第33話 撮影地
この現代社会では珍しい素直で純朴な男の人だったな
拓人さんの友人だと言っていたからおそらくどこかの御曹司なのだろう
大人の余裕があってかっこいい人だったなぁ
私のことを全く興味ない感じも好印象だった
最後につついた感じの反応から見ておそらくゲイの人だから望みは全くないんだけど
あの人…名前なんだっけ?
まぁいいや。あの人も婚約者とかいるのかなぁ
決められた婚約者じゃなくてやっぱり好きな人と共に歩みたいとか言って駆け落ちしたりして
それとも男遊びをたくさんしてワンナイトを繰り返しているとか
あぁ〜妄想が捗るなぁ
外に出ると碌なことにならないけれど今日は大当たりだ
小説書きたい
パチンと目の前で手を叩かれる
「迫田先生!何ぼーっとしてるんですか!何度も声を掛けているのに!」
担当の南さんが声を掛けてきた
「南さん。言われた通りに来ましたよ。」
「今日は写真集のロケ地を決める大事な打ち合わせですよ!」
「わかってますよ…」
私は南さんと一緒に打ち合わせ場所のカフェへと入った
「お待ちしておりました!今日はよろしくお願いします!」
写真集の担当の中澤宏輝さんが挨拶をする
「こちらこそよろしくお願い致します。」
私も挨拶を返して席へと座る
先程コーヒーを飲んだところなので、私はメロンソーダを注文した
「ヨーロッパのどこに行きますか?」
「とても迷ったんですけど…フランスにしようかと思います。」
「いいですね!フランス!どうしてフランスにしたのでしょうか?お洒落な街並みやセーヌ川を歩いてみたいとかですか?」
「フランス国立図書館に行ってみたいんです。」
「なるほど!さすがは小説家ですね!フランスに行っても本を読むつもりなんですか?」
「もちろんですよ!ポルトガルにあるジョアニア図書館とかもバロック様式の美しい図書館で、コウモリを飼っている珍しい図書館なんですよ!コウモリは蔵書を狙う虫を食べてくれるらしいです。あと、オーストリア国立図書館も本好きには欠かせない有名な図書館なんです!他にも魅力的な図書館はたくさんあって迷いましたが…フランス国立図書館にしようかなと思います。古くからある図書館ですが、今でも手に取って読むことが出来る本が14万冊もあるみたいで…夢のような場所ですよね。ずっとここで過ごしたい…。」
「ヨーロッパには古くからある図書館がたくさんあるんですね。知らなかったです。フランス国立図書館ですか…撮影許可は難しそうですね。」
「撮影は別の場所でいいですよ。許可が降りやすい場所で。あくまでもプライベートで訪れたい場所ですから。」
「図書館で本を読む迫田先生は絶対に絵になりそうなので…頑張って許可を取りたいです!」
「私も思い出として撮影して頂けたら嬉しいですが…難しいようでしたら無理しなくても大丈夫ですよ。」
「お気遣いありがとうございます。他はどこか撮影したい場所はありますか?」
「いえ。特には。」
「パリは芸術の街ですから!図書館以外にもルーブル美術館や、ノートルダム大聖堂もいいんじゃないでしょうか。創作意欲を掻き立てられるんじゃないでしょうか。」
「美術館は好きですね。私はアナログ人間なので、絵画とか見るのは好きです。この絵を描く時にどういう想いが込められているのか想像するのが好きなんです。」
「いいですね。昔の絵画は昔の芸術家からのメッセージを読み取れてしまうんじゃないですか?」
「いいこと言いますね。とても楽しみです。」
「そういえば…図書館に行きたいと仰っていましたが、その…読めるのですか?」
「はい。フランス語は読めます。色んな世界の本を読みたくて5カ国は頑張って語学を習得しましたから。」
「すごい!そんなにたくさん!!」
「本を読んで勉強することは苦ではなかったので…それに読むことは出来ても喋ることは出来ませんので中途半端に習得しました。」
「それでも凄いですよ!大学は語学を専攻していたんですか?」
「いいえ。大学は哲学を学んでいました。語学は独学です。」
「独学で5カ国も習得したのですか!?本当に凄いですね!!私は日本語しか話せないので…」
「人には得意不得意がありますから。私は本を読むことが得意だっただけですよ。人と関わることは絶望的に不得意です。」
「そんな風には見えませんけどね。」
「2週間旅を一緒にするなら嫌でも実感すると思いますよ。私は地球で生きていくのに向いていないと。」
「火星人になるつもりですか?」
「火星人もお手上げかもしれません。」
「ジョークがうまいですね。」
「一応小説家ですから。ユニークさは失わないようにしています。」
「さすがですね。でも今回は迫田先生の外見の魅力を最大限に引き出す写真集を作りますから!次は衣装について話しましょう!」
「小説書きたい…」
「フランスにはルイ・ヴィトンやシャネル、エルメス等たくさんの有名ブランドがありますがお好みはありますか?迫田先生レベルの美女ならおそらく許可して頂けると思います!」
「ブランドには疎くて…何もわからないです…」
「そうなんですか…こちらでピックアップして交渉を進めても大丈夫でしょうか?」
「なんでも着ますので好きにしてください。」
「フランスの街並みに映える服を必ずご用意しますね!!」
「ありがとうございます。よろしくお願い致します。」
「こんなにも美人なのですから…モデル業もされたらいいのに。新作のコスメのイメージモデルを探しているんですけど、迫田先生如何ですか?やってみませんか?」
「いや…私の私生活なんてコスメ全くやりませんし…イメージモデルにされたら困ります。」
「そんなこと気にしなくていいのに!私生活は使わなくても大丈夫ですから!」
「一応イメージモデルになるんですから興味ない私は適任ではないと思います。もっと若くて可愛くてファッションに興味ある女の子がいいと思いますよ。」
「うーむ。ガードが固い!」
「写真集も今回で絶対に最後にしますから。」
「初めてなのに!?」
「写真集の題名だけは決めてます。lastです。」
「撮影前から哀しくなること言わないでくださいよ!」
「哀愁がある方がいい写真が撮れると思いませんか?最後の写真集だと思って撮ると憂いが出ていいでしょう?」
「初写真集はフレッシュさを売りにしましょうよ!」
「アラサーのフレッシュさなんてどこに需要があるのよ。」
「全国民に需要があります!」
「絶対嘘。一部の変人だけだよ。」
「この曇りなき目を見てください!嘘なんてついていません!」
「あんなに炎上して世間を騒がせたのに?」
「写真集に性格の良し悪しは気にしません!美しくあれば!外見さえ良ければ!それでいいんです!!」
「なんかやだな…」
「第2弾も見据えて撮影しますよぉ!!」
「lastですから!絶対譲りませんよ!」




