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第15話 一年契約

拓人に呼び出されたホテルの一室にに十九時丁度に到着する。拓人はもう着いており、待っていたみたい。

 「どうしたの?急に話がしたいだなんて。」

 「お前何を企んでいる?」

 「私の提案は全員が平和に解決する方法のはずよ。私は拓人と玲が愛人関係になれば貴方達は愛し合って過ごせるし、私も安定した結婚生活が出来るもの。」

 「それは玲が望んでいない。玲は離婚しないと一緒になってくれないんだ。」

 「でも拓人は私の案に賛成なのでしょう?拓人が玲を説得すれば私達は皆で仲良く暮らせるのよ。」

 「…俺は四年前どっちも手に入れようとして玲に捨てられたんだ。もう二度と同じ過ちは出来ない。そっちこそどうしてこの結婚にこだわる?俺たちが離婚してもあまり変わらないだろう?」

 「変わるわよ。社会は信用勝負なのよ。離婚したなんてレッテル貼られてプライベートは嫌な女という印象を残したくないだけよ。」

 「それだけの為に?」

 「このままオシドリ夫婦でいる方がメリットがデカいのよ。貴方もそうでしょう?」

 「………。」

 「これが一番いいのよ。玲は流されやすいから周りから固めればいつかそのまま流されてくれそうだし。」

 「お前は玲のことを何も分かってない。確かに流されやすい所はあるけど、頑固な所もある。自分で決めた生きた方やプライドを持って生きてるんだ。特に小説のことは絶対に譲ってくれない。玲は絶対に小説を手放すことはしないよ。」

 「ふーん。流石は迫田先生ってことね。確かにプライドがどうのこうのしつこかったわね。」

 「絶対に離婚しないと俺と一緒になってくれないよ。」

 「そこは言葉巧みに誘導して三人一緒に住めばチャンスがあるわよ。」

 「勝手に玲の引越しなんてして…。玲が困るだろうが。」

 「困んないわよ。殆ど家で引き篭ってる人間よ?どこで過ごしても変わりないわよ。」

 「そういう問題じゃないだろう…。」

 「拓人にとっても好都合でしょう?愛する人と一緒に住めて」

 「玲の気持ちを無視するなよ!」

 「大丈夫よ。私も拓人も好かれてるし。玲ってお人好しだから怒ってもごめんねって言ったら許してくれるわよ。」

 「お前は本当に恐ろしい女だ…。」

 「褒め言葉として受け取っておくわ。」

 「とにかく離婚なんてしないから。私の小説を書いてる間にもっと親密になって、私の味方につければ愛人やってくれる可能性はあるわ。」

 「そんな上手くいくか?玲は俺と美奈子このまま結婚生活を続けて欲しいみたいだけど。」

 「このまま結婚生活続けるじゃない。ただ愛人が追加されるだけで。みんなハッピーエンドよ。」

 「俺はそんな策には乗らないからな。確実に離婚に進めてやるから。」

 「どうやって?」

 「親に報告する。俺は玲が好きだから離婚すると」

 「バカみたいそんな私情で離婚を納得されるわけないじゃない。私の親にもそう言うの?私の親がどんな奴らか知ってるでしょう?またあの家に帰って虐待されろっていうの?」

 「美奈子は家に帰らなくてももう一人で自立して暮らせるだろう?お前の家には慰謝料として相場より高い値段を支払えば喜んで離婚を承諾するよ。」

 「拓人、今最低なこと言ってるの分かってる?」

 「そうだろう?お前は家族に愛されてないし、金の道具だと思われてるんだから。」

 「本人を前にしてデリカシーないこと言わないでよね。」

 「なに?傷ついたのか?お前が?」

 「……あんな親こっちからとっくに捨ててるからいいのよ。」

 「そうだろう?問題は俺の親だけど、美奈子のことを随分気に入ってるからな…。反対はされるだろうが説得すれば納得してくれるはずだ。」

 「嫌よ。勝手にそんな話しないでよ。」

 「何故だ?俺達はもう離婚した方が…」

 「こっちがどれだけこの四年間耐えてきたと思ってるの?私達の間に愛はなくてもパートナーとしては一緒に寄り添うことは出来ると思って結婚したのに!他の女の写真ずっと眺めてさ。ずっと泣いてるやつをどうしたら良かったのよ!一緒に住んでいるのも凄く嫌だった。家の中で拓人に会いたくなくて出来るだけ会わないように逃げるように避けて生活してた。あの家が大嫌い。帰りたくないから夜遊びを沢山した。こんな私を惨めにしといて離婚しろ?ふざけんなよ。何の為に私はこの四年間耐えたと思ってんの?冗談言うんじゃないわよ!」

 「この結婚が辛いなら尚更離婚した方がいいだろうが!慰謝料なら支払うから!」

 「離婚はしない!離婚の話も親に言うんじゃないわよ。」

 「こんな夫婦関係お前だってもう嫌なんだろう?そこまで結婚生活に拘る必要なんてないはずだ!」

 「あるのよ!あの家は嫌いだったけど…玲が居てくれるなら私も好きになるかもしれないし…。」

 「お前の夢物語に俺と玲を巻き込むな!」

 「なによ!四年間何もしなかったくせに!急に玲が目の前に現れたからって騎士気取り?ダサすぎんのよ!私が呼ばなかったら今頃家で首吊って死んでたくせに!」

 「………。」

 「私のおかげで玲に会えたのよ?私に協力するべきよね?」

 「一年だ。」

 「?」

 「一年だけ協力してやる。親にも話さない。一年経っても玲が俺の愛人にならなかったその時は離婚してくれ。」

 「本当は四年と言いたいところだけどいいわよ。一年あれば何とかしてみせるわ。」

 「交渉成立だな。」

 「一年間頑張りましょうね。拓人。」


拓人は先にホテルから出て行き、私は一人残った

「はぁ…バカ二人相手にするの疲れるわ。」

両思いのくせに拗らせまくっててバカみたい

「一番の大馬鹿者は私だけどね…」

真中純也さん

私の想い人

拓人のお父様で

私の義父様

幼少期に誰も味方がいない苦しい時に助けてもらったというだけで

二十年初恋を拗らせている大馬鹿者だ

実家が死ぬほど大嫌いだった私にとって

“俺の家の子になりなよ”と言う言葉が

地獄から救ってくれた神様のようだった

必死だった

誰に認めて貰えなくても

純也さんだけには認めて貰えるように

どんな女にも負けない

完璧な女になるように

容姿も会社の業績も全て全て全て

純也さんの娘になる為に

大人になっても私が一番いい娘になると言って貰えるように

家族からの罵倒も気にならなくなった

そんなことはどうでもよかった

だって私はいつかはこの家を出て行って

絶対に真中家の嫁になるんだって思ってたから

それだけを生きる盾にしていた

拓人は女遊びが酷く、付き合っては別れを繰り返していた

“だって将来はどうせ美奈子と結婚することに決まっているだろう?本命を作るなんて馬鹿なことしないよ。”

の拓人は言っていた

拓人にとって恋愛は遊びであり、結婚は家同士でするものという価値観があったようだ

本命が出来てその女と結婚したいとか言い出したら最悪な事態になるから

拓人の女遊びは私にとっては好都合だった

そしてついに私は純也さんに認められて結婚することになったとき

“浮気を容認して欲しい”

と拓人が言ってきた

女遊びが激しい拓人からのこの提案は予想の範囲内だった

拓人が他で誰と愛し合おうと私は全く問題なかったので、私はこの提案を了承した

そして

“離婚しないこと”

“子供を作ること”

この二つを条件に上げた

私は純也さんのいい娘でありたかった

嫁いで、会社の業績も上げて

跡継ぎを産む

純也さんが望む理想の嫁になればそれでよかった

そうすれば永遠に私は純也さんに優しくして貰える

真中家の自慢の嫁として

純也さんが妻と不仲なことは知っている

きっと私だって妻という立場ならこんなに優しくして貰えない

娘だから

大事に優しくしてくれる

真中家の嫁として愛してくれる

私はその立場がどうしても欲しかった

全ては上手くいくはずだった

計画通りに

拓人が壊れていかなければ

まさか結婚直前に本命が出来て

日に日に病んでいくなんて思いもしなかった

結婚式の拓人は体裁を守り笑顔を振る舞っていたけど

式が終わり、初夜を迎える為に部屋に入ったときに

拓人はベッドで泣き崩れて大声で泣き喚いていた

朝まで

そこからの四年間は地獄だった

会話もなく

ただ仕事をする毎日

この地獄を紛らわす為に

夜遊びを何度もした

仕事で時々会う純也さんが私を気にかけてくれるたびに

私は舞い上がってしまい

この地獄をやめることはできなかった

このチャンスを逃すわけにはいかない

私はどうしても純也さんの娘でありたい

「絶対に愛人になってもらうからね。玲。」



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