第23話 特別な女の子
「久しぶりだね。美奈子。」
柔らかい物腰で話かけてくれるこの人は
私の永遠の片想い相手
真中純也さんだ
「お久しぶりです。相変わらずお忙しそうですね。純也さん。」
「まぁね。俺はいつ休めるんだろうなぁ。」
「社長の純也さんがI番の働き者ですから士気も上がるんですよ。」
「それは美奈子も同じだろう?」
「私は休日は確実に取りますから。プライベートの時間も必要なので。」
「拓人が迷惑かけたみたいだな。1ヶ月も休暇を取るなんて…世話は大変だっただろう?」
「いいえ。これも私の仕事ですから。今は仕事復帰して元気にしてますし、問題ないですよ。」
「頼りになるよ。いい嫁が嫁いできて本当によかった。」
「いえいえ。1ヶ月休ませるまで追い込んでしまいましたから。私の管理不足です。これからは同じことが起こらないように細心の注意を払います。」
「美奈子さんは悪くないよ。拓人を自分の世話も出来ない甘ったれに育ててしまった俺の責任だ。すまないね。」
「純也さんはお仕事が忙しいですから。プライベートの問題は私達に任せてください。」
「ハハ。俺はプライベートでは何も出来ない無能だからね。」
「そ…そんな意味で言ったわけでは…!!」
「本当のことさ。仕事しか出来ない老害になってしまったよ。今更、プライベートの時間なんてどうすればいいかわからないよ。」
「たまにはお休みされて温泉旅行でも行かれてはどうですか?」
「性格的にゆっくり時間を過ごすことが苦手なんだよ。」
「朝から晩まで働かれてますからね。」
「美奈子さんは俺みたいな仕事人間になってはいけないよ。」
「私は純也さんの言いつけを守って仕事していますから。私の人生は純也さんの望み通りですよ。」
「荷が重いな。」
「ずっと育ててくれたのは純也さんですから。感謝しています。」
「拓人よりも美奈子さんの方が本当の子供のようだよ。拓人は全く懐いてくれなかったからね。」
「私にもあまり懐いてくれなくて苦労してます。仕事人間は嫌いなのかもしれませんね。」
「こんな美人をほっとくなんて酷いやつだ。」
「フフッ。今度会った時に言っておいてください。」
「我儘な愚息で申し訳ないよ。」
「懸命な息子さんですよ。扱いが難しいだけで。」
「そう言ってくれると助かるよ。」
「拓人さんのことは任せてください。仲良くなれるように頑張りますから。」
「嫌ならいつでも離婚してもいいからね。」
「…はい。」
私は純也さんに別れを告げて仕事戻った
久しぶりに出会えた純也さんはいつも通り落ち着いていてかっこよかった
本当の親子のように気にかけて声をかけてくれる
純也さんから優しさをもらえて今日は幸せだ
仕事が終わり、家に帰宅すると
「ミナー♡おかえりー♡」
と玲が出迎えをしてれた
「あら。小説を書き終えた後、死んだように眠って3日も顔を出さなかった玲さんじゃない。私に何か用?」
「冷たい!頑張って出迎えたのに!!」
「約束してから1週間以上も出迎えなかった人間を褒めるわけないでしょう?」
「小説書いてたんですよ!仕方なかったんです!」
「終わってから3日間も引き篭もってたけど?」
「私のような引き篭もりは外界に顔を出すのも勇気がいるんです!!」
「もう私に構わなくてもいいわよ。興味なくなったから。早く拓人の愛人になってくれればそれでいいから。」
「そんな意地悪言わないでくださいよ〜。今日はとっておきのプレゼントを用意したんですよ?」
「何?」
「じゃーーーーん!!」
玲の手には小説があった
「これは…」
「ふふーん!もちろん!ミナの為に書いた小説です!」
「こんな丁寧に製本されて…」
「こだわりましたから〜。南さんにお願いして自費出版させてもらいました!」
「…ありがとう。」
「早く!早く!読んでくださいよぉ!」
「え?今?」
「そんなに長くないので1時間ぐらいで読めますから!」
「そう…じゃあ読ませて貰おうかしら…」
私はそのままリビングのソファで小説を読む
実は私は迫田玲先生のファンであり
小説は全部読んでいる
そんな玲が書いた私の為の小説は
圧巻だった
私の人生を全て覗いたかのような物語だった
全てを見透かされていて
深く深く理解してくれているような
そんな壮大なラブレターのような小説だった
寂しくて
愛されたくて
特別になりたくて
そんな思いを全て見透かされている
そして…この私にそっくりな主人公のモモは
最後にかけがえのない
特別な人を見つける
それは…
「どうですか?面白かったですか?」
読み終わった私に玲はそう尋ねる
モモが最後に見つけた特別な人は
レイ
モモはレイに愛を貰って幸せになる
「なによこれ…」
「面白かったですか?」
狡い
玲は本当に狡い
私にとって1番に愛してもらえるということは
夢のまた夢の叶わないものだったのに
愛の告白のような小説を読まされて
私の弱いところに入り込んで
私の欲しいものを簡単に差し出す
私が1番特別で大好きだと
そう書いている
「…誰かの特別になりたかった。ずっと。」
「私がなりますよ!私にとってミナは特別な女の子です!」
「どうして?」
「大好きだから!理由なんてそれだけで十分!そうでしょう?」
「私は夜遊びで玲を穢れさせてしまおうと企んだ悪人よ?」
「え?別に穢れても問題なくないですか?私はそれでもミナが好きですよ!」
天真爛漫に笑う玲の顔は
私の涙で滲んでよく見えなくなってしまった
優しく撫でる玲の手を私は嬉しく思ってしまっていた
こんなことになってどうしよう
こんなに好きになっちゃってどうしよう
私の1番欲しいものをくれる玲に
引き返せないほど沼にハマってしまっている
「面白かった。ありがとう。迫田玲先生。」
「えへへ!ファンの期待に応えれてホッとしたよ〜!」
玲は絶対本気で好きだなんて言ってないのに
そんなことはわかっているのに
誰もくれなかった愛を
惜しみなく与えてくれる玲に
ガチ恋堕ちしてしまったようだ




