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第19話 酔っ払い

拓人さんが帰ってきて引越しパーティを始めることになった。

「玲。引越しおめでとう〜。」

「ありがとう〜!!」

冷静に考えると何がめでたいのかさっぱりわからないけれど、せっかくのお祝いムードを壊すわけにはいかないのでぐっと言葉を飲み込む。

「玲がこれからは私の帰りのお迎えをしてくれるって!ねー玲!」

「はい!」

「ずるいな。美奈子だけなの?俺にはしてくれないの?」

「え?いらないですよね?」

「いるに決まってるだろう?俺は玲を愛しているのに。それに美奈子にはして俺にはしないなんて不公平じゃないか?」

「でも…。」

「出迎えぐらいならいいだろう?」

「わかりました…。」

「これからは顔を合わせずに生活することは無さそうね!」

「そうですね〜。」

「家政婦の鈴木さんとはいつコンサートに行くの?」

「一カ月後ぐらいですね。」

「なにそれ?家政婦とコンサートに行くの?」

「そうなんですよ!仲良くなって…今度コンサート行くんです!」

「ふーん。私達とは一週間顔合わせなかったくせに家政婦とは仲良くしてコンサートまでいく約束までしちゃったんだ。」

「はい〜!一番仲良くなりました!コンサートめちゃくちゃ楽しみです!」

「むかつく。」

「へ?」

「引き篭もりのニートのくせに出掛ける予定を入れるなんて生意気。」

「一応小説家です…。」

「出掛けるの嫌いじゃなかったの?」

「基本的には嫌いですよ。でも年に一度ぐらいならそんな気分にもなるんです。」

「はぁ?じゃあもうあと半年程は出掛ける気がおきないわけ?」

「気分によりますけど…基本的にはそうだと思います。やっぱり家が好きなので。」

「それで?年一回の貴重なお出かけイベントを出会って一週間しか経ってない家政婦と過ごすの?」

「凄く優しくていい人なんです〜。一緒に過ごしていても自然体でいられるというか息がしやすいんですよね。」

「浮気者。」

「え?」

「私達のことは一週間放置していたくせに…家政婦とは昼間から会って親睦を深めていたんだ?ヘぇ〜?」

「あ…夜はゲームやってたので…」

「なんで夜ゲームしてるのよ!昼にしなさいよ!」

「ニートのルーティンといいますか…」

「自堕落な生活のくせにルーティン決めてんじゃないわよ!それで?私とは出掛けられないの?」

「え?ミナとですか?…あー半年後でいいですか?」

「なんでよ!!友達なんで毎日遊びに行くものでしょう!?」

「陽キャのパリピじゃないんだから…毎日出掛けたらストレスで死にますよ。」

「半年後は酷すぎるわよ!」

「いいじゃないですか〜。こうやって毎日家で会えるんですから!」

「部屋に引き篭もって一週間出てこなかったくせに!」

「これからは心を入れ替えてお出迎えしますから〜。」

「絶対嘘!!三日坊主よ!!」

「あ。やっぱりバレます?」

「ただのハッタリだったのに!出迎える気なかったの!?最低!!」

「あります!ありますよ?でも毎日出迎えなんて自堕落な生活してるやつからすればハードル高すぎるといいますか…」

「出迎えるだけなのに!」

「私の自堕落さを舐めてもらっては困ります。そんな高度なこと出来ません。」

「じゃあ夜の二十一時から二十二時の間はリビングにいるのはどう!?」

「えー…夜は一人でゆっくり過ごしたい派なんですけど…」

「私達友達になったのでしょう!?私と…一緒に過ごしたいって思わないの?」

「え…やだ…ちょっと泣かないでくださいよ!お酒入ると泣き上戸になるんですか?ミナと一番仲良しになりたいに決まってるじゃないですか!ね!」

「嘘つき!私とは出掛けたくなくて!家政婦と出掛けるって言った!!」

「あ〜…じゃあ次のミナお休みにミナの好きな所に行きましょう?ね?」

「…本当?」

「本当ですよ!どこでも連れて行ってください!」

「えへへ!じゃあ特別に許してあげる!」

「わーい!仲直り!」



バンッと拓人さんは机にジャッキを強く置いた

「ど…どうしたんですか?拓人さん?」

「…ずるい。」

「え。」

「ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。」

「あ…あの…。」

「家政婦とミナとは出掛けるのに俺は?俺とは出掛けてくれないの?」

「ちょっと…嫌ですね…」

「なんで!?」

「だって拓人さん既婚者ですし…」

「ミナも既婚者だ!」

「ミナは同性だし、友人じゃないですか…」

「ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。」

「…。」

「昔からそうだ!玲は俺と出掛けてデートをしてもちっとも楽しそうにしてくれなかった!!」

「え。」

「豪華客船に初めて連れて行った時なんて…俺が話しかけているのに無視するんだ!!意味がわからないだろう!?そしたら俺の秘書が…“わぁ!迫田先生って本当にトリップするんですね!迫田先生は日常的に小説の世界にトリップしてしまうから会話するのも難しいって有名な話ですよ?わぁ〜天才型って感じですよね〜”とか言い出して…」

「あ…当時は…話を聞かない癖がありまして…」

「こっちが話しかけてもずっっっっっっっと虚空を見つめてて!無反応で!!無視され続けるデートなんて初めてだったよ!」

「あ…あの…豪華客船なんて初めてだったし…こう…アイデアが溢れてしまってて…」

「俺のことが好きで付き合うって言ったくせに!俺のこと全然眼中にないんだよ!!」

「そんなに酷いデートだったのによく別れなかったね…」

「絶対俺の虜にしてやると思ったんだよ…。二回目のデートはヘリを読んで空から花火を見たの覚えているか?」

「もちろん!覚えてるわよ!」

「ヘリに乗ってから玲一言も喋らなかったよな?綺麗だねって話しかけても無視しただろう!?」

「わ…私高所恐怖症だから…怖かったんですよ!それどころじゃなかったんです!!」

「返事ぐらいできるだろう!?」

「たぶん怖すぎて現実逃避のトリップしてたんだと思います…意識を現実外に持っていくのは得意でしたから…」

「デート中は俺のこと考えろよ!」

「拓人さんが初めての彼氏だったし…デートとか慣れてなかったし…」

「三回目のデートも覚えているか!?」

「まだあるんですか…」

「あるよ!俺が指輪をプレゼントしたら玲なんて言ったか覚えているか!?」

「え…ありがとうございますですか?」

「違う!!!指輪は邪魔になるのでいらないですって言ったんだよ!!」

「…そんな最低な女とよく付き合えましたね…」

「付き合ってるはずなのに振られた気分になって…全然好かれてる気がしなくて…こっちも意地になってどうにか玲の気を引こうと必死だったんだよ。」

「服とかたくさん買って貰ってたし…気が引けたんじゃないですかね?あまり覚えてないですけど…」

「四回目のデートはプライベートビーチだった。」

「はい。静かでのどかにすごせましたよ。いい思い出です。」

「そう…話しかけても虚空を見つめて無視されるのは相変わらずだったけどね。」

「一人の時間に入り込みやすいんですよ…」

「それで…その日は一ヶ月ぶりぐらいに玲を抱いたんだ。」

「あの…嫁の目の前でそんな話するのやめましょうよ。デリカシーなさすぎますよ。」


「私のことは気にしないで。愉快な話を聞けて楽しんでるんだから。」

とミナが言う


「玲が…やっと俺を見てくれたんだ。俺のことを好きで仕方なくて恋する瞳で俺を見つめてくれたんだ。抱いている時だけは小説のことも全て忘れて俺だけを見てくれた。もう…俺は…嬉しくなって…こんな気持ち初めてで…初恋だった。玲の虜になった。」

「昔話ですよ…。」

「俺だって玲とデートしたいよ!でも!!俺と出掛けても玲はちっとも楽しそうにしないし!!無視するし!!でも家政婦とミナとは出掛けるくせに俺だけ行かないなんて絶対いやだ!!ずるい!!」

「今と昔とは状況が違いますから…」

「家政婦も!ミナも!玲に無視されて傷つけばいいんだ!!」

「今は普通に話せますよ…」

「俺は死ぬほど辛い思いをしたのに!!家政婦とミナは楽しくお出かけするつもりか!?ひどいよ!!」

「そんな最低な女なんて忘れてしまいましょうよ。ね?」

「嫌だ!!大好きなんだ!!愛してるんだ!!俺を一番に愛して欲しいんだあああああああああああああ!!!」


うわああああああああああんと大声で拓人さんは泣き出してしまった


「キャハハハハハ!!いい気味!!負け犬!!ざまぁみろ!!セックスの時しか相手にされてないの?ダッサー!!それで毎日毎日抱いて自己満足してたの?気持ち悪ぅ!拓人の話がつまらないから玲が話を聞けなかったのよ!!ありきたりな口説き文句しか言えない雑魚に玲は興味ないわよ!!天才小説家相手につまらない話をするから無視されるのよ!!アハハハハハハハ!!」

「ちょっとミナ…あんまり刺激を与えるようなこと言わないで…」

「セックスしか出来ないつまらない男!!キャハハハハハハハ!!」

「うわああああああああああああああああん!!」

「ちょっと…二人とも酔いすぎだから…」

「玲が酔わなさすぎなのよ!もっと飲みなさい!!」

「私はザルなんですよ…」

「へぇ〜。お酒飲んでも気分良くなれないなんて可哀想ね。」

「二人の介護をしないといけなくなりますからね。酔えない人間は損な役回りですよ。」

「酒に溺れてワンナイトとかも楽しいわよ?」

「本当ですか?」

「おい!!ミナ!!玲に変なことを吹き込むな!!穢れる!!」

「一回試してみる?」

「うーん…今はいいや。アイデアに詰まってないし。行き詰まった時にやってみようかな。」

「やめろ!!絶対ダメだ!!玲!!そんな悪い女を信用するな!!」

「気が向いたらいつでも言ってよ。いい男紹介するわよ?」

「本当ですか?よろしくお願いします!」

「おい!ふざけるな!俺以外のやつとセックスするなんて絶対ダメだ!!そいつを殺すからな!!俺は本気だ!!」

「こわ…犯罪予備軍…」

「拓人さん殺害予告はさすがにアウトですよ…」

「俺を犯罪者にするな!絶対ダメだからな!!」

私達はわいわいと騒ぎながら夜中まで引越しパーティをした

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