入学試験の始まり
翌朝、エメリウスは青空亭の窓から差し込む朝日で目を覚ました。昨夜の緊張はまだ胸の奥に残っていたが、今日という日は待ちに待った錬金術アカデミーへの第一歩となる。顔を洗い、支度を整えると、宿の食堂へと向かった。
「おはよう、エメリウス!」
食堂では、昨日知り合ったカインが手を振っていた。彼の前にはパンとスープが並び、すでに朝食を始めている。
「おはようございます。緊張して、あまり眠れませんでした……。」
「はは、誰だって最初はそんなもんさ。でも、しっかり食べておかないと、試験中に倒れるぞ。」
カインの言葉にうなずきながら、エメリウスは簡単な朝食を取った。食堂には他の受験生らしき若者たちの姿もあり、皆が同じような緊張感を漂わせていた。
食事を終え、カインと共にアカデミーへ向かう。王都の石畳の道を歩きながら、エメリウスの心は期待と不安でいっぱいだった。
アカデミーの門は、王都の喧騒とは対照的に荘厳な雰囲気を漂わせていた。巨大な石造りの門をくぐると、広大な庭園が広がり、その先には塔のような建物がそびえている。エメリウスは息を呑んだ。
「すごい……。」
「驚くのはまだ早いぞ。」カインが肩を叩きながら笑う。「試験はここからだ。」
広場にはすでに大勢の受験者が集まっていた。彼らは皆、錬金術の知識と技術を証明するために、ここに来ているのだ。エメリウスは身の引き締まる思いだった。
試験官らしき人物が壇上に立ち、静かに口を開いた。
「これより、王立錬金術アカデミー入学試験を開始する。」
その言葉とともに、受験者たちの間に緊張が走る。試験内容は、大きく二つに分かれていた。筆記試験と、基本的な錬金術の実技試験だ。
筆記試験は、錬金術の基礎知識や理論を問うものだった。エメリウスは机に向かい、震える手でペンを握った。彼は村で独学した知識を総動員し、問題に向き合った。
「落ち着け……俺はやれる……!」
自分にそう言い聞かせながら、エメリウスは一つ一つの問題を解いていった。