第51話 遊園地
どうしてこんなことになった…
タクシーを降りてすずらん遊園地に到着した
迫田さんはクレジットカード1枚だけを持ってタクシーへ乗ったらしくスマホもない
連絡する手段もなく、私はここで迫田さんが満足するまで付き合わなければいけなくなった
「大人2枚!フリーパスでお願いします!!」
入場券を迫田さんに奢ってもらう
「ネズミーランドとか大きな遊園地に何故行かなかったの?ここは廃業寸前の遊園地だ。」
「実は私はそこそこ有名人なのです。大きな遊園地は見つかってしまいますからね。メディアに顔出しなんてやっぱりするもんじゃなかったなぁ〜。でも顔出した方が売れるって言われたので仕方なく…私は顔出ししなかったら誰の目にも止まらない小説ですから。」
「初めてのものを手にすることはハードルが高いからね。何でもいいから手に取って貰うことは大事だ。その後も10年間程小説家として活躍しているのだろう?それなら立派な小説家じゃないか。」
「フフッ…そうだといいですね。いつ飽きられてしまうかいつも怖くて仕方ないです。でも…世間から飽きられて何もしがらみがなくなった時に本当に自分が好きな作品が書けるんじゃないかとそんな気もするんです。」
「印税だけで十分一生遊んで暮らせるぐらい儲けたのだろう?もう好き勝手書けばいいじゃないのか。」
「まだ世間的に話題にしてくれている間は期待に応えられるものを書くつもりです。私がおばさんになったら誰も相手にしてくれません。その時になればどうせ自由に書けるようになるんですから。今はまだ、たくさんの読者の期待に応える小説家でありたいですね。」
「未来を語れる人は強い人の証拠です。」
「フフッ。私は今が1番幸せだと思えるように生きることをモットーにして生きていますからね。過去に戻りたいなんて1度も思ったことありません。」
「私は後悔ばかりの人生だ。」
「何言ってるんですか。手遅れなんてこと人生にはありません。後悔しているならやり直せばいいんです。」
「もう65歳だが…」
「まだまだこれからですよ!!まだ20年ぐらいは生きられるじゃないですか!!」
「老化した体で何が出来るのだ?」
「お爺さんにはお爺さんの楽しみがあるんですよ。いつの時代も人生は謳歌出来るんです。さぁ!今日は遊園地で楽しく遊びますよ!!」
「…初めて遊園地なんて来たよ。」
「奇遇ですねぇ!実は私も何ですよ!!」
「迫田さんも?」
「出掛けることは苦手ですから!ほら!行きましょう!!」
迫田さんについて行き私達はメリーゴーランドに乗ることになった
「これは子供が乗るものじゃないのか?」
「子供の頃に乗り損ねたから今乗るんですよ!」
客は私と迫田さんしかいない
私と迫田さんが白馬に跨るとブザーが鳴り、メリーゴーランドは動き出した
何が楽しいのか全くわからない
メリーゴーランドを降りて
「全然楽しくなかったですね。やっぱりメリーゴーランドは子供が乗るものでしたね。」
「見たらわかるだろう…」
その後はコーヒーカップと空中自転車とゴーカートに乗った
「遊園地って心躍らせるものだと思っていたのに期待外れですね。」
「そうだな…」
勝手に連れてきたくせに迫田さんはつまらなさそうにしている
嘘でも楽しむフリでもすればいいのに…
私もどれを乗っても楽しいとは感じなかった
「次はお化け屋敷に行きましょう。」
「まだ行くのか…?もう帰りましょうよ…」
私達はお化け屋敷に入った
どうやら人が追いかけてくるタイプのお化け屋敷のようだ
説明を係員から受けて2人で入った
暫く歩いていると
後ろからお化けが現れて追いかけてきた
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「うっ…」
迫田さんの絶叫の方がうるさくて驚く
「こ…腰抜けた!!動かけないいいいいいいいいい!!!死ぬ!!呪い殺される!!ぎゃあああああああああああああああああ!!」
「落ち着いて!!大丈夫だから!!」
私は迫田さんの手を引いて立ち上がらせようとするが、腰が完全に抜けていて動かさなかった
お化けは私達を覆い被さった
「ぎゃあああああああああああああ!!!」
「ギブアップ!!ギブアップします!!」
迫田さんはパニックになり錯乱状態になった為、ギブアップしてお化け屋敷から出して貰うことになった
迫田さんは係員2人の肩に捕まりお化け屋敷を出て、外のベンチまで運んで貰った
「死ぬかと思いました…お化け屋敷は心臓発作で死人が出る恐ろしい施設です…」
「迫田さんが異常な程怖がりなだけではないでしょうか…」
「あんなの誰でもこわいです。」
「私は全然怖くなかったけど…」
「え?大丈夫ですか?感覚がおかしくなってませんか?」
「たぶん私が正常で迫田さんが異常です。」
「どうせ私は異常な人間ですよ…」
「異常な程感受性が豊かだからいい小説が書けるんですよ。」
「なんてお優しいんだ…。人を気持ちよくさせることが上手いってよく言われませんか?」
「私が出来るのは仕事だけだよ。」
「フフッ。私もです。」
暫く休んでから、ソフトクリームを買って食べる
「ちょっと!見てくださいよ!パンダがいます!」
「パンダカーのことか?」
「すごい!本当にあるんですね!あれに乗ってみたかったんですよ!!」
「それはよかったね。」
「あ!ちょっと!大変です!!」
「どうした?」
「100円を入れないと動きません!」
「あぁ…クレジットカードしか持ってないから乗れないね。またの機会に乗ればいいさ。」
「いや…こんなつまらない所パンダカーの為だけにもう1度来たくありません!」
「なんて失礼なことを言うんだ…」
「100円玉をどうにかして手に入れましょう!」
「どうするんだ?」
「乞食するしかないです!」
「…本気で言ってるのか?」
「半分本気で半分冗談です!さぁ!100円玉を錬成しますよ!!」
「はぁ…」
私は迫田さんに手を引かれて出店のポップコーンの前に待機する
「どうするんだ?」
「まぁ見ててくださいよ…あ!いい鴨がきましたよ!!」
迫田さんはポップコーンの店の前にいる親子に話しかける
「ママ〜。ポップコーン買って〜。」
「しょうがないわね。」
ポップコーンを購入しようとしている親子に迫田さんは突撃する
「こんにちは!」
と迫田さんは元気よく親子に話しかける
「こ…こんにちは。」
怪訝な顔をして母親は挨拶をする
「実は私困ったことがありまして…どうしても100円玉が必要なのです。」
「はぁ…」
「そこでですね!!このポップコーン!!何とポップコーンバスケット付きで私が購入するので100円玉が欲しいのです!!お願いします!!」
凄い行動力だ…
たかがパンダカーの為にこんなことまでするなんて…
案外営業は向いているかもしれない
「えっと…いいですよ。」
「ありがとうございます!!優しいお母様にお会い出来てよかったです!!」
交渉が成立したようで迫田さんはポップコーンを親子に購入して、100円玉を手に入れていた
「ほら!400円も貰えましたよ!これで純也さんもパンダカーに乗れます!」
「何故私まで…」
「今ここで乗らないと一生乗ることないですよ!もったいないです!」
「パンダカーなんて一生乗らなくても困らない…」
私と迫田さんは2人でパンダカーに乗る
驚くほど動きが遅かった
「楽しかったー!!パンダカーが1番楽しかった!!」
「憧れの乗り物に乗れてよかったですね。では帰りましょう。」
「まだメインイベントが終わってないです!」
「なんですか?」
「ジェットコースターです!!」
私達はジェットコースターへと向かった
ジェットコースターと言ってもすずらん遊園地には子供向けのジェットコースターしかない
ちびっこコースターに私達は乗り、カタカタとコースターは上へと上がっていく
「…私高い所って苦手なんですよね。」
「…実は私も。」
子供向けなら大丈夫だろうと思っていたが、案外高くまで上がっていくので恐怖が込み上げる
「ギブアップ!!ギブアップ!!」
「ギブアップはお化け屋敷しか出来ない!!」
「助けて!!やだやだやだやだ!!こわいいいいいいいいいい!!」
「バカ!!暴れると余計に危ないぞ!!」
コースターは登りきって、急降下する
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「うわああああああああああああああああああああああああああああ!!」
私達は2人で絶叫した
なんだこれは!!
こんなものを乗って楽しいのか!?
怖すぎる!!
早く!!早く終わってくれ!!
5分程でコースターは元の位置に戻った
「た…助かった…」
「早く降りよう…」
「コースターはもう1周出来ま〜す!」
と係員が絶望的なことをいう
「え!?嘘でしょう!?」
「無理だ!!降ろしてくれ!!」
「いってらっしゃ〜い♡」
係員は笑顔で私達を見送った
もう1度コースターが上へと登っていく
「無理無理無理無理無理無理無理!!」
「死にたくない!!死にたくない!!死にたくない!!!」
私達の懇願も虚しくコースターは再び急降下する
再び2人で絶叫して泣き叫ぶ
放心状態になりようやくコースターは止まった
「お疲れ様でした〜♡」
係員さんは笑顔で私達に別れを告げた
おそらく笑われていた
「酷い目に遭った…」
「遊園地って死にかけるんですね…知らなかったです…」
「子供向けのジェットコースターなのにこんなに恐ろしいなんて…」
「大人向けのジェットコースターなんて絶対死人が出ますよね…」
「あれが楽しいと思える人がいるなんて…」
「意味がわかりませんよね…」
暫くベンチで空を眺めながら私達はジェットコースターで疲れた体を癒した
そして私達は最後に観覧車へと向かった




