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第59話 ぺろぺろキャンディー

「なにそのでっかいぺろぺろキャンディー。28歳の大人にもなって恥ずかしくないの?」

「恥ずかしくない。」

「玲は羞恥心とかなさそうよね。」

「ぺろぺろキャンディーは子供しか食べないお菓子じゃないわ。寧ろ大人向けだと思わない?こんなにでっかい飴を子供が食べ切れるわけないじゃない。」

「おじさんがぺろぺろキャンディーを食べていたら変でしょう?」

「おっさんがぺろぺろキャンディーを堂々と食べれる世の中にしたい。それが私の夢です。」

「死ぬほどどうでもいい夢ね。」

「私の小説で世界の価値観を変えてやるわ。次回作は“おじさんだってぺろぺろしたい”に決まりね。」

「冗談でも気持ち悪いからやめてね。」

「ねえ。28歳の大人でもぺろぺろキャンディー食べ切るの難しいんだけど。全然減らない。残りのぺろぺろキャンディーミナにあげる。」

「いらないわよ!何で玲が舐めまわしたぺろぺろキャンディーを私が食べないといけないよ!気持ち悪い!!」

「私のぺろぺろキャンディーの残骸なんてファンなら高く買ってくれる代物なのに。」

「丁度いい顔ファンがこの家にはいるじゃない。高値で売り付けたら喜んで買うわよ。」

「冗談抜きでちょっと恐怖なんだけど…食べ切れないから冷蔵庫に保管しておこうと思ってたけど、私が食べたい後なんてバレバレよね?」

「私が食べるわけないからね。」

「さ…さすがに何もしないわよね?」

「絶対すると思う。べろべろに舐めまわしてまた冷蔵庫に保管すると思う。」

「ねぇ!!やめてよ!!そんなこわいこと言うの!!」

「私は忠告してあげてるんですぅ。」

「一緒に住んでるのにそんなことする?」

「絶対する。玲のお気に入りのクッションあるでしょう?肉まんのクッション。」

「あるけど…それが何?」

「玲は気づいてないけど、あの肉まんクッションすり替えられてるわよ。」

「え?」

「ずっと愛用してた肉まんクッションは拓人が持ってるわ。新品の新しい肉まんクッションに変わってるのに全然気づかないんだから。」

「そんなの気づくわけないじゃん!!こわいよ!!」

「玲の匂いがたっぷり染み込んだ肉まんクッションをどうしても手に入れたかったんでしょうね。」

「変な言い方しないでくださいよ!めちゃくちゃ臭そうじゃないですか!!」

「まぁそんなストーカーのような犯行を繰り返しているからぺろぺろキャンディーの冷蔵庫放置が無事で済むわけがないわ。」

「犯行を繰り返してるって他にもあるんですか…?」

「知らない方がいいわよ。」

「早く同居解消したいな。」

「あらやだ。私と拓人2人きりにするつもり?絶対嫌なんですけど。」

「じゃあ私とミナが一緒に住んで拓人さんを追い出しましょう!!」

「それも絶対に嫌。」

「なんで!?私達マブダチなのに!?」

「いつマブダチになったのよ。この泥棒猫。」

「いやいやいや!!泥棒しろって言ったのはミナじゃないですか!!」

「拓人なんて最初からミナのものでしょう?純也さんよ。」

「純也さん?私と純也さんが恋仲だとでも?」

「玲にそんな気がないことぐらいわかってるわよ!!でも純也さんは玲のことを好きでしょう?この魔性の泥棒猫!!純也さんは私の聖域でずっとずっと大好きだった人なのに!!たった1日で泥棒しやがって!!」

「えぇ?ミナの勘違いですよ。純也さんが私のこと好きなわけないじゃないですか。頭おかしい女だと思われてますよ。」

「じゃあどうして月一度のデートを玲としたがるの?玲と月一度デートするかわりに私は純也さんと付き合うことになったのでしょう!?そんなの私のことはおまけじゃない!!」

「まぁ確かにどうして私と月一度のお出かけをそんなにこだわるのかは意味不明ですよね。私の洞察力をもっても謎すぎるわ。」

「そんなの玲が好きだからに決まってるじゃない!!」

「気に入ってはくれているとは思いますが…恋愛感情ではないですよ。絶対。劣情した男には私敏感ですから。」

「純也さんは紳士だから劣情を上手に隠しているんだわ!!」

「私は心の底の劣情も見抜くことが出来るから。」

「エスパーなの!?」

「プロの小説家はみんな出来るわよ。」

「絶対玲だけだから!!」

「とにかく!純也さんが私のこと好きだなんて勘違いやめてください!」

「じゃあ月一のデートやめてよ!!泥棒猫!!」

「私だって今すぐやめたいわよ!!でも家まで迎えに来て引きずっていくんだもん!!」

「くそむかつく!愛されてるアピールやめてよね!!」

「今のどこに愛されてるアピールがあったのよ!!目を覚ましてよミナ!!」

「だって…私…純也さんからお出かけしたいなんて誘われたことないもん…月に一度も行く約束してるなんて狡いよ!!!」

「あんなつまんないお出かけ恋人に誘えるわけないじゃない。私がどうでもいい人間だから連れ回されてるだけだって。」

「それでも嫌なの!!」

「やだ〜彼女さんこわ〜い。嫉妬激しいタイプですか〜?」

「殺すぞ。」

「冗談です。本当にごめんなさい。一回言ってみたかったんです。」

「月一度のデートはやめられないの?」

「純也さんに頼んでくださいよ。恋人のお願いなら聞いてくれますよ。私だって嫌ですよ。あんなつまらんこと月一度強制的にされて…私の小説が腐ります。」

「私と玲どっちが好きって聞くのが怖い。」

「ミナに決まってるじゃないですか。」

「…私はそう思わない。」

「ミナの方がずっとずっと大事にされるのに。」

そう私の方が大事にはされている

だって私は純也さんにとって娘のような存在だから

玲は雑に扱われている

それでも…対等な関係で

言いたいことが言える関係で

羨ましい

私だって純也さんに対等な関係で見られたかった

娘じゃなくて

女として

見て欲しかった

どうして私じゃないのだろう

何でいつも玲なんだろう

簡単に誰かの特別になれる玲が羨ましくて妬ましい

それでも…嫌いになれない

私も玲に誑かされているから


私は玲が食べ切れなかったぺろぺろキャンディーを舐める

「どう?美味しいでしょう?」

「甘すぎ。大人が食べるものじゃないわ。」



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