第28話 特別な人
「痴漢騒動で炎上しているので、暫くは自宅待機を命じられました。」
「いつも家に引き篭もってるだけだからいつもと変わらないんじゃないの?」
「外に出るなと言われると出たくなりますよね。」
「危険な目に遭ったのに?こわくないの?」
「学生時代の方が危険だらけでしたから。今は大人になったのであの程度でいちいち怯えて生活なんてしませんよ。」
「凄惨な事件を何度も経験したのね。」
「外は敵だらけですよ。」
「どうして被害届を出さないの?」
「関わりたくないんですよ。あんな人種と。」
「そうやっていつも逃げているか一生弱者にされるのよ。玲に触っても犯罪にならないと調子に乗らせるのよ。戦わなければずっと弱者のまま。」
「ネットの正義マンみたいなこと言うんですね。余計なお世話です。一生弱者でも構わないですよ。ミナみたいに私は強くないですから。」
「私だって初めは強くないわよ。弱い立場から戦って強くなれたのよ。」
「耳が痛いこと言いますね。どうせ私は逃げてばかりの弱者ですよ。」
「私は人に舐められるのが我慢ならなかったからね。昔から。」
「かっこいい…。私なんて人に見下されて生きてきましたから。」
「そんな美貌を持って勝ち組カースト確定なのにどうして底辺を彷徨ってるのよ…」
「人と関わることが苦手でしたからね。1人で小説を読んでずっと1人でしたから。世の中1人だけのぼっちには優しくないんですね。ひどいです。」
「もっと上手くやればいいのに。」
「何の為に?私が小説を読むこと以上に必要性があると思えないけど。」
「現実は小説より奇なりというじゃない。人との出会いや会話で物語が浮かぶものじゃないの?」
「うーん…それこそ客観的に観察する方が小説を書くにはよかったですね。」
「そう…」
「ミナだけは特別。ミナと話すのは凄く楽しいの。小説を読むより楽しいなんて初めて。」
「ふーん…じゃあ私が拓人と離婚したら、私と2人で暮らさない?私達は運命の相手だからいいでしょう?」
「え…それは…嬉しいですけど…」
「じゃあ…!!」
「お断りします。」
「な…!!どうして?私が特別だって言ったじゃない!!嘘だったの?」
「嘘じゃないけど…ミナは…誰かの特別になりたくて…1番に大事にされたいんでしょう?」
「そうよ。」
「じゃあ私には出来ない。」
「…。」
「私は小説を書く以上にミナを優先することは出来ない。唯一無二の友人として特別な友情としてなら側にいられるけど…それ以上は与えられない。私が小説を書いている時に、ミナが寂しく泣いていても私は小説を優先する。私は…欠陥人間だから。ミナを求めるものを与えてあげられない。ミナを傷つけることになる。だから…2人で一緒には暮らせないよ。」
「フフッ…。拓人はいつも言ってた。玲の小説が嫌いだって。あんなにたくさん買ってるくせにね。玲にとっては小説が1番大事で拓人のことは二の次にされるから嫌いだって言ってた。今ならわかるよ拓人の気持ちがね。」
「ミナも私の小説嫌いになった?」
「まさか。私は…玲の小説の大ファンだから。嫌いになんてならないよ。」
「ありがとう。ミナは優しいね。」
「…私が1番になることはない?」
「ない。」
「…そう。じゃあ諦める。」
「ごめんね。」
「じゃあやっぱり拓人の愛人になってもらうしか…」
「いやいや!なんで!?離婚して他に好きな人を作りましょうよ!」
「今更私には無理よ。汚れすぎた。誰かの特別になんて私がなれるわけない。」
「なれるよ。」
「何を根拠に?」
「願えば叶う。人は願い続ければ必ず叶うらしいわよ。」
「そんな非現実的な夢物語を信じるほど子供じゃない。」
「何歳になっても夢は持つべきなのよ。それに私達まだまだ若いじゃない。ダメだと思ったらやり直せばいいのよ。1からスタートしたらいいのよ。」
「日々の積み重ねで人生が成り立っているのよ。今更今までの全てをなかったことになんて出来ない。私は遊びすぎた。こんな私を本気で好きになって愛してくれるなんて夢物語あるわけない。」
「絶対いるよ。ミナは人の為に尽くして頑張れる女の子だもん。」
「私は…玲なら純也さんの代わりになってもいいと思ったけど、やっぱり他の人に恋をする未来が予想出来ない。色んな人を見てきたけれど純也さんよりかっこいい人なんていなかった。」
「でも私を選んでくれたじゃない。」
「あんたは特別。恋じゃなくて友情としてだから。友情としても1番にしてくれるならそれでもいいと思ったから。」
「ふーむ…一途すぎるなぁ。重い。」
「そんなことわかっているわよ。わかったなら拓人の愛人になって私を純也さんの理想の娘にしてくれる?」
「ミナが拓人さんの理想の嫁になれば普通に解決すると思いますよ。」
「絶対嫌よ。私は拓人が大嫌いだもん。」
「じゃあ離婚すればいいじゃない。」
「絶対に嫌よ。私は純也さんが好きなの。純也さんの娘になりたくて死ぬほど頑張ったの。」
「歪んでるなぁ…」




