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普通を失った俺が、世に希望を与えるまで。  作者: 速府左 めろ
<第二章>地を踏む一歩が、希望な意図となる。〜日本列島出張編〜
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日が昇る

この度は閲覧頂きましてありがとうございます!

「ふう……ふう……」

「(今なら……手に……)」

「日出君。おはよう」

「うえ、院長……はよ…ございます」

「何だ?何があった?」

「いや……その……」

「患者に口付けするんじゃない……悪いが、如月君の病室を移すことにした」

「えっ?何かあったんすか?」

「実は………うちの職員で如月君を狙ってるやつがいるからな。仕方ないが、私の部屋で様子を見るとしよう」


─夢玖さんの手を握り締め、彼女の白い掌に口付けをしようとした時、院長がやってきた。何と、最近南北北病院の男性職員が、夢玖さんを狙ってることに気付き、急遽ベッドを移すことに決めたらしい。第三者から見れば今の夢玖さんは眠り姫に見えるし───いや、俺の姫だ。俺が目を覚まさせる───いや、そんな事はどうでもいい。俺は院長と一緒に夢玖さんのベッドや荷物を移動した。


「煌星院長、おはようございます」

「おはよう」

「院長、彼は…?」

「ええと……私の娘と同じ高校の子だ」

「へ〜!すっごいイケメン…かっこいい」

「どうも」

「今日もよろしくな」


─ベッドの移動を終え、俺達はソファに腰を掛けた。ソファに背中を預けると、院長が俺の骨折の容態について話してきた。回復が早いのか今日ギプスを取るらしい。ギプスが外れることに喜んだが───


「ギプスの中、痒かっただろう?」

「めちゃくちゃ痒かったっす」

「痒み止め塗るか?」

「いや……掻きむしります」

「ダメだ。ギプス外したら、洗うからな」


─ギプスを外した後の皮膚は、場合によってはアザや色素沈着が見えるらしい。そして、ギプスを外した後の過ごし方を説明された。眠そうにしてると、院長がソファから立ち上がったと同時に、舞姫さんが、大きめのトートバッグを肩に提げながら院長室に入ってきた。


「……朝の八時か……情報収集やカルテの確認もせねばならん……」

「お父さん、廉命君、おはよう!」

「おはようございます…舞姫さん」

「はい。朝ご飯…お父さん、夢玖ちゃんどう?」

「熱は下がりつつあるが…まだ油断は出来ないな……今朝は三十八度だった」

「熱下がってる〜!夢玖ちゃん良かった〜!あ、今日のご飯もたーくさん作ってきたからね!」

「馬鹿でかいタッパー六つも……しかもぎっしり詰められてる……何作ったんすか?」

「男の子なんだからしっかり食べないと!ちなみにこのタッパーは、廉命君用だから!何かあったら呼んでね!情報収集と申し送り行ってくる!」


─トートバッグから姿を見せる特大なタッパーにには、舞姫さんが作ったものであろう唐揚げやおにぎり…サンドイッチや卵焼きが入っていた。いや運動会かよ─とツッコミたくなったが───。舞姫さんが院長室を後にすると、夢玖さんが目を覚ました。彼女が目を開けると、瞳は緑と赤に変わっていたが、彼女はそれに気付いていなかった。


「如月君、おはよう」

「おはようございます……ここ院長室やんか…」

「実は、ここの男性職員が如月君を狙っててな…安全を考えてここに移動したんだ。全く…困ったもんだ」

「俺もそれ聞いて……ストレス溜まりました」

「えっ?日出君って……ストレス溜まるのか?」

「俺だって溜まりますよ……夢玖さんが他の男と話してたり、夢玖さんの無防備な一面見て理性を抑えたりで」

「それならだいぶ溜まってるな……とりあえず舞姫の作ったサンドイッチ食べよう。コーヒーはブラックでいいか?」

「うす」

「はいっ!舞姫さんが作るご飯…皆美味しいから大好きやねんっ!ゴロゴロ…」


─今の雰囲気を壊したくなかったのか、夢玖さんの瞳の事は言わず、簡単に朝飯を済ませた。サンドイッチには、ハムやレタス、卵にチーズ、トマトが挟まれていた。これもまた絶品だった。


「舞姫さん、料理上手っすね」

「当たり前だ……唐揚げも大量に……。中津唐揚げを教えた甲斐があった。だんご汁やとり天、日田焼きそばも教えたなぁ……懐かしい」

『お父さ〜ん!九州料理教えて〜!』

「あの頃が一番可愛かった。愛達が中学生だった時は、二人とも部活や勉強忙しかったり、反抗期もあったから私がよく飯を作ってたもんだ」

「あの地獄蒸しもめちゃくちゃ美味かった…院長、すげぇいい所で生まれ育ってますね」

「まあな。なんか舞姫は昨日、愛と一緒に君のご飯作ってたんだ」


─舞姫さんは料理上手なため、彼女の作るものは皆安心して食える。スイーツ以外は─。暫くして院長や舞姫さんも仕事が始まり、俺達は二人、院長室にいたのだ。


「大学、今んとこ代理出席してもらっとるから…治ったらお礼しなあかんなぁ…」

「そうだね……でもうちのゼミ、甘いもの好きな人多いから、ちょいと高めのお菓子の詰め合わせでも買っとく?」

「せやなぁ…十五個入りとかなら、値段的にもええと思う………」

「うん。俺もそう思う」


─俺も夢玖さんも、大学は同じゼミの友人に代理出席してもらってるわけだが、ひたすら迷惑を掛けてるだけなので、復帰したらお礼にお菓子を買おうという話になった。ふと俺は気になり、夢玖さんに聞いてみた。先ほどのオッドアイの色についてだった─。どうやら高熱で魘されてたらしい。夢玖さんの顔を見るからにして、顔は赤く、何より体が汗ばんでいた。


「ねぇ夢玖さん」

「何や?」

「今朝起きた時……片目真っ赤だったけど、悪い夢でも見た?」

「ほんま…?熱のせいか目の奥がぐるぐるしとる感じやったからかなぁ?」

「寝てる時もたまに魘されてたけど、それも高熱のせいかもね……とりあえず、身体拭く?俺トイレと自販機行ってくるから、身体拭きな」

「え、あ………ええと……ご飯食べれるけど、倦怠感強いから……拭けへん…ぐすっ」

「えっ?」

「身体、拭いて下さい……」

「……わ、分かった」


─流石に身体拭きたいだろうと思い、俺は席を外そうとしたが、夢玖さんは倦怠感が強く一人で身体を拭くのには困難らしい。正直舞姫さんを呼んで彼女に頼みたかったが、これは仕方ない─。腹を括るしかない───。夢玖さんがゆっくりと服を脱ごうとするため、俺が代わりに少しずつ脱がした。


「見てもええけど……じっと見るのはあかんで」

「それってどういう……っ!」


─腰のリボンを解き、一気に肌が露出した。その肌はいつも白いのに、高熱のせいか赤みを帯びている─。これはこれで色っぽいと思ったのだが─

理性に負けるのも時間の問題だった。襟元を引き出すと、彼女の華奢な肩や鎖骨も露出されて、更には一つ、視線を動かす事は出来なかった。


「……廉命さん?」

「(腰も細いし、脚も綺麗だし……すげぇ可愛いし、他の男共が見惚れるのも当たり前か)」

「(首の付け根に付けたキスマーク、まだ遺ってる………あー、クソ…ヤりてぇ…)」


─胸元だ。体育の授業で、俺の気も知らずに胸をぶるぶる揺らしてたし、他にも無防備な一面が沢山あるのだ。火照る肌に谷間に溜まってる汗─それを見て俺は抑えられなくなってしまった。すると夢玖さんは下着のホックも外したことで俺は驚いた。


「な、何してんの……?」

「背中も拭きやすくするためにホック外したんや…もう…そんなに見つめんといて……その……私まだ、十九歳やで?」

「いや……その……〜!」

「廉……命…さん?」

「…元はと言えば、君が自分から言ったんだ……俺の気も知らないで他の男も誘惑してるなんて」

「…………食べられ、ちゃうん?私」

「まさか。君が二十歳になったら婚約って俺言ったじゃん……とりあえず身体拭くけど、流石に前は自分でやって欲しい…」

「えぇ…せっかく下着のホック外したんに……触ってもええからはよせいやっ!(な、にゃに言うとるねんか!私は)」

「………うん(よく聞け日出廉命…これで妄想したらお前は最低だからなっ!)」


─何とか理性を抑え、まずは背中や腕を拭いた。彼女の背中は引き締まっていて、まるで天使の 羽が生えてるようだった。次に脇を拭いた。男のそれとは全く違い、色気を感じた。次に腹部。肌が滑らかで、くびれが綺麗だった。そして─一番問題のところを拭くのだが───


「ブラはこのままにしときます……」

「う、うん……」

「……色々旅したから、また胸キツくなったんよ」

「何だと……」

「ん……廉命さんの拭き方、いやらしい…ん」

「変な声出さないで……」


─女性の胸元を拭くのに、拭く勇気と慎重さがどれくらい必要かは夢玖さんは知らない───。デコルテや谷間は拭けた。下着の下も慎重に拭くが───誤って彼女の敏感なところも拭いてしまった。


「あんっ……」

「ご、ごめん……」

「やめ…あ、そこ……あかん…」

「(なんか硬い部分がある……?あ)」


─彼女には悪いが、敏感なところが明確で、弄ると反応する彼女が可愛くて、暫く続けていたが───流石に高熱の状態でやることではないので別の所に───と思った時、夜海と仁愛が院長室に入ってきた。


「夢玖ちゃーん、お見舞に来……」

「「「あ」」」

「えぇっ!れ、廉命さん…?」

「ち、違うっ!その…身体拭いてて……」

「ははーん。もうそこまで進展してるんだ〜?院長室の前、夢玖ちゃんの可愛い声が聞こえてたよ」

「嘘だろ…消えたい」

「院長呼んでましたよ。仁愛、変わります!」

「お、おう……」


─予想通り、あとで凄く弄られた。院長が俺を呼んでるとのことで、あとは仁愛に代わって夢玖さんの身体を拭いてもらった。


「夢玖ちゃん、どうだった?」

「………結婚して、責任取ってもらわへんと…とは思ったで…二十歳になってから…って話やったのに…」


「夜海…俺は最低だ。夢玖さんのアレに触れてしまった…」

「ラブラブで何より。夢玖ちゃんの熱も下がって良かったね」

「お前な…」


─まだ熱が下がり切ってなかったため、この日の夜海と仁愛はお土産を渡し、少し話をしてから帰った。

─また病室で二人きり。凄く気まずかったが─


「夢玖さん…さっきはごめん…」

「あれはたまたまやんか……まあ、結婚して責任…取るんやな」

「……そう、だね(夢玖さん、意味分かってるのかな……だとしたら嬉しいんだけど)」


─結婚して責任取れ、と話された。

─夢玖さんがこの言葉を理解して言ってるのかは分からなかった。


「無理はしなくていい。水分だけでもしっかり摂ろう」

「はい…ごめんね、心配かけて…」

「心配なんてしてないわけないだろ。俺は、お前が元気になるまで傍にいる」


─俺は夢玖さんの手を握り、軽く力を込めた。温もりを感じながら、彼女が少しずつ落ち着くのを確認する。


─その時、院長がドアの外から声をかける。

「二人とも、いいか?如月君の状態は安定している。無理せず休むんだぞ」

「はい…ありがとうございます」

「廉命君、ご飯置いとくね」


─外から舞姫さんの声も聞こえ、差し入れのタッパーを置きに来たようだった。廉命は目線を夢玖に戻す。


「…飯食うか。舞姫さんの作ったやつ、美味しいぞ。特に唐揚げがな」

「うん…ありがとう…」


─夢玖は小さく微笑み、少しずつ口を開けて食事を始める。小さい一口がとても愛おしい。その様子を見守る俺。焦燥や不安はまだ残るが、今は彼女の回復を優先するしかない。


「…廉命さん?」

「ん?」

「私、怖かった…高熱で何も考えらへんくなって」

「分かる…でも、もう大丈夫だ。俺が傍にいる」


─俺はそっと夢玖の肩に手を回し、安心させるように軽く抱き寄せる。彼女の微かな体温を感じながら、二人の間に言葉にならない信頼が流れる。


「ありがとう…廉命さん」

「気にするな。俺は君のためなら、何でもする」


─その瞬間、病室の外から夜海と仁愛が声をかけに来た。廉命はすぐに手を離し、笑顔で対応する。夢玖さんが心配でまた顔を見に来たようだった。


「お見舞いに来てくれたんだな」

「はい、夢玖ちゃん!でも、邪魔しないでねっ」


─周囲の気配にも自然に対応できるようになった夢玖を見て、廉命は安堵した。高熱で弱っていた彼女が、少しずつ元気を取り戻していることが、何よりの救いだった。


「よし、今日はここでしっかり休むぞ。俺も無理せず横にいる」


─そう言って、俺は夢玖さんの傍に座り、手を握ったまま静かに時間を過ごした。

─二人きりの穏やかな時間。高熱と不安に揺れた日々が、少しずつ落ち着いていく。





……To be continued

閲覧頂きありがとうございました!

コメント、いいね、感想お待ちしております!

次回作もお楽しみに!では。

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