第47話 ルーヴル美術館
玲は南さんに取られてしまい、ホテルへと帰って行った
俺はVIP部屋で1人で過ごし、朝を迎えて玲を迎えに行く
「おはようございます。真中さん。」
玲の部屋に入ったはずなのに当然のように南さんがいた
「俺は玲とルーヴル美術館に行く約束をしているのだが。」
「知っていますよ。迫田先生は朝、起こさないと起きれない人ですから。真中さんとの約束の為にこうして私が起こしに来てあげていたんですよ。」
「業務外も玲の世話をするのは大変ですね。」
「好きでやっているので大丈夫ですよ。起こすのが遅くなってしまってまだ朝食を食べている途中なのでソファに座ってもう少し待ってくれますか?」
「お気遣いありがとう。じゃあ待たせて貰うよ。」
玄関からリビングへ入ると朝食のパンとコーヒーを食べている玲がいた
「おはよう。玲。」
「おはようございます。拓人さん。すみません…寝坊してしまって…すぐに用意しますので…」
「気にしないで。ゆっくり食べてよ。」
「すみません…」
俺はソファに腰を掛けて玲の準備が終わるのを待つ
「お待たせ致しました。」
着替えて部屋から出てきた
シンプルなシャツとパンツスタイルだが
体のラインがよく出ていて女性らしい美しさが際立つ服装だった
「素敵だ…とてもよく似合っているよ。パリコレのモデルになれるよ。」
「そんなわけないでしょう。大袈裟だなぁ。」
「それじゃ行きましょうか!」
南さんが意気揚々と出掛ける準備をしている
「当然のようについてくるんですね。」
「いいじゃないですか!旅のお供はたくさんいた方が楽しいですよ?」
「男女の仲に間に割って入るのはどうかと思いますが。」
「デートの約束は1日だけのはずでしたよね?いいじゃないですか!私も1人でフランス観光するのは寂しいですから!」
「はぁ…わかりましたよ。」
俺達は3人でルーヴル美術館へと向かった
入館するとすぐに玲の足が止まる
「玲?どうしたの?」
目は美術品を見据えており、心あらず
俺の声は全く届いていないようだ
「迫田先生ルーヴル美術館とても気に入ったようで何よりです。ゾーン入るの早かったですね。今日はもう1度も話すことは出来ないかもしれませんね。」
「…南さん相手でも会話は成立しないことあるんですね。」
「しょっちゅうですよ。私のことなんて何も見えてないんだから失礼しちゃうよね。」
「嫌になりませんか?反応が返ってこないのは。」
「初めはショックでしたけど…今は楽しいですね。この瞳に映る景色が迫田先生の小説の世界を広げているんだなと感心します。」
「俺は…何回経験しても慣れる気がしません。いつも玲の瞳には俺がいて欲しいと思ってしまいます。」
「4年前なら…小説よりも真中さんを選ぶかもしれなかったのに。今はもう小説一筋です。諦めた方がいいですよ。」
「4年前も1度も小説に勝ったことなんてなかったですよ。」
「それでも…あの頃の迫田先生は真中さんに夢中でしたから。」
「当時からデート中はほとんど無視されていましたよ。夢中になってくれていたのはベッドの上だけです。」
「…迫田先生の小説は元々崇高な作品だったんです。」
「今は違うんですか?」
「はい。以前の迫田先生の小説は世間の声なんて関係なく、自分の書きたい世界を貫くものでした。初期の小説の方が同業の小説家からは人気が高かったりするのですよ。」
「今は大衆向けに書いていると?」
「はい。何故だと思いますか?」
「それは…売れる為じゃないですか?」
「フフフッ。いいえ。迫田先生が初めて大衆受けを意識して書く話は小説で大賞を取る為でした。」
「どうして賞を急に取りたくなったのですか?」
「真中さんに会う為に。」
「…え?」
「大学の講義で見かけた真中さんに一目惚れした迫田先生はもう一度真中さんに会う為に小説で賞を取ることにしたんです。有名なパーティには真中さんも参加すると聞きつけたんです。」
「本当ですか…?」
「はい。それで本当に小説で賞を取った上にパーティで真中さんを捕まえて彼氏にしてしまうんですから。凄い人ですよ。本当に。」
玲が…俺に会う為に小説で賞を取った?
初めて玲に会った日を思い出す
パーティで少し怯えながらも精一杯挨拶してくれたあの時を
震えながらワンナイトを誘ってきた玲を
処女のくせに大胆にホテルで襲ってきたあの夜を
大好きな小説を利用して
俺に会いにきて
俺に抱かれに来てくれた
ずっと不思議だったんだ
あの夜俺に何故ワンナイトしようなんて玲が言ったのか
そんなことを言う軽い女じゃないくせに
ものすごい面食いで俺の顔が相当気に入っただけだったのかとか色々考えたけれど…
違ったんだ
あの夜に玲は俺に恋をしたんじゃない
もっと前から…玲は俺を好きでいてくれて
あの夜に会いに来てくれていたんだ
気づけば俺はポロポロと涙を溢していた
「ちょ…!だ…大丈夫ですか!?」
「すまない…ちょっと感極まってしまって…愛されていたなと…嬉しくて…」
「そうですよ。それなのに…性処理のような扱いをされて…本当に可哀想でしたよ。」
「そんな扱いしていない!!俺は毎回愛を囁いていた!!」
「毎日呼び出されてセックスしかしない男なんて信用出来るわけないじゃないですか。」
「だって…デートは…つまらなさそうにされるから…」
「…なんとなく想像はつきます。まぁ昔話です。今はもう関係ありません。真中さんも写真集のおかげで元気になったのでしょう?そろそろ迫田先生に引っ越しさせてあげてくださいよ。」
「それは出来ない。俺は玲と離れるとまた狂ってしまう。」
「そんなことで迫田先生を一生縛るつもりですか?振られたんですから大人しく妻の元へ帰ればいいんですよ。」
「玲だけは離せない。全てを捨てても玲を手に入れる。覚悟は決まってるんだ。」
「遅すぎましたね。4年前なら迫田先生も拓人さんを選んだかもしれませんが…今はもう小説しか考えられませんよ。」
「そんなことはない。絶対に手に入れてみせる。」
「今まさに美術品にも負けている真中さんには不可能だと思います。」
「…でも邪魔するわけにはいかないだろう?」
「まぁ…そうですね。無理やりこっちを向かせるとブチギレる可能性がありますから…」
「お世話係さんなんとかしてくれよ。すぐにキレる癖は治せないのか?」
「邪魔しなければ怒ったりしませんから。好きにさせてあげましょう。」
「甘やかすからダメなんじゃないのか…」
玲は美術品に夢中になっている間も何人もナンパされているが俺が牽制して止めている
目の前で繰り広げられる言い争いも玲はまるで見えていないようだった
その後も美術品に夢中になりながら玲は足を止めて眺めている
玲の背後に怪しい男が立ち
玲のお尻を撫でた
俺は頭が沸騰してそいつの顔をグーでブン殴る
「てめぇ!!何しやがる!!痴漢野郎!!」
「Fuckyou!!!」
痴漢野郎はあろうことか逆ギレして俺に殴りかかってきた
「ちょっと!!こんなところでやめてください!落ち着いてください!!真中さん!!」
と南さんが俺を制止しようとする
殴り合いの喧嘩をしようとすると
「うるさいなぁ…」
と玲が俺の口に突然キスをした
「満足した?ちょっと静かにしてくれない?」
俺は唖然として立ち尽くす
痴漢男は警備員に捕まり連れて行かれた
玲の行動の意図が全くわからず混乱することしか出来ない
俺のこと…好きなのか?
今なら何をしても許される…?
俺は美術品に夢中になっている玲の口にキスをした
バチーン!!と玲は俺の頬をビンタする
「何すんのよ。殺されたいの?」
「…すみませんでした。」
俺は玲の気持ちが全然わからない




