第45話 フランスデート
フランス国立図書館で10時間程過ごし、玲はこちらを見向きもせずに本を10冊読んでいた
閉館時間になり宿に帰ろうとしたので、レストランに行こうと引き留めた
玲は食事も水分も取らずにほぼ10時間本を読んでいたのでレストランの誘いにのってくれた
「本場で食べるラタトゥイユは格別に美味しいわね。本に夢中になっちゃってお昼ご飯食べ損ねたから2皿食べれちゃいそう。」
「そんなに大盛りで食べれたことないじゃないか。」
「拓人さんと付き合っていた頃は遠慮して小食だったからね。」
「遠慮して小食になる必要なんかあるのか?」
「だって恥ずかしいじゃない?大食いなんてさ。」
「大食いの女の子が恥ずかしいだなんて誰が言い出したのか知らないけど、そんなことで幻滅する男なんてほとんどいないと思うよ。」
「えー?拓人さんより大食いならちょっと引くでしょう?」
「俺は気にしない。玲は俺に好かれたくて小食のフリをしていたのか?なかなかいじらしくて可愛いことを
するじゃないか。」
「大昔の話ね。今は関係なくなんでも食べれるわよ。まぁ大口叩いただけで大食いじゃないけどね。さすがにラタトゥイユ2皿は食べられないな。」
「いっぱい食べる玲は可愛いだろうから見たかったなぁ。」
「残念でした。デザートはたくさん食べてあげる。」
「遠慮せずにたくさん食べて。玲は細すぎるからね。」
玲はデザートにモンブランを注文したので、俺も同じものを注文した
モンブランが届くと目をキラキラと輝かせて大喜びしていた
1口食べると
「ん〜♡めちゃくちゃ美味しい〜♡甘ったるくなくてほどよい甘さが最高に美味しい♡♡♡」
か…可愛い
めちゃくちゃ可愛い
こんなにはしゃいで食べている玲を見るのは初めてだ
10時間放置されていたことなんて何もかもどうでもよくなる破壊力の可愛さだ
この笑顔の為に俺は今日まで生きてきたんだ
今日の俺は人類で1番幸せだ
歓喜で胸が震えながら俺もモンブランを食べる
「本当だ…美味しいね…」
俺がそう言うと玲は自分の世界に入っていて全く俺のことを見ていなかった
目の前のモンブランに夢中になって俺のことは眼中にないようだ
「はぁ…」
いつも通りに放置されて落胆する気持ちとモンブランに夢中で幸せそうにする玲を見れたことの喜びが重なる
今日も本に夢中になりずっと放置をされていたけれど
嫌だったわけじゃない
幸せに本を読む玲を眺めることも俺は好きだからだ
会えなかった日々を
会いに行けなかった日々を
インスタから玲を眺めることしか出来なかった毎日の方が辛くて苦しかったから
近くで玲を眺めることが出来るだけで
俺は玲に救われているんだ
玲は幸せそうにモンブランを食べ終えて食後のコーヒーを飲む
やっと俺のことも眼中に入ったようで会話が可能になる
「フランス国立図書館で読書して、その後レストランでラタトゥイユとモンブランを食べるなんて人生で1番最高のデートだったわ。ありがとう。」
「別に俺じゃなくてもよかったようなデートだったけどね…」
「卑屈だなぁ。今後の人生で最高のデートは何ですか?と聞かれたら今日のことを話してあげるからいいじゃない。」
「俺はもっと玲と親密になるようなデートがしたかった。」
「何で私と親密になりたいの?」
「玲が好きだからに決まってるだろう。」
「でも拓人さん結婚してるじゃん。」
「玲が俺ともう1度付き合ってくれるなら離婚して全てを捨てて玲についていくよ。」
「私がそんなことしないってわかってるくせに。」
「玲は俺が好きだと言っている。諦めることなんて出来ない。」
「拓人さんはどうして別れた後、私を探したり会いに来なかったの?」
「そ…それは…別れた後に追いかけ回すようなことをすればストーカーになるし…」
「私ともう1度会ってもより戻せると思っていなかったからでしょう?」
「…。」
「だから私に会いに来なかったし、離婚せずにミナと結婚生活を続けた。離婚しなかったのはミナとの結婚生活を頑張ろうと思っていたからじゃないの?」
「俺にはどうしようも出来なかったよ。美奈子は俺が壊してしまった。あんなに夜遊びするような女じゃなかったのに。壊れていく自分と美奈子を俺はどうすることも出来なかった。そんな時に玲が俺の目の前に現れた。まさに救世主だった。俺も美奈子も玲がいるから今は幸せに過ごすことが出来ている。この日常を手放したくないよ。」
「あんなに可愛くて美人で賢くて金持ちで何もかも持っている理想の女の子と結婚できたくせにさ。ミナを泣かせるんだから酷い男だよ。」
「美奈子には悪いことをしたと思っている。でもどうしようもなく玲が好きだから。玲じゃなきゃダメなんだ。」
「ミナと仲直りした方が幸せになれるのに。」
「地獄に堕ちても構わない。玲が隣にいる地獄なら俺はその日常が欲しい。」
はぁ…と呆れ混じりのため息を玲はつく
「私に出会う前は仕事一筋のかっこいい人だったんだけどなぁ。恋するだけでこんなバカになっちゃうんだから…こわいなぁ。」
「俺は玲に恋をしてバカになって本当によかったと思っているよ。」
「そんなこと思ってるの拓人さんだけだからね。」
「明日のデートはどこに行くの?」
「デートは1日だけでしょう?」
「ほとんど会話してないじゃないか。」
「でも10時間以上ずっと一緒にいたわよ。十分でしょう?」
「明日の予定は?」
「またフランス国立図書館に行くけど。」
「他の場所は?観光しないのか?」
「しない。」
「エッフェル塔とかルーヴル美術館は?」
「うーん。本が1番魅力あるからなぁ…」
「せっかくフランスまで来たんだから行こうよ。芸術作品は好きだったじゃないか。」
「まぁそうだけど…あんなにまだまだたくさん本があったのに1日読めない日があるなんてもったいない…」
「小説の題材になるようなオブジェがたくさんあるよ。観光でしか見えない世界もあるだろう?」
「確かに…」
「じゃあ明日はルーヴル美術館から観光しようね。」
「なんで拓人さんと行くことになってるの?」
「いいじゃないか。ほら今夜のホテルは特別VIPの部屋を取ってあるからね。」
「いや…自分のホテルの部屋に帰るけど。」
「フランスのVIP部屋だよ?知りたくないかい?小説家の迫田玲さん。」
「そう言えばなんでも釣れると思っていませんか?さすがの私もそんなノコノコついていきませんよ。」
「フランスの街並みを一望出来る部屋だよ。それに…特別に保存されている禁書があるんだ。」
「!?」
「VIP部屋でしか読むことが出来ない代物だよ。」
「仕方ないですね。VIP部屋をキャンセルするのももったいないですから行きましょうか。」
誰でも思いつくような罠であっさりと釣れてしまう玲がちょろすぎて逆に不安になってしまう
本をちらつかせたら汚いおっさんにもほいほいついていくのだろう
玲は小説が1番で
自分のことはいつも二の次にするのだから




