて論外です!!」

「えぇ…でも…美奈子は私が好きだったのだろう?じゃあ年上の男の方が気にいるのではないかと思って…」

「純也さんが好きだったことなんて一度もありません。ただの気の迷いです。誤解しないでください。」

「えぇ…そうなの…?あんなに懐いてくれていたのに…?」

「親としてです。恋心ではありません。」

「難しいな…」

「未だに恋愛したことない純也さんには判断が難しいでしょうね。」

「まぁ…そうだな…」

「35歳以上も全員没です!!この3人も没!!」

「厳しすぎないか?せっかくこんなに集めたのに…」

「ろくな男を用意しなかった方が悪いです。」

「じゃあ残りの3人とお見合いさせて…」

「まだです。」

「まだあるのか?」

「この男は胡散臭い顔をしている…」

「透君か?そんなことはないと思うが…営業成績は1番の稼ぎ頭だよ。」

「見てください!この笑顔を!!営業スマイルが染み付いています!!裏の顔が絶対にありますよ!こいつ!!」

「仕事とプライベートはみんなわけているものだろう?」

「そうですけど!度がすぎています!裏で女をモラハラしている顔をしている!!」

「写真だけで何がわかるんだよ…偏見すぎるだろ…会ってみたら案外優しい人かもしれないだろう?」

「小説家の勘を舐めて貰っては困ります!こいつは危険だとサイレンが鳴っています!!」

「迫田さんは占い師に転身した方がいいかもしれませんね…」

「なんでしたっけ?透?こいつも没です!!私の大事な美奈子とこいつを関わらせたくないです!!」

「わかったよ…」

「それに…」

「まだあるのか!?」

「この人は1番無理。絶対ダメ。」

「…え?社内で1番のイケメンだと噂されている要くんだぞ?」

「生理的に無理。嫌な予感がする。」

「本当にスピリチュアルなことしか言ってなけど…」

「私は自分の感覚を1番信じて生きているの。」

「恐ろしい生き方だね…」

「この人たぶん悪いことしてるよ。探偵雇って調べた方がいいんじゃない?横領とか。薬とか。何かわからないけど悪いことしてるよ。」

「何を根拠に?」

「私の感覚を根拠に。」

「まぁ…わかったよ。」

「この人だけ及第点かな。国見颯太さん。まぁ会わせてあげてもいいかな。」

「めちゃくちゃ上から目線だな…」

「当たり前です。宇宙一可愛い女の子のお見合いをするんですから。」

「じゃあ2人の日程と仲人の日程も合わせるよ。」

「私が仲人です。」

「…は!?」

「私の小説執筆時期は避けてくださいね。」

「いやいやいや!何故!?さすがに美奈子の親を…」

「は?あの美奈子を追い詰めた親を同席させるつもりですか!?ありえません!!」

「そうはいっても結婚は家同士の付き合いもあるし…」

「いつの時代の話ですか!!令和の時代にはもうないですよ!!そんな常識!!」

「そうなのか!?」

「私が直接見極めますからね。美奈子に相応しい男かどうか。」

「嫌な予感しかしない…大丈夫なのか?本当に…。」

「当たり前です。」

自信満々な所が逆にこわい

見合い後に迫田さんが仲人で騒いでいたと噂が広まる未来しか見えない…

「合格者は1名だけでしたので、残りの14名をまた探して来てくださいね。」

「え!!これで終わりじゃないのか!?」

「当たり前です。美奈子を本気で幸せにする気あるんですか!!真面目にやってください!!」

「真面目にはやっている!これだけの人数を集めるのは大変だったんだぞ!!」

「まだまだ気合が足りません!死ぬ気で頑張って貰わないと困りますからね!妥協なんて絶対したくないですから!!何の為にこんなつまらないお出かけを耐えてると思っているんですか!!」

「…わかった。また追加で用意するから。」

「よろしくお願いしますね♡」

奇しくも契約期間は伸びて迫田さんと月に一度出掛ける約束はまだまだ続くようだ

美奈子には幸せになって欲しいが

この関係を壊したくないと

心の底から願ってしまっている

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