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第2話:K

―――深く、深い。深海へと落ちていく。


とても穏やかな気持ちだ。これが死なのか。

もっと苦しんで死ぬもんだと思っていたが…。


俺の人生と同じ。

特に波立つこともなく、静かに、終わっていくんだな。


―――。


…いや、ちょっと息苦しい…か?


―――。


気の所為…か。


と言うか…、俺の意識はいつまであるんだ?

死んだあとって、輪廻転生とかして生まれ変わるもんじゃ無いのか…?


―――。


それとも、

俺、生前になんか悪いことして、成仏できない的なやつなんかなぁ。。


…なんか、したんかなぁ。

むしろしてこなかった実感しか無いんだが…。


―――ック?!


そして、や、やっぱり気の所為じゃな…い!

息が、、苦しい…!おぼ、溺れるのか俺は!?

し、死ぬ…!!もう死んでるのに!?

死んだあとの方が苦しいって…!どういうことだよ…!!


ヤ…バイ、、我慢、できない…っ!



―――

――



「……はっあっ!!……お、おぼれ……るっっ!」


喉の奥で呻いたその瞬間、

視界いっぱいに "ふわふわした何か" が押し寄せた。

俺の顔の上になにかが乗っかっている。


俺は身体を勢いよく起き上がらせ、顔面のソレを強引にどかした。


「…はぁ! はぁ! はぁっ…、はぁっ。」


俺は息を引きつらせながら、

顔面から退いてふてぶてしい態度をしているソレに視界を合わせた。


「―――なーん。ゴロゴロ」


 「はぁ、はぁ、、猫…っ?」


そいつは悪びれもせずにあくびをひとつ。しれっと毛づくろいを始める始末。


「一体どっからはいっ……」


そう思いながら、俺は俯いた。

とりあえず助かった。


ただ、ほどなくして思考が止まった。

俺は俯きながらさっき見た猫を思いだす。


真っ黒な毛並み、そして尻尾の先──、くいっと曲がった特徴的な形。そのフォルムに俺はとても見覚えがあった。


俺は顔を上げてもう一度その猫に視線を移した。


生前、唯一、俺と一緒に居てくれた愛猫。

ヨルにソックリだった。


「ソックリと言うか…、生き写しだな…。」


アイツ、子供産んでたのか…。

飼い主の俺なんて付き合ったことすらなかったのに…。

でも、嬉しい。


「…しかし、、本当にソックリだな。」


俺は壁に飾ってある自作のヨルの肖像画を見ながら、

しばらく、ヨルの子供を眺めていた。


呼吸もいつの間にか落ち着いている。

目を閉じれば、外からは活気のある人々の行き交いが聴こえる。


―――

――


――

―――?



「…アレ。俺生き返ってね…?」



第3話につづく。

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