第49話 ディナー
その後の2日間はフランス国立図書館に入り浸り、ホテルに帰って小説を書く夢のような日々を過ごしていた
夢心地に感じたままを小説に書くことはいつぶりだろうか
起承転結もなく、フランスの日々の日常を書いただけの趣味で書いた駄作だけど…結構気に入っている
フランス語で書いた小説なので、せっかくだから現地の人に読んで欲しいと思っているけれど
現地の人に読ませるのはどうしたらいいのだろうか
同人サークルとか都合よく開いていたら飛び入りで参加したいなぁ
私がフランス語の小説の原稿は一応データに残したいと言われて南さんがデータ化はしている
世に出すようなレベルの小説ではないんだけどな
今日はフランス滞在最終日だ
今夜は最後なので拓人さんが高級レストランに連れて行ってくれるようだ
「とても充実したフランス旅行だったなぁ…基本的家から絶対に出たくないけれど。こんなに楽しいなら色んな場所に行ってみたくなっちゃうなぁ〜。」
「フランス旅行というか…ほとんど本を読んでいただけじゃないか…」
と拓人が言う
「フランスでしか読めない本をたくさん読んだのよ。」
「日本でもやってることほとんど変わりないよ。」
「だから楽しかった。最高だった!!拓人さんは?楽しくなかったの?」
「…いや最高のフランス旅行だよ。今、俺の選んだドレスを着て玲と食事が出来たからね。」
「何で赤のドレスなの?」
「玲と初めて会った時に着ていたパーティのドレスは赤だったから。俺の中での玲のイメージは赤なんだよ。」
「あの日は1番目立ってやるんだって気合い入れてだからなぁ…」
「俺の為に?」
「…南さんから聞いたの?」
「うん。」
「恥ずかしい…本当にお喋りなんだから。」
「玲が無口すぎるんだよ。学生時代の話とか俺と別れた後に半年間は荒れていた話とか…たくさん聞いたよ。」
「人のプライベートをペラペラと…恥ずかしい。」
「玲って俺のこと凄く好きだったんだね。」
「そうじゃなきゃ付き合ったりしませんよ。私は拓人さんと違って誠実ですから。」
「俺だって玲と出会ってからは玲一筋だよ。会えなかった3年間拗らせて狂って辛くて死のうとしたぐらい愛してるよ。」
「私なんてセフレの一員でしかなかったと思ってた。」
「セフレ相手に仕事帰りに家まで会いに行ったりしないよ。」
「ただの性欲おばけだと思ってた。」
「だって…ベッドの上でしか玲は俺を見てくれないから。デートをしても俺のこと何で眼中になかっただろう?」
「そんなことは…」
「あるだろう?今回のフランス旅行のデートだって図書館でほったらかしにしていただけじゃないか。」
「だって本が読みたかったんだもん。」
「…別にいいんだよ。そんなところも好きだから。でもいつかは小説より俺を優先してくれたらいいのにって思うけど。」
「安心して。絶対ないから。」
「人生何が起こるかわからないだろう?」
「絶対ない。」
「俺はこれからの人生毎日玲を口説くんだよ。いつかは小説よりも夢中にさせてみせるよ。」
「ミナが不幸になることは絶対にしない。」
「美奈子は俺と玲が愛人関係として成立することを望んでいるよ?」
「もしも成立して…その後はどうなるの?ミナは子供を望んでいたわよね。」
「それは…諦めてもらうしか…」
「無理だよ。跡取りは必要でしょう?」
「俺は玲以外を抱かない。絶対に。」
「じゃあ私と拓人さんとの子供が出来たらどうするの?まさかのミナと拓人さんとの子供として育てるつもり?」
「そんなことするわけない。美奈子とは離婚して玲と結婚するよ。」
「ミナはそれで幸せになれるの?」
「それは…これからの人生幸せになる為に生きるんじゃないのか?美奈子は強かだから生きていけるよ。」
「そうかしら。私はそうは思わない。あんなに努力して努力して成功している女性は珍しくて…それなのに不幸を背負っている女性はもっと珍しい。ミナの努力が報われて幸せな家庭が築けるようになって欲しい。」
「ミナの新しい結婚相手でも探せばいいのか?」
「違うわよ。拓人さんが幸せにしてあげればいいじゃない。」
「無理だよ。俺には玲しかいない。」
「私より美奈子さんを選んだくせに。」
「違う!!俺はずっと玲一筋だ!!」
「私とよりを戻せないとわかっていたから…ミナと離婚しないでミナと仲良くやっていこうって思ってたんじゃないの?」
「でも無理だった。」
「今なら出来るわよ。これまでの無礼を謝って許して貰えたら大事に大事にしてあげてもう一度新しく信頼関係を結べば上手くいくわよ。ミナは拓人さんともう一度やり直したいって思ってるはずだもん。」
「俺は美奈子をずっと苦しめていただけだ。それは今も昔もこれからも変わらない。」
「それでも離婚しないで私を連れてきたってことはミナは拓人さんと今後仲良くしたいからじゃないの?」
「同じ家で自殺されるのが嫌だっただけだよ。」
「…。」
「俺は玲の為にしか生きられない。」
「今と昔は違うの。あんなに素敵な女の子を傷つけて捨てるだなんて酷すぎる。そんな男絶対に好きにならない。」
「ミナを幸せにすれば俺とより戻してくれる?」
「出来るならいいよ。」
「本当か!?」
「…そんな簡単に出来るわけないよ。ミナの愛情はかなり歪んでるから。」
「玲の為ならなんだってやる。絶対にミナを幸せにするからな。」
「ミナを幸せにするならそのまま妻として愛してあげればいいと思いますよ。」
「ミナに本命の男を作らせればいいだけさ。日本に帰ったらすぐにミナが好きそうな男を紹介してやろう。」
「旦那からうちの嫁いいでしょう?なんて紹介されたらこわいわよ…」
「食事の後、俺のホテルの部屋に来ないか?」
「何で?」
「愛し合う為に。」
「バカじゃないの。行くわけないじゃない。」
「残念。ベッドで極甘に甘やかしたかったのになぁ。」
「…そんな恥ずかしいキザなセリフよく言えるわね。」
「誰も見てないし、誰にも言わないよ。今夜のことは2人だけの秘密にする。だから…いいだろう?」
私は拓人さんの目の圧に押されて目を逸らす
甘い言葉を吐かれると弱すぎる
ベッドの上で優しく甘やかしてくれたことを思い出してしまう
何も考えられなくなって
幸せな時間を過ごした日々を
思い出してしまう
「…もう甘やかされるような歳じゃないから。」
私は食事を終えて席を立つ
これ以上一緒にいると危険だ
「待ってよ。キスは?」
「しない!!」
「ダメだよ。そんな抱かれたくて仕方ないみたいな顔して返せないよ。」
「そんな顔してないもん!!」
「してるよ。ほらこのまま帰るなら無理矢理俺のホテルの部屋に連れ込んじゃうよ。」
「やだ!」
「じゃあ玲からキスしてよ。キスは玲からならいいんだろう?」
「キスしたら自分のホテルに返してくれる?」
「約束するよ。」
私は拓人さんにキスをする
拓人さんは舌を絡めて大人なキスをしてくる
私は抗えずされるがままにたくさんキスをした
酸欠になるぐらいいっぱいキスをして涙目になる
力が入らなくなって腰を抜かしてしまった
「フフッ。約束通り玲のホテルに連れて帰ってあげるよ。」
私は拓人さんにお姫様抱っこをされてタクシーに乗って自分のホテルの部屋まで帰ってきた
「入ってもいい?」
「ダメ!!」
「そう…残念。」
私は机の上に乗せていたフランス旅行で書き上げた小説を手にする
「…これ。読む?」
「…え?これって玲がフランスで書いた小説?」
「そう。誰にも読ませることないから…」
「…じゃあ俺が貰う。」
「読んでくれるの?」
「いつか玲が小説よりも俺を優先してくれた時に読むよ。」
「…一生読めないよそれ。」
「そんなことない。1年後には読んでみせるよ。ありがとう。大事にする。」
「私よりも大事にしてね。」
拓人さんは自分のホテルの部屋に帰り、私は自室で寝た
こうして私のフランス旅行は終わった




