二人の間に愛を
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「いやあ…廉命さんのライブ良かった!」
「せやな……ほんまに凄かった」
「褒められると…なんて反応すりゃわかんねえし…」
「まあまあ…。この後、夢玖ちゃん達は学科の人達と打ち上げするんだっけ?」
「うん…仁愛ちゃん達はどないするん?」
「仁愛達も打ち上げするよー!粲坂温泉で待ってるからね」
─学園祭が終わり、後片付けをすると夜になっていた。この後スポーツ健康科学科の皆で福島駅前の居酒屋で打ち上げをするわけだが、その後は粲坂温泉で、仁愛達と皆で泊まるという話になっていたのだ。
─俺達は福島大学で解散し、夢玖さんと福島駅に向かった。
「東口か……ここかな」
「お、日出夫妻が来たぞ皆ー!」
「馬鹿!まだ夫婦じゃねぇしっ!」
「まあまあ…とりあえず二人とも座って座ってー」
─指定された店に行くと、既に学部の皆は座っていて、俺達も座り、飲み物を注文した。俺達の飲み物が席に運ばれると、クラスメイトが乾杯の音頭を取った。
「えー、如月さんのミスコン準優勝…そして、学園祭の終了を記念して、乾杯っ!」
「夢玖〜準優勝おめでとう!めちゃくちゃ綺麗だったよ!」
「いやぁ……ほんま、照れるわ」
─その時間は、笑い声が絶えなく、とても楽しい時間だった。
「お酒…中々飲めへん…」
「夢玖ー、一口飲んだのに顔真っ赤。可愛い」
「も、慣れてないだけやねんっ!」
「(酔ってる夢玖さん…可愛いなぁ…手も赤く染まっちゃって…)」
─テーブルの下で彼女の手を握る。酒によりオッドアイをトロンとしてて色っぽい。俺は可愛い夢玖さんを横目に、カシオレを口に含む。
「日出、カシオレ飲んでるのっ!女子かっ!」
「いや…ただカシスが好きなだけだよ…」
「こうして如月さんと酒飲んだりしてるの?」
「それは……してないなぁ…夢玖さん酒弱いし」
「夫婦で酒ねぇ…奥さん酔ってるけど、大丈夫?」
「まだ妻じゃねぇしっ!」
─次第に運ばれた唐揚げにポテト、枝豆やイカ人参を摘みながら、酒と共に色々話す。学園祭や就活の思い出、夢玖さんや日本列島の旅のことも。
「てか日出、家どこだっけ?車で来てるんだよね?」
「寿賀河だけど…まあ車だね」
「日出も酒飲んでるってことは……」
「まあ…仁愛ちゃんの家が粲坂温泉だから、この後泊まろうってなってるの」
「温泉ねぇ……如月さんと松寺さんもいるとか最高じゃん」
「いや……他にも何人かいるけどね」
─次第に話が盛り上がり、俺達は打ち上げを楽しんだ。
「それじゃ皆、お疲れー!」
「お疲れー!」
「お疲れ。夢玖さん、行こうか」
「日出夫妻、お幸せにな」
「あのなぁ……まあお疲れ」
「夢玖〜、今度は女子会しようねぇ!」
「もちろんやで!お疲れー!」
─俺達は解散し、それぞれ帰路に着いた。
─仁愛が、元ヤクザと迎えに行くと話していた。すると、福島駅東口のロータリーに一台の車が停まった。
「いやぁお疲れ様ー。さ、行こうよ」
「おう」
「うん」
─そして、俺達はその車に乗った。
─ヤクザの車はどんな感じかと予想していたが、想像を超えるほど清潔で、乗り心地が良かった。
「いやぁ…仁愛嬢から話は聞いてるぞ」
「は、初めまして……」
「如月君に日出君……今夜はゆっくりしてきな」
「あ……あざす」
─車は温泉街を抜け、粲坂温泉に到着した。
─夜のライトに照らされる旅館は、どこか幻想的で静かだった。
――――――――――
「着いたね……粲坂温泉初めて来た…」
「うん、綺麗やな……」
─玄関で靴を脱ぎ、畳の香りが漂う館内を通る。
─仁愛と夜海、凪優が待っていて、笑顔で手を振った。
「夢玖ちゃん、廉命君、こっちこっち!」
「ありがとう…」
─部屋に案内され、荷物を置くと、二人は自然と窓際に並んだ。
─外の夜風が涼しく、夜空に月が輝く。
「……廉命さん」
「ん?」
「学園祭も終わって、こうして二人でゆっくりできるの、久しぶりやね」
「そうだな……準優勝、おめでとう」
「おおきに……廉命さんも、ライブお疲れ様」
─手を握り合い、視線を交わす。
─少し酔いが回った夢玖の頬が赤く染まる。
「……夢玖さん、せっかくだし、シャワー浴びるか?」
「うん……一緒に入ろ?」
「もちろんや」
─浴室では、温かい湯気の中で互いの背中や肩を洗い合った。
─お互いの存在を近くに感じ、照れながらも笑いが絶えない。
「……日出君、手つないでてくれる?」
「当然や」
─湯気と熱で体が温まり、心も自然と落ち着いていく。
─シャワーを終えると、二人はバスローブに包まれ、ベッドに腰を下ろした。
「……今日の準優勝、ほんまに嬉しかった」
「俺も、夢玖さんの笑顔見れて嬉しかった」
「……廉命さんと一緒に来れて良かった」
「俺も。今日みたいな夜は、特別だからな」
─手を取り、肩を寄せ合う。
─静かな夜に、互いの温もりだけが満ちていく。
「……もう、離れへんで」
「うん……絶対に」
──その瞬間、窓の外の月明かりが二人の影をそっと包む。
──秋の夜風が静かに吹き、温泉街の夜は柔らかく、甘い余韻を残していった。
─朝、柔らかい光が障子を通して部屋に差し込む。
─夢玖は隣でまだ寝息を立てる日出の肩をそっと抱きしめた。
「……廉命さん、起きて……朝ご飯行くで」
「ん……もう朝か……?」
「うん。温泉街の匂いもするし、朝食楽しみやろ?」
─日出は少し伸びをして、夢玖の手を握り返す。
─二人は浴衣に着替え、館内の食事処へ向かった。
「おはようございます、夢玖ちゃん、日出君」
「おはようございます!仁愛ちゃん、皆」
─食事処に行くと、仁愛と夜海、凪優が座っていた。和やかな空気が流れる。
─大学のメンバーで打ち上げ、そして仁愛達とも粲坂温泉で飲んだのに、全然元気だ。
─和食の朝食が並び、焼き魚やだし巻き卵、温泉卵に湯豆腐──美味しそうな香りが立ち込める。
「いただきます!」
「いただきます」
─夢玖は隣の日出に笑顔を向け、箸を進める。
─日出も嬉しそうに夢玖の横顔を見つめた。
「昨日の学園祭、皆楽しかったなぁ」
「ほんまや。ライブも、ミスコンも…特に夢玖の笑顔、最高だったよ」
「おおきに…」
─食卓には笑い声が溢れる。
──仁愛も昨夜の優勝の余韻で、楽しそうに話す。
─この友人たちも、学園祭の思い出や失敗談を笑いながら語る。
「夢玖ちゃん、準優勝おめでとう!やっぱりキラキラしてたね」
「おおきに!仁愛ちゃんの優勝もすごかったで」
「うふふ、二人とも頑張ったからね」
─食事が終わる頃、夢玖さんと俺は少し離れて座る仁愛と友人たちの方を見た。
─昨日のステージで見た二人の姿──夢玖と仁愛──が思い出される。
「……ねぇ廉命さん」
「ん?」
「これからも、皆でこうして一緒にいられるといいね」
「もちろん。夢玖さんとなら、ずっと一緒に楽しめる」
─手を握り合い、互いに微笑む。
─窓の外には温泉街の朝の風景──紅葉が色づく木々と、朝露に輝く屋根瓦が広がる。
「さて、今日はどうする?」
「昨日は学園祭で疲れたし、温泉でゆっくりしよっか」
「賛成や。夢玖と一緒なら、どんな時間も楽しいしな」
─二人は朝の温泉街を眺めながら、これから始まる穏やかな一日を胸に刻んだ。
─学園祭の熱気が残る街の中で、友情と愛情が静かに温まっていく。
─温泉でひと汗流した後、二人は館内を少し散策することにした。
「せっかくだし、温泉街も見て回ろうか」
「うん、いいね……日出君と一緒なら、どこでも楽しい」
─石畳の小道を歩き、紅葉に染まった街並みを眺めながら、二人は肩を寄せ合う。
─露天風呂の外に出ると、澄んだ空気が体を包み込み、心まで清々しくなる。
「ねぇ夢玖ちゃん、写真撮ろうか?」
「うんっ!この景色、一生の思い出にしたい」
「ラジウム玉子、買ってくか」
「ラジウム…玉子?何やそれ…」
「粲坂温泉名物の温泉卵のことさ」
「なる…ほど?」
─スマホで何枚か写真を撮り合い、笑い声を響かせる。
─その時、仁愛や夜海、凪優たちも起きてきて、館内で合流。
「おはよう!みんな起きたー?」
「おはようございます!」
「昨夜は騒いだもんなー。今日はゆっくり楽しもう」
─仁愛達が笑顔で二人に手を振る。
─夢玖さんも俺も、仲間たちと再会できたことに嬉しさを覚える。
「じゃあ、せっかくだし朝ご飯食べて、その後温泉街で軽く散歩しようか」
「うん、みんなで行くと楽しいね」
─朝食は和洋折衷のバイキング。
─焼き魚や卵焼き、パンやスイーツまで種類が豊富で、みんな楽しそうに料理を取る。
「夢玖ちゃん、昨夜のミスコン準優勝おめでとう!」
「ありがとう……仁愛ちゃん、優勝すごかったなぁ」
「ふふっ、夢玖ちゃんも準優勝やで。二人とも輝いとったわ」
─食後、館内を抜けて温泉街へ。
─土産物屋や足湯を覗きながら、笑い声が絶えない。
─仁愛が「あ、これ美味しいよ!」とお菓子を紹介すると、皆で試食して盛り上がった。
「廉命さん、あの足湯入ろっか?」
「お、いいね。じゃあ夢玖さんと二人で」
─小さな足湯に浸かると、二人の距離は自然と近づく。
─冷たい風と温かい湯のコントラストに、心がふわっと和む。
「……あったかいね」
「うん、こういう時間って幸せやな」
「ねぇ、ずっと一緒にいれる?」
「もちろん。廉命さんとなら、どこでも一緒や」
──その後、チェックアウトを済ませ、車で駅まで向かう。
──道中、昨夜の打ち上げや学園祭の思い出を語り合いながら、笑顔が絶えなかった。
「粲坂温泉、また来たいな」
「うん、みんなでまた泊まりに来よう」
──駅に着くと、二人は軽く手を握り合いながら、改札に向かう。
──帰路の電車の中も、寄り添いながら、今日の余韻に浸る二人。
「ねぇ夢玖さん、次はどこ行こう?」
「うーん……次も、廉命さんと一緒ならどこでも楽しい」
──電車の窓に映る夕暮れの景色。
──手を握り、肩を寄せ合う二人は、どこまでも続く未来を感じながら、ゆっくり帰路についた。
──学園祭も終わり、キャンパスは徐々に普段の落ち着きを取り戻していた。
──俺は、打ち上げの翌日、夢玖と二人でカフェに座っていた。
「いや、マジで学園祭は楽しかったな」
「ほんまやな……廉命さんのライブも良かったで」
──夢玖の笑顔が、俺の心を少し温かくした。普段は落ち着いた雰囲気の彼女が、今日は少し照れながらも楽しそうに笑っている。
「ありがとう……でも、仁愛ちゃんの優勝、ほんまに凄かったな」
「俺もそう思う。あいつ、人を引き込む力があるわ」
──準優勝とはいえ、夢玖さんが悔しそうに笑うのを見て、俺は胸が少し疼いた。だが、こうやって仲間と一緒に頑張った時間を思い出してるだけで、充分に価値があると思えた。
「でも、準優勝でもみんな驚いてたし、俺としては十分すごかったと思うで」
「うん……そうやな」
──俺たちはステージ裏でのハプニングや、男子ライブの面白い話をして、思わず笑った。
「そういえば、ライブも盛り上がったな」
「廉命さんの歌、迫力あった……羨ましいわ」
「いやいや、夢玖さんの笑顔も負けないでしょ」
──夢玖は少し顔を赤らめながらも、嬉しそうに笑っていた。
──その笑顔を見ると、やっぱり俺は夢玖のことをもっと大事にしたくなる。
「ねぇ、来年も学園祭、また一緒に出ような」
「もちろん。俺もライブで出るし、夢玖はミスコン……いや、何でもいいけど、一緒に楽しもう」
「うん……楽しみやな」
──カフェの窓から差し込む柔らかい秋の光が、俺たちを包む。
──学園祭の煌めきはもう終わったけど、俺の心にはまだその余韻が残っていた。
「……夢玖、これからもずっと隣にいてくれよ」
「当たり前や。俺にとって、夢玖とならどんな未来も楽しめる」
──肩を寄せ合い、カフェで静かに過ごす時間。
──学園祭の興奮が落ち着いても、俺たちの絆は、しっかりとそこにあった。
……To be continued
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