第36話 ファミリーレストラン
私はまた写真集の打ち合わせの為に表参道を歩いていると、つい先日私をナンパした拓人さんの友人を見かけたので
「あ!こんにちは!!」
と声を掛けるとあからさまに嫌な顔をされた
なんて素直な人なんだ
上っ面の愛想笑いをされるよりもずっといい
「…こんにちは。」
軽く会釈をして逃げるように去っていこうとしたので
私は腕を掴んで引き留めた
「ちょっと待ってくださいよ!」
「な…!?私に用はないでしょう!?」
「今昼休憩ですよね?私とお茶しません?」
「忙しいんだ!」
「えぇ〜?お昼の12時ですよ?1時間休憩でしょう?」
「だとしても俺達は一緒にお昼を食べる間柄じゃないだろう?迫田さんも一期一会だと言っていたじゃないか。」
「ここでもう一度会うなんて運命かもしれませんよ?」
「そんなものは全くない!勘弁してくれ!拓人にバレたら俺の命はない!」
「本気で嫌がっている人間って意地悪しちゃいたくなりますよね。」
「嫌がってる人に強要するのはいけないことだと道徳の授業で習わなかったのか?」
「道徳なんて時代によって変わりますからね。自分の正義を貫けばいいんです。」
「嫌がってる人間に意地悪するのは悪なのでは?」
「私の道徳の教科書にはそんなこと書いていませんね。」
「世間一般常識としての指針は?」
「世間なんて権力者に踊らされてるだけのバカですから。1番信じてはいけません。」
「わかった。でも俺は1人が好きだから俺は1人でランチをしたい。」
「私はナンパについていってあげたのに…」
「う…」
「今回私のナンパについて来てくれたら貸し借りなしでリセットされますよ?」
「今回だけだからな…拓人には言うなよ。」
「わかりましたよ!2人だけの秘密♡ですね!」
「共犯と言ってくれ。」
私は腕をそのまま引っ張って連れて歩く
上級民族が行かないお店に連れて行ってやろうとラーメン屋とかを探したけれど
オシャレな表参道には見つけられず断念した
仕方がないのでファミリーレストランに入る
「ここは…ファミリーレストランか?」
「そうです。」
「家族以外が入ってもいいのか?」
「当たり前です。1人で食事に来て断られる店なんてないです。」
「いや…一見さんお断りとか、子連れ禁止とかはあるだろう?ファミリーレストランは家族連れ以外禁止だと思っていたよ。」
「そのまま勘違いしていた方が可愛かったのに…余計なことしちゃいましたね。」
「わっ!猫のロボットが!」
「猫ロボットが配膳してくれるんですよ。」
「すごいハイテクノロジーだ…ファミリーレストランは最先端だね。」
「注文はこれでするんですよ。」
「タブレット?」
「そうです。」
「タブレットで写真を見て選ぶのか?」
「そうです!便利でしょう?」
「便利だけれど…シェフと直接話せないのは残念だな。今日のおすすめとか聞けないじゃないか。」
「ここのシェフは学生です。」
「な…なんだと!?」
「ファミリーレストランはほとんどアルバイトが料理していますから。高校生もいますよ。」
「凄い…最近の学生は料理をしてお金を稼ぐのか。」
「将来自炊するのに役に立ったりするみたいですよ。」
私は本日のパスタを選んで、ナンパ男は本日のランチの生姜焼きを選んでいた
猫のロボットが私達のランチを運んできた
「す…すごい!自分で方向転換をして配膳している!それに挨拶まで…!!有能すぎる!!」
「かわいいですよね。」
スマホでパシャパシャと猫ロボットを撮っていた
スマホで写真を撮るなんて今はインスタ用しか撮ってないな
この人は…おそらくインスタとかあまりしてなくて
自分の好きなものをたくさん撮っているのだろう
純粋にカメラを楽しめているのが
少し羨ましい
インスタとかあまり考えずに写真撮りたいな
今度フランスに行ったらスマホで写真をたくさん撮りたいな
図書館は撮影禁止だろうか
「迫田さん!料理届いていますよ!」
「あ…ごめん。」
「相変わらず会話中に意識がどこかにいってしまうのですか?」
「治らないわね。昔よりはマシになった気がするけど…」
「別に治さなくてもいいじゃないですか。」
「でも…気分悪くなりませんか?話している途中に無視するなんて。」
「まぁ…でもそのおかげでいい小説が書けているのでしょう?人に嫌われても小説は最高のものを書きが上がるって俺はプロ意識高くて好きですよ。」
バンッ!!と私達の机を何者かが叩く
「こんなところで密会デート?玲。健。」
何故か拓人さんが目の前に現れる
「はい。そうです。」
「ちょっ…!!違うって!!ランチに誘われて断れなかっただけ!!」
「随分と仲良くなったようだな。」
「はい。邪魔なので出て行ってくれませんか?」
「おい!!やめろ!!俺が出ていくから!!」
「玲がランチに誘ったのか?」
「ええ。」
「何故?」
「楽しそうだったから。」
「楽しかったのか?」
「拓人さんが来る前までは楽しかったですね。」
「俺は邪魔だと?」
「…うるさいな。醜い嫉妬はやめてよね。ちなみにこの人は悪くないからね。この人を責めるようなことするなら絶交するから。」
「そんなに健が気に入ったのか?」
「はい。」
「…人に興味なんて持たないくせに。」
「そんなことないわよ。私の趣味は人間観察よ?」
「自ら干渉することはしないくせに。」
「私の顔見て逃げ出すからつい虐めただけ。この人は悪くない。」
「意地悪で連れて来たってこと?」
「そうよ。」
「俺には意地悪したことないのに。」
「しつこい!!めんどくさい!!執着系ストーカーやめてよね!!だいたいどうしてこの場所がわかったの?」
「答えは沈黙。」
「意味不明なことやめてよ!本当に迷惑!!」
「ごめん。ごめん。お詫びにここの食事は払わせてもらうよ。」
「そんなことしなくていいから早く出て行ってよ!」
「こんなところで会うなんて奇遇だね。一緒にランチしよう。」
そういいながら拓人さんは私の隣に座る
そしてパンッパンッと手を叩いて
「シェフ!今日のおすすめを出してくれないか?」
と拍手でシェフを呼ぼうとしている
「ちょっと!何してるんですか!注文はタブレットでやるんですよ!」
「タブレット?何だそれは。」
「もう!今日のおすすめランチは生姜焼き定食ですからそれでいいですか!?」
「構わない。」
私はタブレットで注文をして暫くすると拓人さんの生姜焼き定食が届いた
「美味しい!」
「よかったですね…」
「迫田さんがファミリーレストランに連れて来てくれたおかげで楽しめたよ。ありがとう。」
「こちらこそ付き合ってくれてありがとうございます。えっと…どちら様でしたっけ?」
「北条健です。」
「北条さん。よければ友達になりませんか?」
「ダメだダメだ!!絶対にダメ!!名前も覚えられない人間なんて友人としてやっていけるわけないだろう?玲に友達なんて必要ない!」
「えっと…あまり関わりたくないのでごめんなさい。」
「振られちゃった。」
「玲には俺がいるからいいだろう?」
「拓人さんしかいなくなったらいよいよ終わりな気がする。」
「俺は一生玲の側にいるよ。約束する。」
「北条さん。拓人さんのこのストーカーやめさせたいんですけど…友人として叱ったりしてくれませんか?」
「会えなかった反動で少し精神的におかしくなっているみたいだから…前より幸せそうだしいいんじゃないかな。」
「そうやって甘やかすからつけ上がるんですよ。」
「迫田さんは拓人が嫌い?」
「…嫌いではないですけど、こんな風にプライベートに口出しされてストーカーされるのは気分よくないです。」
「惚れた弱みでさ。許してあげてよ。」
「玲は本当に俺のことが好きだね。」
「そんなんじゃないから!!」
ファミリーレストランであたふたする姿を見たくて連れて来たのに
私があたふたしたし、2人から拓人さんと付き合えと圧をかけられるし散々な目に遭った
人に意地悪しようとしたからバチが当たったのか
悪行は自分に返ってくるものだな




