試験の手応え
筆記試験を終えたエメリウスは、緊張から解放されたように大きく息を吐いた。試験会場を出ると、すでに試験を終えた受験者たちが広場に集まり、互いに感想を交わしている。
「はぁ……なんとか終わったな。」
隣でカインが肩をすくめながら呟いた。
「どうだった?」エメリウスは控えめに尋ねた。
「まあまあってとこだな。触媒の種類の問題、ちょっと悩んじまったけど、なんとか書けたよ。」
エメリウスは心の中で安堵しつつも、同じ問題で自分の答えが合っていたかどうか、不安がよぎる。
「エメリウスは?」
「……自信はないけど、できる限りのことは書いたつもりだよ。」
カインは頷き、「そりゃそうだ、試験なんてそんなもんだよ」と笑った。
試験官の指示で広場に集まった受験者たちは、次の試験についての説明を待っていた。すると、壇上に再び先ほどの試験官が姿を現し、厳かに告げる。
「これより、適性試験を開始する。受験者は名前を呼ばれたら、順に指定された部屋へ向かうこと。」
適性試験――それは錬金術師としての基礎的な資質を測るためのものだと、事前に聞いていた。主に観察力や思考力、集中力が問われるとされており、実際に錬金術を行うわけではない。
エメリウスは少し安堵した。とはいえ、錬金術に必要な素養がどのように試されるのか、不安も拭いきれない。
「エメリウス・フェルド!」
名前が呼ばれ、エメリウスは緊張した面持ちで試験室へと足を踏み入れた。そこには、一人の年配の試験官と、いくつかの道具が並べられていた。
「座りたまえ。」
促されるままに席につくと、試験官は目を細めてエメリウスを見つめた。
「君が観察すべきものはこれだ。」
試験官はテーブルの上に、小さな金属片と透明な液体の入った瓶を置いた。
「この金属片が何であるか、君の観察力と分析力を示してもらおう。」
エメリウスは慎重に金属片を手に取り、じっくりと眺める。色合い、重さ、質感――村で学んだ知識を総動員しながら、彼はその正体を探ろうとしていた。