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普通を失った俺が、世に希望を与えるまで。  作者: 速府左 めろ
<第二章>地を踏む一歩が、希望な意図となる。〜日本列島出張編〜
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似た者同士

この度は閲覧頂きましてありがとうございます!

─ユークパークでダブルデートを終え、俺達は煌星家の自宅に来ていた。

─どっさりと食材を買い込み、四人で調理に取り掛かった。

─煌星家─つまり舞姫と愛さんの実家はとても広く、キッチンも広いわけだが、大人四人が入ると狭く感じる─でも、それが心地良かった。


「お姉ちゃん、今日お父さん帰ってくるんだっけ?」

「えぇ。最近お父さんお疲れ様だし、私達がご飯作って労いましょう」

「お父さん…生活が荒れつつあるし、多忙でご飯食べれてないからね…」


─俺達が買ったのは、鰻や赤身の肉など、疲労回復に効果がある食材だった。

─愛さんが器用に包丁裁きをし、雷磨が切られた食材に下味を付ける─。その二人の左の薬指に光る指輪が、彼らの愛を輝かせていた。


「えぇ…赤身のお肉にレバー…これで精を付けて欲しいものね…あとケーキ」

「院長って…普段何食べてるんですか?」

「お父さんね……三食甘いものなの…ホールケーキとか食べてるし、飲み物はいちごオレとかよ?それでお腹以外太らないのよ」

「……福吉さんよりマシかもしれないですね…それ」

「いやいや福吉さんの一日に煙草五箱と院長の三食ホールケーキは同じぐらいヤバいだろ…」

「…僕もいずれあんな風になるのかな…」


─食材をパックから出しながら、雷磨が愛さんに院長の普段の食生活について語るが、絶句した。

─そりゃあ、院長は三食をホールケーキで済ませ、更に飲み物は一リットルのいちごオレなのだから。


「大丈夫よ。私がご飯作って、雷磨さんの健康守るわ」

「愛さん……嬉しいです」

「よし、お姉ちゃん、この赤身肉はどうするの?」

「そうね…赤身肉でガーリックステーキライスにして、鰻で蒲焼きにしようと思ってるの。あとお父さん皺が増えてる気もするから、嫌でもミネストローネ作って食べさせるわよ」

「もう…お父さん、四十七歳かぁ…あれ、四十八歳になるんだっけ?」


─喋りながら調理は進み、盛り付けをしようとしたタイミングで院長が帰宅した。


「帰ったぞ……何だ皆して」

「お帰り。お父さん今日早帰りだから、皆でご飯作って労おうとしてるの」

「ほう…っ!何とありがたいんだ…飯は出来てるのか?」

「はい。疲労回復に効果のある食材を使ってご飯作りました。院長、座って座って」


─クタクタで、白衣やスーツが着崩れていて、目の下にクマがあった。

─院長は着替えて、席に着いたことで、俺達は食卓を彩り、食事は始まった。


「院長、ビール飲みますか?」

「ありがとう。にしても、娘二人がもうすぐ結婚とはな……これ以上幸せなことはないだろう」

「気が早いよ…会場は決めたけど、プランはまだ決まってないんだから」

「実はな…最近仕事で手が空く度に、お前達の結婚式のスピーチの構文考えてるんだ…それとご祝儀に十万は包みたい」

「嬉しいけど、無理し過ぎよ…お父さん、来年で四十八歳なんだから」


─こうして楽しく食事会は盛り上がった。

─結婚式の話や将来の家庭の話にもなり、少し歯がゆかった。

─それでも、舞姫が傍にいるから自信が持てた。


「ケーキ。雷磨さんはモンブラン、舞姫がチョコレートケーキ、希望君はチーズケーキ、お父さんはショートケーキ…私がフルーツタルトね……舞姫、コーヒー淹れましょう」

「うん!希望君、お父さんも先にケーキ食べちゃダメだからね!」

「わかってるよ」


─飯を食べ終わり、舞姫と愛さんが食後のコーヒーを淹れに台所に行く。

─その間に、俺と雷磨、院長の男三人になる。

─何と話したらいいのか俺も雷磨も分からなったものの、院長が察して話してくれた。


「雷磨君…希望君。ありがとう…そして、これからも娘をよろしく頼む」

「院長…こちらこそ、よろしくお願いします。その…お義父さん」

「俺も…よろしくお願いします。お義父さん」

「はっはっは…まさか、二人に"お義父さん"と呼ばれる日が来るとは……しかし、愛達とは血が繋がってないにも関わらず、本当の親子みたいだな」

「それは……愛さんが、"血縁なんて関係ない…家族は心で繋がってる"って言ってくれたからでしょう」

「そうだな……娘達に嫌われる覚悟で…ぐすっ!話したことだからな……二十年間二人を育てた…やっと肩の荷がおりたみたいだ…」


─今の院長は、"医師"としてではなく、"父"として話をしていた。彼には幼い頃から世話になっているが、こうして見ると目付きも違う。

─でも、誰よりも愛さんや舞姫─そして如月や俺に、家族の愛を与え続けている。

─俺達は、手を交わし合い、誓った。

─必ず────二人を幸せにすると─。


「もう…お父さん泣き過ぎよ……何か歳取って涙脆くなったわね…」

「これじゃあ…私達に子どもが出来たら、孫に甘々なお爺ちゃんになるね」

「ぐすっ…!愛…舞姫…し、幸せ、に…なぁっ!」

「ふふっ」


─この日はケーキとコーヒーを囲み、未来や子どもの話をして更に盛り上がった。


「すう……すう……」

「ぐう……すう…」

「すう…すう……」

「希望君、希望君…」


─その夜、俺達は煌星家に泊まり、客用布団で寝ていた時、俺を雷磨が起こしてきた。


「ん…何だよ……ふわぁ」

「…ちょっと二人で…話しません?」


─眠い目を擦りながら、俺達はリビングのソファに座り、暖かい飲み物を淹れた。

─俺は紅茶ラテ、雷磨はカフェインレスのカフェオレだった。


「らしくないぞー?どうしたんだよ?」

「いやぁ…何となく思ったことがあって、話したくなったんです」

「思ったこと……?」


─暖かい飲み物を一口含む。雷磨がマグカップを置くと、ようやく話したいことを話した。


「…僕達、似た者同士だなって」

「似た者同士……?」

「えぇ。あなたには、亡くなったお兄さんもいるわけでしょう?僕達は次男…それにあの病院で僕らは出会った…それに僕らの恋人は、院長の娘……」

「確かにな」

「何より…一度は絶望の底に堕とされたけど、愛さんと舞姫さんがあの時いてくれたから、こうして僕らは生きていけてる……こんなに共通点多かったら、似た者同士だなって思って…」

「そういえば、俺達の仲って…あの南北北病院から始まったんですよね」

「だな……もうあれから十年ぐらい経ったのか…懐かしいなぁ」


─雷磨が言いたいことは一つ、僕達は似た者同士だということ。

─次男、初めて出会った場所、恋人、絶望してた時期─それらが彼と似ていた。確かに今思うと、俺達の仲は、南北北病院から始まっていたのだ。

─その夜は、懐かしい過去の話をした。話が尽きる頃には深夜四時になっていて、暖かかったはずの飲み物はとっくに冷めていた─。


――――――――――


「ただいまぁ…疲れた…」

「舞姫、おかえり…飯作ってあるし弁当箱洗っとくから、シャワー浴びてこい」

「うん…ありがと」


─ダブルデートからまた一週間が経過した。

─舞姫が日勤から帰ってきた日、その日は俺は休日で、家事やゲームをしていた。

─必ず舞姫の好きな茄子料理を作ることが、俺の休日ルーティンの一つである。


「ん〜!おいひ〜♡」

「良かった。麻婆茄子の辛さ加減どう?」

「麻婆豆腐ならアウトだけど、麻婆茄子なら幾ら辛くても大丈夫だよ…ふふっ」

「茄子限定なのか……」

「……こうして、私達の間に子どもが出来たら、更に幸せになれてるかな」

「当たり前だべ……俺は舞姫となら、どんなに辛い壁でも乗り越えれる自信しかないぞ」

「…ありがとう」


─そして、俺が作った茄子料理を食べて頬を緩ませた舞姫の笑顔も見るのも、俺の休日ルーティンの一つである。

─リスのように料理を頬に詰め、美味そうに飯を食う姿は、どこの誰よりも愛しいのだ。

─舞姫となら、どんなに辛い壁でも乗り越えられると話すと、彼女は笑顔で返し、ボソッと話してきた。


「…ねぇ希望君」

「なしたー?」

「……お姉ちゃんと話したんだけど、私達、似た者同士だなって思ったの」

「奇遇だな…俺も雷ちゃんとその事話してた」

「私、お姉ちゃんとは性格や好きな物とか正反対だけど、血が繋がってることとか、どうしたら希望君や雷磨さんを幸せに出来るかとか…お父さんに例のこと話されて思った事とか似ててさ…」


─何と、彼女も愛さんと話して、自分も似た者同士だと思ったらしい。

─やっぱり俺達の仲は、南北北病院から始まっていて、俺と雷磨は一度絶望していた過去があったものの、愛さんと舞姫と出会ってから、人生が変わったこと。そして─院長に恩返しをする夢を叶えたいのも事実だったのだ───。


「希望君ー!ウエディングドレスどうかな?」

「おおー…めちゃくちゃ綺麗だぞ…」

「ふふっ。嬉しい…希望君の好みで選んだの!」

「色々あるのねぇ…雷磨さん、どう?変じゃないかしら…?」

「凄く似合ってますよ…花嫁さん」

「もうっ!でも…ありがとう」


─そしてまた別の日、俺達はウエディングドレスの試着の付き添いをした。

─式場のスタッフと共に、ウエディングドレスを試着しては、幼い姉妹のように燥ぐ愛さんと舞姫さん──。もしかしたら、昔の院長は、一秒一秒愛さんや舞姫さんとの時間を噛み締めながら、過ごしていたのだろうか。


「……院長、昔はこんな感じで愛さんのことを常に見守ってたんですかね」

「かもな……俺達、本当に似た者同士だな」

「えぇ…」


─ダブルデートの日、俺達の結婚式は合同で行うことが決まった。

挙式がいつかはまだ未定だが、院長には当日、誰よりも幸せでいて欲しいものだ。


「……なぁ舞姫」

「なに?」

「これからもさ…笑って、泣いて、喧嘩しても、ずっと一緒に生きていこうな」

「うん……希望君となら、どんな未来でも大丈夫」


─そう言って笑った彼女の横顔が、初めて出会ったあの日と重なった。

─きっと、あの日から俺達の物語は始まっていたのだ。


─そして、これから続く未来のページには、まだ見ぬ幸せが待っている。


……To be continued


閲覧頂きありがとうございました!

コメント、いいね、感想お待ちしております!

次回作もお楽しみに!では。

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