王都への道
エメリウスは村を出て三日目の朝を迎えていた。道中、行商人の馬車に乗せてもらったり、旅人と語らったりしながら、着実に王都へと歩を進めていた。
王都への道は賑やかで、様々な人々が行き交う。農民、商人、兵士、そして時折、煌びやかな装いの貴族の姿も見かけた。彼らの一歩一歩が、この広い世界の一部であることをエメリウスに感じさせた。
「王都ってのはすごいところだぞ。」
途中で知り合った旅の商人が、笑いながら言った。
「アカデミーも有名だが、腕のいい錬金術師になるのは簡単じゃない。何より金がかかるんだ。」
エメリウスは不安を感じながらも、覚悟を新たにした。アカデミーの費用については、村を出る前に貯めたわずかな資金しかない。だが、それでも諦めるわけにはいかない。彼を救ってくれたあの人のように、錬金術の道を歩むと決めたのだから。
王都の門が見えてきたのは、夕暮れ時だった。壮大な石造りの門がそびえ立ち、周囲には数えきれないほどの人々が行列をなしている。その光景に圧倒されながらも、エメリウスは門の前に立った。
「旅の者か?」
門番が鋭い目つきで彼を見据える。
「はい、私は錬金術アカデミーを志望しています。」
エメリウスは胸を張って答えた。門番は一瞬目を見開いたが、やがて微笑み、通行のための手続きを始めた。
「アカデミー志望か。なら、まず宿を探すといい。新入生の多くは『青空亭』に泊まるからな。」
親切な言葉に礼を述べ、エメリウスは王都の門をくぐる。
街はこれまで見たことのないほど活気に満ちていた。広場では大道芸人が踊り、店先には異国の品々が並ぶ。活気ある商人の声、食べ物の香ばしい匂い――それら全てが彼の胸を高鳴らせた。
「これが王都……すごい。」
興奮と緊張が入り混じる中、彼はまず「青空亭」へと向かうことにした。これから始まる錬金術師への道、その第一歩を踏み出すために。