第1話:Ever lasting lie.
―――その日、とある街外れの小さな家で、煤けた天井を見つめながら、老いた男が一人、静かに眠りについた。
男には名前を呼んでくれる人も、看取ってくれる人もいなかった。
男の最期の朝は、ひどく静かなものだった。
時計の音も、風の音も、何も聞こえない。
男は何十年も使い続けた古いベッドに横たわっていた。
皮膚は乾き、身体は痩せ細り、息は浅く、視界はまるで水の中のように虚ろで揺らいでいた。
…後悔はあったと思う。
ワタシは生前、死後に残るようなことを成してこなかった。
だから、このまま、誰にも気づかれずに、この古びた寝床とともに朽ちていくのだろうと、覚悟はしていた。
それでも、心の奥に一つだけ、やけに色濃く残っているものがあった。
誰とした約束だったか。どんな約束だったか。今ではもう思い出せないが、大切な約束だった気がする。
なんで、約束守らなかったんだっけ…?
もし、その約束を守ってたら、俺の人生も、何か…
残すこと、が、出来たのか…な…、
―――。
意識が沈んでいく。
落ちているのか、浮いているのか。
視界の端で、光がにじみ、輪郭が失われ、世界が黒に染まっていく。
―――そして俺は、1日目の朝を迎える。