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第6話 ファン

私は真中さんの家である高層マンションへと案内された

金持ちは何故高い所が好きなんだろう

私と美奈子さんは部屋に入ったが、まだ拓人さんは帰ってきていなかった

「じゃあ私はこれで。」

そう言って美奈子さんが部屋から出て行こうとする

「ちょっと待ったーーー!!いやいやいやなんで!?私だけ置いていくのおかしくない?」

私は美奈子さんの腕にしがみついて必死に止める

「何もおかしくないわよ。2人のラブシーンを私は見とけって言うの?」

「そんなことになりませんから!ただの快気祝いですよ!仕事復帰を祝うだけですから!」

「いいじゃない。快気祝いに抱かせてやりなさいよ。ケチね。」

「なんで快気祝いに抱かれなくちゃいけなんですか!!私は会う約束しかしていません!」

「何よ。付き合ってた時は毎日抱かれてたくせに。今の歳で清純派なんて流行らないわよ?貞操を大事にしている生娘じゃあるまいし、抱かれてやればいいのよ。」

「貞操を大事にしているわけではありません!これは私のプライドを大事にしているのです!」

「ニート崩れの顔だけの小説家のプライドなんてたかがしれてるわよ。そんなもん捨てなさい。」

「あーーー!!ひどいこと言った!今のは絶対言っちゃダメなんだから!!これでも私は小説界の巨匠の高橋和也様から私の小説は面白いってお墨付きを頂いているんだからね!!

「知っているわよ。迫田玲先生。代表作のミリオンセラー小説『豪華客船は踊る』をはじめとして、『眠り姫には愛がは必要』『夕暮れには少女が』などの小説は恋愛、ミステリー、様々なジャンルを手掛けて書いており、どの作品もキャラクターの心情が魅力的に描かれており、小説の世界へと一気に引き込ませる…」

「…え?なんで知ってるんですか?」

「読んだから。」

「私の小説をですか…?」

「そうよ。小説が山のように積まれていたからね。暇つぶしに少し読んでみたら面白くてね。『豪華客船は踊る』はポストカードなんて入れなくても十分に話題性になる話だったのにね。バカな戦略だわ本当に。」

「えぇぇぇぇぇ!!本当に!!嬉しいいいいいい!!感動です!!読んでくれてありがとうございます!!」

「貴方の作品は全部読んだわよ。迫田玲先生。」

「う…嬉しい…ひっく…ありがとうございます。私、小説続けてよかった…」

「あと貴方のインスタ自撮りだらけなのあれなに?顔ファン吊り商法本当に気持ち悪いからやめなさい。私は迫田玲先生の次回作の情報が欲しくてインスタフォローしたのに部屋で自撮りをひたすら上げてるのむかつくから。」

「担当に言われたんですよ。料理とかを上げてたんですけど顔を写せって…」

「あんなインスタ拓人みたいなガチ恋勢の顔ファンしか喜ばないからやめなさい。」

「でも私のファンってほぼそんな人なんじゃ…」

「大丈夫よ。迫田玲先生は小説だけで勝負出来るわ。」

「う…嬉しい…好き。美奈子さん…めっちゃ好き…」


ガチャと扉が開いて拓人さんが帰ってきた

「玲!!」

拓人さんは私を強く抱きしめる

「あ…仕事復帰おめでとうございます。」

私は弱々しく言葉にする

「ありがとう…玲のおかげだよ…」


「それじゃあ私はこれで。」

そう言って美奈子さんが部屋から出て行こうとするので

私は拓人さんを突き飛ばして美奈子さんの腕を掴む

「ちょっと待ったーー!!いかないで!!お願い!!」

「嫌よ。感動の再会に私はお邪魔でしょう?」

「いえいえ!夫婦の仲に私がいる方がお邪魔ですよ!私が帰りますから!!」

「玲さんはお邪魔なんかじゃないわよ。私が招いて、拓人が受け入れている。この状況は私が作り上げたのよ?」

美奈子さんは私を振り払って玄関へと向かう

私は拓人さんに捕まり、そのまま後ろから抱きしめられた

「待って!!行かないで!!助けて!!」

「そんな言葉で私が助けるわけないでしょう?これは私が望んだ状況なの。助けて欲しいならそれなりに私にメリットある提案をしてくれないとね。」

「メリット…?」

「そうよ。社会の資本でしょう?私が今貴方を助けてどんなメリットがあるの?ないでしょう?」

「私が…美奈子さんの為に小説を書きます!!」

私がそう叫ぶと美奈子さんはにっこりと微笑み

玄関から部屋へと戻ってきた

「よく考えたら嫌がっている相手を無理矢理なんて…そんな再会で上手くいかないわよね。」

拓人さんに抱きつかれている私を引き離して美奈子さんは言う

「今日は私の部屋に玲さんは泊まってもらうわ。」

「美奈子…俺から玲を奪うつもりか?」

「あーこわ。そんなんじゃないわよ。玲さん嫌がってたでしょう?少し落ち着いてからの方が上手くいくと思っただけよ。少し頭冷やしなさい。いくわよ。玲さん。」

そう言って美奈子さんは私の手を繋いで美奈子さんの部屋へと案内してくれた

「迫田先生が私の為に小説を書いてくれるなんて夢見たい!楽しみ!!」

無邪気に笑う美奈子さんの笑顔は

天使にも悪魔にも見えた


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