ユウキとの邂逅
ジリジリと照りつける太陽が身を焦がす夏の日。
橘勇気は異世界への扉を開いた。
「やった…!噂は本当だったんだ…!」
澄み渡る青空と薫る風に心臓のあたりがぞわぞわする。
「おいガキ!どけっ!」
「えっ?」
ドン!と重い衝撃が身体を襲う。
「ぐあっ!?」
僕は吹っ飛び、ゴロゴロと転がる。
「チッ、どンくせぇガキだ…ほら、大丈夫か?」
そういって手を差し出したのは真っ白なお姉さんだった。
「あ、ありがとう…」
「ンだよ人の事ジロジロ見やがって」
「ご、ごめんなさい…」
お姉さんは僕の事をずっと見てくる。
(そっちだってジロジロみてくるじゃないか…)
「ふぅン…?おいガキ、ちょっと身体貸せ。」
「えっ?」
そう言ってお姉さんは僕の手を握った。
「いいね、変身!」
お姉さんは眩い光を放つと、小さな砲台の様な姿に変化した。
「おぉっ!?すごい、流石異世界!」
「は?異世界?何言ってンだお前、取り合えず構えろ!来るぞ!」
「えっ!?何が!?」
瞬間、突風が襲ってきた。
「見つけたぞ、脱走犯!」
「だ、脱走犯!?」
「とぼけても無駄だ!姿を変えようと魔力で判っている!」
警官のような格好をした男は剣先を僕に向けた。
「ちょちょ!待って!」
「問答無用!」
「わっ!?」
銃が急に重くなり、僕は躓いたように身体を屈ませた。
「チッ!外したか…!」
「ちょっ、ちょっとお姉さん!これどういう事!?」
「まぁまぁ、いいじゃねぇか!とりあえず銃身のレバーあンだろ?それ引っ張れ!」
「えぇ…」
僕は仕方なくレバーを探す。
「えっ…とこれか!」
それらしき物を引っ張る。
「んんっ…///」
「あっ、あれ…?」
「ばっかやろう!ドコ引っ張ってンだ!」
「ちっ、ちがっ…」
「後ろのほうにあるだろ!?」
「あっ、これか…!…」
銃身の後ろの突起を引っ張る。
ガッコン!
銃身は震えて熱を帯び始める。
「くっ!?なんて魔力だ!だがそうはさせん!」
男は何やらぶつぶつと呟き、手をかざした。
瞬間、足元が光りチェーンが飛び出し僕にグルグルと巻き付いた。
「拘束の魔法、これでお前は魔力を練れん!」
「なっ、なんだって!?」
(魔法まであるなんて!!)
「覚悟しろ!脱走犯!」
「くっ…!」
男は剣を構え、襲いかかってくる。
「こらバカガキ!敵をちゃんと見て狙え!」
ドン!とまた大きな衝撃が身体を襲う、が拘束されていたせいか吹き飛ばされる事はなかった。
放たれた衝撃はビリビリと音を立てて走っていく。
「なっ!?」
「魔砲、スタンビーム…!1日動けなくなってもらうぜ。」
見事男に命中、男はうつ伏せで倒れている。
そして銃は再び光を放つと、元のお姉さんの姿に戻った。
「よっ…と!ふぃ~あの姿、疲れンだよなぁ…」
お姉さんは首を回してゴキゴキと音をならす。
「あ、あの~…」
「おぉ、そうだったそうだった。」
そういってお姉さんは鎖を引きちぎった。
「えぇ…」
「ははっ、やるじゃねぇかガキ!」
お姉さんは大笑いしながら、僕の背中をバンバン叩く。
「ちょっ…い、痛い…」
「おぉ、悪い悪い。」
「なんなんですか一体…銃に変身したり脱走犯とか…」
「まぁここじゃなンだ、街のほうにいくぞ。」
「街…!」
(異世界の文化!)
「俺の名前はブレイブ!気軽にブレイって呼ンでくれ!」
「僕は勇気…。」
「ユウキ…か、じゃあユウだな!」
そういうとブレイは僕を脇に抱えた。
「ん…?」
「ブッ飛ばして行くからよ!ちゃんと捕まってろよ!」
ブレイは光り始めた。
「ま、まさか…」
「よっしゃあああっっ!!!」
瞬間、とてつもない速度でブレイは走り始めた。
「うぇぇ~…」
「おいおい…しっかりしてくれよ、ユウ」
「こ、これも魔法…?」
「まぁな、戦闘じゃ使えねぇけど!」
ブレイは大笑いしながら速度を上げた。
街に着いたのは、30分程経った頃だった。