始まりの日
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※修正版です!
「今日から転校生がこのクラスに加わります。皆、仲良くね…入ってきて」
「………」
「うげぇ…オッドアイ?」
「キモ…病気あるんじゃね?」
「可愛くねぇ…」
「静かに。名前、言ってみて」
─次の日。私は愛先生と来て、彼女が受け持つクラスの教室に入った。大勢の人が目の前にいて、私の瞳を見て嘲け笑い、嫌う顔をしている。どうにか愛先生が黙らせ、私は自己紹介をした。
「如月…夢玖……いいます。大阪出身…よろしゅう」
「大阪弁きっしょ……」
「エセ関西弁じゃねぇの?」
「静かに!この子はまだこの地に慣れてないの。だから…この子の力になってあげて」
─周りの生徒は皆、私を歓迎する気持ちはなかったが、夜海や仁愛は違かった。そしてホームルームを終え、最初の授業はパソコン実習だった為、移動教室になった。
「夢玖ちゃん、移動教室一緒に行こう」
「夜海ちゃん…うん」
「仁愛も行く!夢玖ちゃん…今日も可愛いね」
「抱き着かんといて…距離近いで」
「おしくらまんじゅう…なんちゃって」
「(……柔らか…って…仁愛ちゃんもたわわ…)」
「柔いなぁ…?」
「仁愛ちゃん、確か今F寄りのEだもんね」
「ん…ゴロゴロ……」
「可愛い〜!猫みたい…」
─そして、初めてのパソコンの授業が始まった。この授業は三年になると選択科目として、財務会計か経営学に別れるのだが、愛先生は財務会計を選択させたらしい。どおりで全然分からなかった。その後も何とか授業を終え、お昼の時間になった。
「夢玖ちゃんお弁当食べよ〜」
「うん……本当にうちと食べたいん?」
「当たり前じゃーん。仁愛達友達なんだから」
「友達…ね」
「私も一緒に食べるわ」
「愛先生!今日のお弁当も可愛い…」
「…………これが、普通なんやな……私周りから嫌われて、両親おらんから毎日食パンの耳しか食べへんかってん……友達って温いな」
「よしよし…それではかし…仁愛特製の卵焼きをあーん」
─弁当を広げ、夜海達が一緒に食べようと言ってくれてる。しかし私は─初めての友達に慣れてなく、どう返していいか分からなかった。しかし、愛先生も弁当を持って教室に来たことにより、私は安心した。
─友達って温い存在だと思うと、仁愛が卵焼きを箸で摘み、私の口に入れてきた。その味は、兵庫の明石焼きのように優しい味付けで美味しかった。それに便乗してか、夜海や愛先生も私におかずを分けてくれた。
「んっ……!これ…めちゃくちゃ美味い…明石焼きと同じ味する…」
「私のたこさんウィンナーもあげる。夢玖ちゃん食べる姿可愛い〜!ふふっ」
「うち…餌付けされとる…?」
「私はエビチリあげるんだから……舞姫、あの子料理上手だから毎日幸せでしょ?」
「はい…」
「舞姫さんって誰?」
「私の妹よ。一つ下で看護学生なんだけど、すっごく可愛いの」
「舞姫さん……も飛び切りの美人っ!」
「うわぁ…すっごい美人…姉妹揃って美人過ぎる…!」
─友達ってこういう距離感なんだと認識してる時に、舞姫さんの話になった。そういえば、愛先生と舞姫さんは姉妹だったことを思い出した。愛先生がスカートのポケットから小さな本を取り出すと、二人が映ってる写真を見せてくれた。写真越しでも二人は美しかった。すると愛先生は何かを思い出したそうだった。
─一つ目は舞姫さんは簿記が非常に得意なこと、二つ目は私が院長に養子として引き取られたことだったのだが、ある事実に気付いてしまった。
「ちなみにだけど、舞姫は簿記がすっごい得意だから、もし困ったらあの子に頼ってみて!商業英検は私に任せて頂戴!一ヶ月で一級取れるわよ!」
「愛先生ったら……そういえば、夢玖ちゃんは生活どうしてるの?」
「なんかな、舞姫さんと愛先生のおとんが私を養子として引き取ってくれてん……そんで院長、仕事で忙しくて中々家に帰るん出来ひんから、生野さんと舞姫さんのマンションで同居しとるんよ」
「そうなのよ。あれ…ってことは……私にまた妹が出来たってことよね…?」
「うんっ!お姉ちゃん出来たねぇ…よしよし」
「顎の下…弱いんよ…ゴロゴロ」
「猫みたい…可愛い」
─何と、院長が私を養子として引き取ってくれたお陰で、私は舞姫さんと愛先生の義理の妹になったのだ。新しい環境に慣れるのに気付いていなかったがまさか私に姉が出来るとは─。
「ねぇ…今度お姉ちゃんって呼んで…?」
「それは…恥ずかしいやんか……」
「そうだ愛先生、今度夢玖ちゃん連れてご飯行きたいんですけど…」
「そうね!飲食チェーンはほぼ初めてなのよ…」
「えぇっ!それなら…回転寿司かなぁ?それともしゃぶしゃぶ?」
「夢玖ちゃんはどうしたい?」
「え………」
─さすがに会ったばかりの人を姉と呼ぶのは難易度が高過ぎる。あまりにも実感がなさ過ぎたせいか私は頭が真っ白になっていた。そこで仁愛はある提案をした。私とご飯に行きたいと。回転寿司かしゃぶしゃぶかを聞いてきた──正直どれにするか迷ったが──
「それなら、両方行けばいいんじゃないかしら」
「えっ?」
「高校生は、幾ら食べても足りないでしょ?それなら両方行っても問題ないと思うわ」
「しゃぶしゃぶ…回転寿司……ジュるっ」
「決まりだね。明後日の夜とかどう?」
「明後日の放課後ってことやんな?」
「うんうん!そうだ…クレープとかも食べようよ!それでプリクラとか撮ってコスメ見て…明後日の放課後、遊ぼうよ!」
─愛先生が提案してくれたことにより、私達は明後日の放課後に遊ぶことが決まった。学校が終わり、アルバイトに向かった。学校を出ると、銀髪でサングラスを掛けた男性が迎えに来ていた。しかも煙草を吸っていて、私に近付いてきた。私はその彼の怖さに怯え、足が動かなくなっていた。目の前に近付き、サングラスを外すと───
「ふぅ………はぁ…」
「夢玖ちゃん…また明日ね〜!」
「また明日〜!ばいばーいっ!」
「(なんか怖い人いる……)」
「…………」
「ひ、ひいっ!」
「そんなに怯えるな。昨日顔合わせただろ」
「え………」
「まあ細かいことは後……とりあえず車乗れ」
─昨日顔を合わせた男性だった。運転席の方を見る。怯えてる私を察したのか、彼は自分の名を名乗り、色々話をしてくれた。
「……何だ?」
「いえ……」
「さっきは驚かせたな。悪かった……俺は目白福吉。生野と同じ職場のやつだ。本当なら鳳斗が迎えに来る予定だったんだけど、如月が嫉妬の視線を浴びて痛い目に遭ったら…って俺に頼みやがった…」
「そう、なんですね……(めちゃ煙草臭い…)」
「ちなみに俺、二箱くらい煙草吸うからその辺は理解してくれると助かる」
「はぁ………」
─そしてスポーツ用具店に着き、私は福吉さんの後を付いて中に入った。事務所に入ると、店長が出迎えてくれた。ちなみに福吉さんはプライベートではサングラスを掛けるらしい。慌てて普通の眼鏡を掛けると、二十九歳とは思えないくらい顔立ちが良かった。福吉さんの銀髪に見惚れていると、あとから悪人面の黒髪の男性が入ってきた。
「おー如月さん!待ってたよ!」
「はぁ……」
「てか福吉さんダメでしょ〜!サングラス掛けてると……なんかその…ガチで怖いから止めな?」
「あー、俺プライベートの時サングラスなんだよね…ふぅ」
「(普通の眼鏡だとイケメンなんや……はぁ)」
「あと俺二十九歳ね。ここは皆年齢近いから、色々気が合うと思うぞ」
「如月ちゃん来てたのか。学校はどうだ?」
「まあ…色々あったけど、まだこれからです」
「そうか……俺は加堂霧也。二十八歳……競技担当もしてる。あと生野とは仲悪い」
─それから色々話していたが、その間に、店長が私の制服を用意してくれた。初めてアルバイトの制服に袖を通す─。青と赤のジャージのような素材が、私の社会勉強の始まりを表した。着替え終わると、私は事務室に戻った。
「よし…如月さん、制服着てみて!」
「はい……(Sやのにブカブカや…)」
「着替えました…どうです?」
「おおぉぉっ!めちゃくちゃ似合ってる!」
「キツくないか?」
「凄いダボダボです…」
「良かった。ついでに髪を纏めてみな」
「生野。どこから湧いてきた……」
「別にいいだろ。如月、似合ってるぞ」
─すると、女子高生のアルバイトの制服姿に萌える店長。サイズは大きいが、似合ってると言われてホッとした。すると後ろから生野さんが髪を纏めてくれた。
「おう…似合ってるぞ!よし…早速売り場を回ろうか」
「はい……っ!」
「そんなに緊張しなくてもいいし、俺も一緒だから安心して」
─店長と一緒に売り場を回ることになった。改めて見ると、テニスやバドミントンなどの競技コーナー、ランニングシューズなどのシューズコーナー、スポーツ眼鏡などのメガネコーナー、ゴルフコーナー、レジ、そしてスノーボードやキャンプなどのアウトドアコーナーが私を驚かせた。
─そして、各部門の仕事内容について細かく説明され、シフト申請や出勤までの流れ、そして閉店作業について説明された。
─説明を終えると、閉店時間になり、ハンガー回収をすることを頼まれた。それと同時に、同い年であろうアルバイトの人と一緒にしていたのだが─。
「よし、この凪優助と共にハンガー回収をしてくれ。サイズごとに分別して、パンツハンガーのチップは取って分別ね」
「はい……」
「……あの、名前は?」
「如月夢玖いいます……」
「そう。うちは紡木凪優…。舞台が好きで…最近は2.5次元舞台にどハマりしてるの。特にこの役者…演技も良いしビジュもいいっ!絶対見た方がいい…」
「舞台…?サーカスみたいな感じ?」
「サーカスではない、よ?」
「サーカスじゃねぇぞー。漫画やアニメ、ゲーム私原作として生身の俳優が演じるミュージカルや舞台のことだよ。如月、アニメ好きそうだし聞いてあげなよ」
「えっ?」
─彼女の名前は紡木凪優という─。どうやら同い年で、冰山の通信高校に通ってる高校三年生らしい。そして舞台が好きで、初対面なのにも関わらず、勢いよく舞台のことを熱弁していた。
─すると、生野さんも現れ、舞台について説明をした。そして提案してくれた。趣味を持たないかと。
「俺もゲームしてるし…あーでも、雷ちゃんの方が圧倒的に強いんだよなぁ…医大生ながらプロゲーマーだし」
「そうですよ。趣味があれば辛いことも頑張れます」
「そうそう。趣味は人それぞれだがな…ふぅ」
「福吉さんの趣味は煙草と勉強なんだから…如月さん、ここにいる人達は皆味方だよ。リラックスしていこうっ!」
「……はいっ!」
「よし、早速帰ったら皆でテレビゲームだっ!ってあれ…?」
「ほら、廉命も出てこいよ」
─次第に閉店作業を終えた雷磨さんも福吉さんも、加堂さんも店長も話し掛けてくれ、どんどん心が暖かくなった。そして──
「君は趣味を持った方がいいよ。俺もゲームするし…あ!べ、別に一緒にゲームしたいとかじゃねぇからなっ!」
「素直じゃねぇなぁ……このドツンデレめ」
「加堂さん、これは…」
「見ての通り、廉命は如月ちゃんに恋をしちまったんだ」
「まあまあ。とりあえず皆、今日から如月さんが新しく仲間入りをした…そして、彼女にはシューズを担当してもらうから、生野に廉命。指導お願い」
「うっす…良かったな、廉命」
「はぁっ!な、なんで俺が…このガキと……っ!べ、別に同じ部門で仕事出来て嬉しいとか、じゃねぇからなっ!」
「……らしくねぇぞツンデ廉命!」
─廉命さんもいた。廉命さんは私に向かって、顔を真っ赤にしながら別に─と言葉を投げ掛けてくる。彼とは目が合わないが─少なくとも彼の紅い瞳には、何かが燃えてる感情が見えた。
─この日を境に、私は新しい環境に足を踏み入れたのだ。
……To be continued
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<キャラクター紹介⑤>
名前 : 紡木凪優 (つむぎ なゆ)
血液型 : A型
誕生日 : 9月28日
身長、体重 : 160cm、47kg
MBTI : INTP
好きなもの : レバー、プリン、2.5次元舞台
嫌いなもの : バナナ(火が通ってないと無理)
趣味・特技 : 裁縫、舞台鑑賞
冰山の通信高校に通っていて、某スポーツ用具店でアルバイトをしている、18歳の女子高生。通信高校に転校する前は酷い虐めに遭っていたため、兄に話して今の通信高校に転校している…。その為ほぼ毎日スポーツ用具店にいるが、希望を通して夢玖とは何でも分かり合える友人となる。舞台鑑賞が好きで、夢玖に布教中……。
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次回作もお楽しみに!では。




