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第5話 昔話

「出会ったのは私の作品の授賞式でした。私は大学の講義に来ていた拓人さんに一目惚れしていたので、今夜に相手にしてくれませんか?って口説いたんです。」

 「えぇ!貴方から口説いの!?」

 「はい…。」

 「拓人女癖悪いし、誰にでも声掛けて抱くようなクズだったから拓人から口説いたものだとばかり思ってたわ。」

 「そりゃあ上流階級の美人な女の子ばかりと付き合っていたんですから…私みたいな平凡な女なんてお声が掛かるわけないじゃないですか…。」

 「………まぁ言いたいことはあるけれど、まず貴方の話を聞くことにするわ。」

 「それでホテルに呼び出されて行ったんですよ。いざ始めようとしたときに処女だってことがバレて……。」

 「貴方二十四歳で処女だったの!?」

 「はい……。」

 「何して生きてたのよ!?」

 「二十四歳までは普通に学生生活してましたよ…。まぁ馴染めなくてずっと孤立してましたけれど…。」

 「学生生活で彼氏なんで作らなかったの!?」

 「めんどくさかったから…。」

 「信じられない!」

 「だから初めて恋したのが拓人さんだったんです。近づく為に頑張って大賞獲ったんですから。」

 「え!?拓人と近づく為に大賞獲ったの?」

 「はい。」

 「(……………天才型って恐ろしいわね)。まぁいいや。話続けて?」

 「それで、処女だから抱くのを辞めるって言われたんです。」

 「えぇ!?」

 「それで抱いてくれないなら抱くからって言って押し倒して私が襲ったんです。」

 「キャハハハハハハハハ!!マジ!?あんた凄いね!処女のくせにそんなに積極的だったんだ!?あーーーお腹痛い!!」

 「それで何故か気に入って貰えて付き合うか?って言って貰えたので即OKしたんです。」

 「ちょっと変わった子と付き合ってるみたかったんだろうね。」

 「私もそうだと思います…。それから連絡先交換して、一週間後に会うことになってデートすることになったんです。」

 「うんうん。」

 「行き先は豪華客船でした。一日海の上で過ごしてディナーを食べて帰ってくるやつでした。私もうびっくりしちゃって…。私は一般の庶民だから、ファミレスで食事とかするデートだと思ってたから……。」

 「大企業の社長の息子がそんな場所行くわけないねぇだろうが。」

 「冷静に考えれはそうなんですけれど!本当にびっくりしちゃって。この人めちゃくちゃエリートなんだなぁって。なんか社交ダンスタイムとかあって皆当たり前に踊ってて…。踊ろうって言われたけれど出来るわけないじゃないですか!踊ったことないのに!でも手を繋いでるだけで音楽に合わせて動くだけでいいよって言われて断れなくてもう必死でしたよ!ヒールなんて滅多に履かないし、そんな足で転ばないように歩くだけで大変なのに社交ダンスなんて!しかも拓人さんに恥をかかせるわけにはいかないから必死で見よう見まねでステップしましたよ!」

 「庶民って大変ね〜。」

 「庶民は楽ですよ!上流階級が大変なんです!」

 「それで?エリートなデートが嫌だったの?」

 「嫌だったわけじゃないですけど…。何回も続くと辛いなとは思いました。住んでいる世界があまりにも違うって実感しましたね…。」

 「その後のデートは?」

 「拓人さんは土曜日がお休みだったので、毎週土曜日デートする生活は一ヶ月程続きました。」

 「どこ行ったの?」

 「次のデートはヘリに乗って花火を見ました…。三回目はよくわかんないデバート?みたいな場所で服とかバッグとか色々買って貰って…。四回目のデートはプライベートビーチで…。」

 「もういいわよ!うざっ!!鈍感系ヒロインなんて今時流行ねぇんだよ!!尽くされまくってるくせにハワワ〜私そんなの気づきませんでしたぁ〜とか言うんでしょ?マジでムカつく。」

 「この一ヶ月だけですから!デートとかしてたのは!!最初の一ヶ月は庶民の私の反応を楽しんでただけだったと思います…。花火大会に行くって言うから浴衣着て、気合い入れて行ったら、ヘリで見るからってヘリが準備されてて…私高所恐怖症なんで乗りたくないですなんて言えないじゃないですか!もう怖くて花火とか見れなかったです…。」

 「ヘリ調達するのにいくらかかってると思ってんのよ。贅沢なことさせて貰ってるくせに!!私だってヘリなんて呼んで貰ったことないのに!」

 「だから断れなかったんじゃないですか!!」

 「もうくそうぜぇ惚気話にしか聞こえないんだけど?」

 「ここからですよ!ここからが本番ですから!!三回目は高価なプレゼントを貰って、四回目のデートですよ!プライベートビーチで一泊二日したんですけれど、初めてちゃんと抱かれたんですよ。そしたらその次の日から五ヶ月間毎日抱かれてたんですよ!」

 「………は?」

 「正確にはほぼ毎日ですけれど…。」

 「正確に話してよ。」

 「毎日抱かれるのが大変で、仕事に集中出来なくて一週間一人で旅行に行ってました。」

 「それで?毎日抱かれ続けてただのセフレのような関係だったってこと?」

 「そうです!」

 美奈子さんが暫く俯いた後、立ち上がり私の頭をパーンと叩く。

 「いったーーー!い!何すんですか!!」

 「バカすぎるからよ!このバーカ!!好きじゃない相手をわざわざ毎日抱くわけないだろうが!!」

 「そんなことない!絶対遊ばれてただけだった!毎日夜抱きたいだけの性欲モンスターでしたよ!私以外もそうでしたって絶対!!」

 「いーや!あんた以外の彼女は絶対毎日抱かれたりしてないよ。知らないけど。賭けてもいいわ。仕事毎日大変なのに毎日あんたに時間使ってたんでしょ?好きじゃなかったらそんなことするわけないでしょ!?」

 「いやいやいや!ただの性欲モンスターですよ!仕事ストレスを性で発散させてるんですよ!毎日やれれば誰でもよかったんですよ!!」

 「バカじゃないの?ただの性欲だったらもっといい身体抱くわよ。」

 「あーーーー!今ライン超えの発言ですよ!人が気にしてるのに!そりゃあ美奈子さんみたいに胸おっきくないですけど、私も一応Cカップはあるんですからね!」

 「ペチャパイの貧相な身体のくせに身体目当てなんて思い上がりするなんてね。」

 「世の中には胸が貧相な方が好きな嗜好の殿方もいるんです!特に男の人は抱かせてくれるなら誰でもいいって言うじゃないですか。その時は私が恋人だったから抱きたい放題の都合のいい女が手に入ったぐらいに思われてると思うじゃないですか!」

 「あーはいはい。話を要約すると貴方が鈍感系ヒロインのくそうざい女だから、愛されてるのに気づかなかったです。てへぺろってことね。」

 「ハァーーーー!?!?私が悪いんですかぁ!?毎日セックスしてたら誰でもそう思いますって!!ただのセフレにされてると思いますって!」

 「じゃあなんで別れなかったのよ。セフレ扱いされて嫌だったんでしょう?」

 「そりゃ…まぁ…当時はめちゃくちゃ好きでしたから……そんなこと言って捨てられたくなかったし……。」

 「でも耐えきれなくて一週間旅行は行ったんでしょう?その後も関係は続いたのでしょう?その時に回数減らして欲しいとか言えばよかったじゃない。」

 「ゔーーーーー。当時は惚れた弱みといいますか……。嫌われたくないって思って…。どうせ一ヶ月〜三ヶ月ぐらいで捨てられるんだし、もうちょっと頑張ってみようかなぁ〜みたいに思ってて…。」

 「一週間の旅行に行くは言えたくせに。」

 「それもめちゃくちゃ葛藤しましたよ?でも仕事は一生ものだからと思って、仕事を優先しました。ここで一週間会わないって言ったらもう捨てられるだろうなって……思いました。でもやっぱり一ヶ月〜三ヶ月で終わる関係なんだからと思って、勇気を振り絞って言ったんですよ。一週間絶対に会わない。連絡も一切しないって。」

 「連絡も一切しなかったの?」

 「はい。気が散るので。LINEもブロックして着信拒否してました。」

 「……貴方ってホントにゼロか100しかないのね…。そんなことされても許されたんでしょう?」

 「はい。帰って会いに行ったら。会いたかった。寂しかったって言われて…。やっぱり嬉しくなっちゃうじゃないですか。もう捨てられるとこっちは思ってたし。だから会う回数減らしてとかも言えなくて……。」

 「そこで普通気づくけどね。愛されるなぁって。」

 「一週間程度なら他にタイプの女の子見つからなかったのかな?ラッキーぐらいに思ってました。」

 「貴方は鈍感系ヒロインじゃないわ。大バカよ。ただの大バカ系くそウザ女。」

 「友達にも似たようなことに言われましたね。流行ってくれないかな。大バカ系くそウザ女。」

 「世の中そんな女ばっかりになったらこの世の終わりだわ。」

 「性悪クソビッチ系に言われたく無いですけどね。」

 「誰が性悪クソビッチよ!」

 「そんなんでしょ?」

 「そうだけど!」

 「私達足して割ったらいい感じの女になれそうじゃないですか?」

 「大バカなクソビッチがいい女なの?」

 「いい所と悪い所も入れて!」

 「貴方のいい所ってどこなの?」

 「えっ…顔かな…。」

 「私もよ。美人でバカなクソビッチが出来上がるだけね。」

 「わぁ!!夜の街を練り歩くいい女になるわね!」

 「世の中の大半はそんな女をいい女とは呼ばないわよ。」

 「多数の意見なんて気にすることないですよ。自分の価値観を信じてあげないと。夜の世界を生きる女。かっこいいじゃないですか。」

 「夜の世界を生きる女は好きでそうなったわけじゃないわよ。バカだからそう生きるしかなくなったのよ。憧れてなるもんじゃない。闇に飲まれて自我がなくなっていくわよ。」

 「経験者は語る?」

 「……友人の話よ。」

 「友達いないんじゃなったっけ?」

 「私の周りにいい男がいるから寄ってきていただけのクソ女よ。」

 「素直じゃないなぁ。さっきは友人って言ってたくせに。闇堕ちしていく友人を止めれなかったことに自責の念があるんでしょ?」

 「………。うるさいな。」

 「美奈子さん。その友人は世の中から見れば闇堕ちして不幸になってしまった憐れな女かもしれないですけれど、きっとそんなことはないんです。その友人は自ら選んで闇堕ちしたんですから。子供の歳なら可哀想な話かもしれないけれど、もう二十歳を超えた大人だったんでしょう?それならその友人は闇堕ちしたかったんです。不幸せかなんて私達が決めることではないです。何があったかはわからないけれど自分で選んだ道だから、幸せになる為の選択だったんじゃないでしょうか。」

 「貴方は何も知らないからそう言うのよ。綺麗事ばかりのお子様。虫酸が走る。普通に生きてこられた人間が偉そうに闇の世界の話をするんじゃないわよ。」

 「まぁ…そうなんですけれど…。気を悪くしたならごめんなさい。私が言いたかったのは美奈子さんのせいじゃないですよってことですよ。」

 「そんなことわかってるわよ。偉そうに語らないで。だから私バカな女って大嫌い。感情的に動くだけで先のことなんて考えないんだから。ホント…バカ。」

 「美奈子さんって優しいんですね〜。」

 「あーーー!もう!!貴方も本当にバカな女だから大嫌い!」

 「もしかしてツンデレ?」

 「本当に嫌い!!」

 「何かに目覚めそう…。」

 「気持ち悪い!!!」

 「美人に罵倒されるのって興奮しますよね。」

 「本当にやめてよ!こわい!こわすぎる!!」

 「ごめん!ごめん!あまりにも興奮させるからさ!ほら!メインディッシュのお肉が来ましたよ!!」

 「あーーー!最高!!ここのステーキいつ食べてもめちゃくちゃ美味しい〜〜。」

 「こんなに美味しいお肉初めて〜。しかも奢り〜。最高すぎる〜。」

 「なんでこんな話になったのよ!」

 「女子トークなんて本筋のまま話すことなんてないじゃないですか。」

 「まぁそうだけど。本題の話よ。」

 「えぇ〜聞きたくない〜。」

 「タダでいい肉食わせてるんだから。」

 「わかってますよぉ。」

 「拓人が療養が終わって、仕事復帰したの。」

 「凄いじゃないですか!おめでとうございます!」

 「貴方のお陰よ。ありがとう。」

 「写真集がそんなに効果があるとは…。」

 「それだけじゃないわよ。仕事復帰するぐらい元気になったら会う約束でしょ?その為に拓人頑張ってたんだから。」

 「そうなんですね…。ハードル高くてこわいんですけど…。」

 「だからこれから家に行くわよ。」

 「これからですか!?」

 「逃げられると困るからね。」

 「そんなことしないですよ…。こっちにも心の準備というものが…。」

 「心の準備とか言って逃げ続けるつもりなんでしょ?」

 「そんなことしないですよ!今回会えばもう終わりなんですから!」

 「どうかなぁ?貴方逃げるの上手いじゃない。」

 「逃げないですから…ちょっと…一ヶ月後とかに…。」

 「バカなの?なんも予定ないくせになんでそんなに待たされないとダメなのよ。」

 「一応私も小説を書く仕事があります!」

 「一ヶ月の仕事を一週間で終わらせる天才型なのでしょう?」

 「ギリギリまでやりたくない自堕落型ですけど…。」

 「三週間暇してるのはわかってるのよ!」

 「どこでその情報を!?」

「貴方のインタビュー記事で。」

 「なんで読んでるんですか!?」

 「貴方のアンチだから。」

 「えっ…。普通にショック……。私の小説嫌いなんですか…。」

 「小説なんか読んだことないわよ。自分の夫が貴方のガチ恋勢だから嫌いなのよ。」

 「そうですね…。好きなわけないか…。うぅ…。でも小説はいい作品あるんですよ!」

 「嫌いな女の小説なんて読むわけないでしょう。」

 「そりゃあそうですけれど!辛い……。辛すぎます……。先入観除いて私の小説読んでみて下さいよ!私の魂込めて書いてるんですよ!!」

 「三週間はニートのくせに。」

 「小説家はみんなそうなんです!」

 「嘘つけ。お前だけだよ。クソヲタクの引き籠もりニートが。謝れ。」

 「全国の小説家の皆様。本当に申し訳ございません。」

 「美少女高校生だから売れただけのクソ小説家。」

 「あーー!!また言ってはいけないこと言った!!ライン超えですよ!!その言葉は一番効いちゃうんですから二度と言わないで下さい!!」

 「顔だけの小説家。お前なんかババアになったら売れねぇよ。」

 「読んでもないのにやめてくれます?私は大御所小説家の橋本幸雄先生のお墨付きの小説家なんですから!」

 「若くて可愛い女だからヨシヨシされてるだけだよ。」

 「私だけならいいけど、橋本先生のことは絶対悪く言わないでくださいよ。」

 「じゃあポストカード付きの小説なんか出すなよ。」

 「ぐうの音も出ません。私が全部悪いです。本当に申し訳ございませんでした。」

 「じゃあ家に行くわよ。」

 「本当に今から行くんですか?もう二十二時ですよ?」

 「拓人の仕事が終わってからだからいいのよ。それに貴方だって一日中会うより、夜中に少し会うだけの方がいいんじゃない?」

 「確かに!」

 「貴方の為に言ってるのよ?」

 「ありがとうございます!本日伺わせて頂きます!!」

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