観察と分析
エメリウスは試験官の前で静かに息を整え、目の前の金属片に集中した。手のひらに載せると、ひんやりとした冷たさが伝わってくる。
(まず、色……銀に近いが、わずかに青みがかっている。重さは見た目よりも軽い。この質感……鉄ではない。銅とも違う。となると……)
彼は慎重に指先で触れながら、過去に読んだ書物の記述を思い出す。村の教会で錬金術について学んだ時、様々な金属についての知識を学んだことが役に立つはずだった。
(これは……ミスリルの可能性がある。でも純粋なものじゃない。何かが混ざっている……)
「わかりました。」エメリウスは顔を上げた。
試験官は冷静な表情で彼を見つめ、「説明してみなさい」と促す。
「この金属片は、ミスリルが主成分ですが、純度は低く、何か他の金属が混合されています。軽さと耐久性から察するに、アダマンタイトとの合金の可能性が高いです。」
試験官は微かに頷き、次の質問を投げかけた。
「なぜそう思う?」
「ミスリルは魔力を帯びやすく、その特徴が外見に表れます。しかし、この金属片には魔力の反応がほとんどありません。それに加え、アダマンタイト特有の滑らかさを感じます。」
エメリウスの答えを聞いた試験官はしばらく沈黙した後、「なるほど」と小さく呟いた。
「次はこの液体を見て、同じように観察しなさい。」
試験官は透明な瓶を指し示した。エメリウスは瓶を慎重に手に取り、光にかざしてみる。液体はわずかに粘度があり、光を反射して虹色に輝いていた。
(この光の反射……精製されたエーテル溶液か? いや、匂いを確かめなければ……)
彼は慎重に瓶の蓋を開け、鼻を近づけると微かに甘い香りがした。
(やはりエーテル系だけど、純度が低い……薬品としての用途よりも、工業用途に近いのかもしれない。)
「これはエーテル溶液ですが、魔力の安定性が低いため、長期保存には向きません。」
試験官は微笑を浮かべ、静かに記録を取る。
「よろしい、次の課題へ進むが、君の観察力はなかなかのものだ。」
エメリウスは少しだけ自信を持ち、次の課題に向かう準備を整えた。