第41話 恋人役
迫田先生の写真集の照明係を担当することになった
ロケ地がフランスだと聞いて大喜びした
初めてヨーロッパ圏へ行けることになった
日数の半分は仕事だけれど、残りの日数は遊んでもいいと言われていた
まさに大当たりの仕事だった
こんなにも太っ腹に金が出るのは迫田先生のファンである真中さんがスポンサーになり出資してくれているからだそうだ
神様仏様真中様
本当にありがとうございます
真中さんの為にも迫田先生を1番ベストな角度で光照らして最高の写真集に仕上げようとウキウキで飛行機に乗ったのに…
「山倉さーん!一緒にご飯食べよ♡」
「山倉さーん!コンビニ行くのついて来て!3分後ロビー集合だから!!」
「山倉さん!!もっと腕組んで密着して!!恋人繋ぎして!!」
何故か僕はフランスで迫田先生の偽恋人役に任命されてしまった
迫田先生は有名な美人小説家だ
小説を書くよりもアイドルになったほうが天下取れると言われていた
テレビやSNSでよく目にしていて可愛い人だなぁと思っていたけれど
実物は浮世離れしているほど美人だった
造形が芸術品そのものだ
美人は迫力があるというけれど本当にそうなんだなと思った
そんな美人が何故か成り行きで僕が恋人役に任命された
ナンパ対策の男避けとして
初日に精一杯男避けの任務を全うしたことで僕は迫田先生に気に入られることになり
勤務時間外もことあるごとに呼び出されることになった
正直めんどくさいけれど、実際に会って迫田先生が僕に懐いている姿を見ると傍若無人ぶりも許せてしまう
どうせ僕はフランス滞在の間しか迫田先生と関わることもないだろうし
こんな美人とフリでも彼氏になれたのだから
フランス滞在中は恋人気分を味わさせてもらうことにした
迫田先生はメンタル面に問題があるらしく
撮影初日、ショップ店員に腕を掴まれて泣いてしまったらしい
ホテルに戻った迫田先生を僕と南さんで必死で宥めて撮影が再開された
外で撮影をすると野次馬が集まってきてヤジを飛ばしてくる
僕はフランス語がわからないので何を言っているかわからないけれど迫田先生はわかるようなので
野次馬の言葉を聞いて落ち込む迫田先生を僕が宥める係になっていた
「迫田先生。お疲れ様です。今日の撮影はこれで終わりだそうですよ。」
今日はショップ店員に泣かされてからもう撮影出来ないのではないかと思われたけれど、なんとか無事に撮影を終えることが出来た
「もうやだ…今日の撮影だけで写真集作ろうよ…」
「まだまだ別衣装で活躍する迫田先生を見せてくださいよ。」
「せめて室内でしない?人前で撮影なんてするものじゃない…」
「フランスの街並みを背景にする為にフランスに来たのに室内で撮影しませんよ。」
「なんで外国人はあんなに元気なの…?撮影なんてほっといてくれたらいいのに…」
「迫田先生だからかもしれませんが…」
「どういうこと?日本人差別?」
「いや…美人だからじゃないですか?」
「フランス人の方が私より顔も体も整ってるでしょう?アジア系なんて地味だし映えないのに騒がれる意味がわからない。」
「最近、日本人女性は外国人に人気らしいですからね…黒髪美人にみんなテンション上がっちゃうんじゃないですか?」
「髪染めようかな。金髪に。」
「金髪にしても騒がれますよ。諦めてください。」
「もっと静かな場所で撮影しない…?」
「今日のシャンゼリゼ通りが1番人が多いところですから明日からは少しマシになると思いますよ。」
「乱入してくる人とか出て来そうでこわい…」
「大丈夫ですよ!流石に撮影している間は安全に配慮していますから!」
「早く図書館行きたい…」
「黙ってポージングすればすぐ終わりますよ!頑張りましょう!」
腕を組んで恋人繋ぎをしてコンビニで買い物をするのはもう慣れてきた
初めは腕を組まれるだけでドキドキしていたけれど…
コンビニを出て、ホテルに歩いて戻ろうとすると
「玲から離れろ!!」
と僕の腕から迫田先生を引き離す
「お疲れ様です。真中さん。」
僕は社会人として挨拶を交わす
「何をするの!?離してよ!!」
迫田先生は僕と引き離された手を真中さんと無理矢理繋いでいる状態で怒っている
「玲!!こんなやつと腕を組んで歩くなんて危ないじゃないか!」
「危ない?どこが?寧ろ安全の為にやってるのに!」
「意味がわからない!!あの男は何者だ!!」
「彼氏だよ。」
「え!!ちょっと語弊がありますよ!フランス滞在中だけボディガードをしているだけですから!!」
俺はすぐさま彼氏という肩書きを否定する
真中さんは既婚者だけれども迫田先生が大好きなことは明白だ
何故か迫田先生を心酔していて大金を出してフランスで写真集を作ろうとしている
噂によると写真集も真中さんがゴリ押して迫田先生が仕方なく引き受けたようだ
迫田先生は真中さんを迷惑がっていることから愛人関係とかではなさそうだが…
迫田先生のことを俺の女だと真中さんは主張しているので
僕は彼氏ではないことを全力で説明をする
「こんな頼りない男にボディガードを頼むのは心許ないだろう?俺が玲のことを必ず守ってくれるSPを用意したから安心して!!」
そう言って目の前にガタイのいい高身長でマッチョの外国人を用意してくれていた
「やだ!!こわい!!この人やだ!!」
迫田先生はSPに気圧されて拒絶している
まぁ気持ちはわからなくはない
味方だとわかっていても側にいるだけでこわい
「玲の味方だから心配しないで。」
「いや!!私の彼氏役は山倉さんがいい!」
「ダメだ!!そんなやつに玲を守れない!」
「守ってくれたもん!」
「彼氏役なんて認められるわけないだろう!?悪い虫をつけるためにフランスまで来たんじゃない!」
「山倉さんのどこが悪い虫なの?誠実で優しくてとてもいい人だわ!!」
「他の男を褒めるな!!玲は俺だけを見ていればいいんだよ!」
「私が誰と付き合おうが拓人さんには関係ないでしょう?」
迫田先生がそう言うと真中さんは口を塞ぐようにキスをする
迫田先生は抵抗するけれど無理矢理何度も何度も恋人のような甘くて深いキスをする
「思い出した?玲が好きなのは俺なんだよ。」
迫田先生は腰が抜けて息切れをしている
「フフッ。久しぶりに何度もキスをしたから刺激が強すぎたかな?大丈夫?玲…」
迫田先生は真中さんの顎にアッパーを決めた
「ぐはッ…」
真中さんがその場に倒れ込む
「地獄へ堕ちろ!!バーーーーカ!!」
小説家のくせに語彙力がゼロに乏しい捨て台詞を吐いて迫田先生は僕の手を掴み走りだす
「何やってんの!早く助けてよね!!私の彼氏でしょう!?」
と迫田先生が僕に文句を言う
「僕は雇われ彼氏なので。雇い主の方からNGを出されては手出し出来ませんよ。」
「雇用主は私じゃないの!?」
「残念ながら真中さんです。今日で解雇されてしまったので…これからはSPの方に守ってもらってください。」
「やだ!こわい!山倉君がいい!!」
「短い夢を見させてくれてありがとうございました。さようなら。迫田先生。」
「絶対嫌だから!!山倉さんが彼氏役じゃないなら撮影続行しないから!!」
「えぇ…そんな我儘言わないでくださいよ…」
「私が我儘?既婚者のくせに独占欲丸出しな拓人さんの方が我儘でしょう!?私は絶対悪くない!!」
「まぁ…とりあえずホテルに戻って休みましょうか…」
僕達は走ってホテルに向かった




