第65話 新しい生活
今日は月に一度の純也さんとのお出かけの日だ
私が今日はゆっくり話せる場所がいいとリクエストすると
“迫田さんは話すことが得意ではないのに?”
と返されてしまった
その通りなのだが、直球に言うことないじゃん
カフェとかに連れて行ってくれるのかなと思ったけれど
純也さんが所有している別荘に行くことになった
仕事ばかりしていたから仕事の泊まりで2、3回しか使用したことがないらしい
こんな立派なお屋敷なのにもったいない
別荘に到着すると暖炉に火がもう既についており暖かい部屋だった
使用人がこの屋敷を管理していて到着後、暖かい部屋になるようにしてくれていたようだ
「暖炉の火が好きでね。この別荘を購入したのだか中々訪れる機会がなくて…今回ゆっくり過ごすことが出来るから嬉しいよ。」
と純也さんが言う
「奇遇ですね。私も暖炉の火が好きなんです。」
「そうなのか!気に入ってくれて嬉しいよ。」
「はい。焚き火とか好きでつい見入ってしまい人との会話が出来なくなります。」
「ああ。それなら心配ないよ。もしも迫田さんが会話を中断してしまった場合にはスタンガンで起こせるから。」
「ハァ!?な…何言ってるんですか!?私を殺す気ですか!?」
「死にはしないよ。意識が保てるぐらいまで威力は弱めてあるから安全だよ。」
「電撃を喰らわせて安全とは…?普通に声掛けてくれたらいいじゃないですか!!」
「これまでも普通に声掛けたり、体を揺さぶったりして意識をこちらに向けようとしたことはあるけれど意味がなかったからね。こうするしかないんだよ。」
「いやいやいや!だからってスタンガンで無理矢理なんて酷すぎる!」
「いや…だってゆっくり話がしたかったんだろう?それならスタンガンは必須じゃないか。」
「サイコパスすぎるよ!効率的に物事を考えすぎです!!私が何回も話を中断して何度もスタンガンで電撃を喰らったら瀕死になりますよ!?」
「緊張感が増すから会話に集中出来るだろう?」
「恐怖でまともに話せませんよ!」
「会話が出来れば大丈夫だ。問題ない。」
「問題しかないよ!!大アリだよ!!」
「会話を続ければスタンガンなんて使用しない。」
「こんなに緊張感を持って会話するのは初めてですよ…」
「毎日持ってこようかな。」
「本当にやめてください。お願いします。」
「それで?話とは何かな。」
「ミナと別れましたか?」
「うん。美奈子から別れて欲しいと言われたからね。それで?美奈子と別れたからこの月に一度のお出かけの契約を終わらせるつもりかい?」
「その話はまた今度でいいです。私との契約内容はミナの幸せだったはずです。」
「そうだな。私は幸せに出来なかったから…」
「こんな老ぼれの仕事しか出来ないじじいに魅力がないってミナが気づいてくれてよかったです。」
「図星だが辛辣すぎないか?」
「純也さんも拓人もミナを幸せに出来なかったから…他の人を探すしかないんです。」
「そうだな。」
「残念ながら私には交友関係が皆無で人脈がありません。」
「そうだろうな。」
「純也さんがお見合い相手を何人か選んで美奈子の次の婚約者を探して欲しいんです。」
「それは構わないが…私は欠陥人間だから仕事が出来る人を見抜くことは出来ても家庭を大事にしそうな人間はわからないよ。」
「それは私が見極めるので大丈夫です。15人ぐらい紹介してください。1人ぐらい当たりがいると思うので。」
「じゅ…15人はさすがに多すぎるよ。」
「え?今時独身で暇してる男なんてわんさかいるじゃないですか。」
「独身男性はたくさんいるが、結婚願望がある独身男性は少なかったりするんだよ。」
「この国の未来が心配だわ。」
「迫田さんだって独身主義じゃないか。」
「私は結婚出来るならしたいですよ。向いてないからやらないだけです。」
「えっ。そうなのか?」
「はい。私は旦那も子供も絶対に放置してしまうので結婚するべきじゃないですから。」
「家政婦を雇えば問題ないよ!結婚して子供を作ればいいじゃないか!!」
「子供は欲しいですけど…私のような人間が子供を育てるなんて出来ないですから…」
「迫田さんは子供想いだと思うから意外と上手く子育て出来ると思うよ!!」
「いや…不安しかないですよ…」
「迫田さんの赤ちゃん抱っこしたいなぁ!!」
「そんな話はどうでもいいんですよ!!とにかく!!ミナのお見合い相手を見つけてきてください!」
「いいけど、拓人と美奈子が離婚してからじゃないと無理だよ。」
「離婚届はもう出しています。」
「え!?そうなのか!?まだ報告受けていないが…」
「今朝出したばかりですから。」
「そうか…2人とも別れることで幸せになれるなら私は嬉しいよ。」
「だから!早く!!お見合いさせたいんです!!」
「離婚してすぐなんてまともな男が寄ってこないんじゃないか?」
「1人ぐらいまともそうなやつ捕まえてきてくださいよ!!」
「そんなに焦らなくても…半年後ぐらいでよくないか?」
「長すぎます!」
「長くないだろ。寧ろ早いぐらいだよ。何故そんなに焦るんだ?」
「だって純也さんとの契約期間がそれだけ伸びるじゃないですか。」
「そんなに俺と出掛けるのは嫌なのか!?」
「嫌ですね。」
「大阪の時は楽しかったと言ってくれたじゃないか!!」
「楽しかったのは大阪の時だけです!博多の時のこと私は一生許しませんからね…何事も人生経験だとか言ってSMクラブに入って私に鞭で叩かせたこと怒ってるんですからね!!」
「中々いい経験だった。」
「小説のネタになるとか実際に経験した方がわかるとか言葉巧みに丸め込んで!!」
「小説のネタにはなっただろう?」
「なったけど!!」
「M側は絶対に嫌だと言うからS側を譲ってあげたのに。」
「別に優しくないですからね!?こんなこと続けてたくないんです!早く私を解放してください!!」
「私の人生迫田さんのおかげでやっと楽しくなってきたのに…」
「私はミナを幸せにする為にここまで体張ってるんです!!早くミナにお見合いして貰っていい人を見つけてくれないと困ります!!」
「半年後に用意するよ。」
「…今後は行き先を必ず伝えてくださいよ。変な場所には絶対に行かないですから!!」
「定番の場所は迫田さんが有名人だから行きにくいんだよ。」
「変装して行くので大丈夫です。一般的な場所に行きましょう。」
「変装しても溢れ出るオーラでバレるよ。」
「サングラスしてれば平気です。」
「危機感が薄いからトラブルばかり増えるんだよ。」
「私は純也さんとSMクラブに行く方が危機感を覚えていますよ。」
「健全なプレイしかしてないのに。」
「Mに目覚めたんですか?私はもう二度と行きませんからね。」
「今度はS側もやりたかったのに。」
「他の人とお願いします。それと。ミナと拓人は離婚したので今住んでいる場所から引っ越すことになりました。」
「そうか。じゃあ新居の住所教えてくれ。」
「嫌です。家に突撃してくるじゃないですか。」
「ダメだ。迫田さんは約束を反故にするだろう?」
「半年は一旦休止しませんか?ミナのお見合いも半年後ですし。」
「ダメだ。半年後に紹介することになるが、その間も私は見合い相手を探す労力を使っているんだ。休止なんて許されない。」
「3ヶ月に1回とかにしませんか?」
「往生際が悪い!!早く新居を教えなさい!!」
「まだ決まってないです。」
「じゃあ私が用意しよう。」
「やめて。本当に。」
「快適に過ごせる部屋を用意するよ。」
「勘弁して。本当に。」
「荷物は先に私が管理して引き払うようにするよ。」
「ねぇ!!話聞いてる?やめてって言ってんじゃん!!」
「逃がさないようにする為に仕方がないんだよ。」
「酷い!!最低!!悪魔!!!」




