もしもの話
この度は閲覧頂きましてありがとうございます!
<希望から写真が送信されました>
<舞姫、これから帰るね>
<お土産沢山買ってきたから!二十時には福島空港着く!>
「希望君……ふふっ。お仕事終わってご飯も作ったし、行こうかな。寒いから暖かい飲み物用意して…」
─日勤が終わり帰宅したばかりの時。希望君達の札幌出張が終わり、彼らが帰ってくる夜、彼から札幌の観光地や新千歳空港、講演会場や食べたものの写真が送られて、彼からのメッセージも送られた。それを見た時、私はぱあっと嬉しくなり、急いで着替え、暖かい飲み物も用意して車を運転した。
「ふぅ……やっぱり四号線混むよねぇ…よし、福島空港着いたら少し待って、希望君達に暖かい飲み物買お…くしゅんっ!」
─車を運転して三十分後、退勤ラッシュの為渋滞していたため、予定より遅くなった。福島空港に着き、携帯を見ると、更に希望君からLINEが来ていた。何と、夢玖ちゃんが熱を出していたのだ。
「講演中に熱…四十度近いんだ……カロナールと冷えピタ、あとは毛布に体温計、あとは……常備薬足りてるかなぁ…あとワクエリ!」
─急いで車に備えてる常備薬や救急箱を見る。それには絆創膏が多めに入ってたり、包帯や消毒液、ピンセットや体温計、あとは頭痛薬や胃薬、鎮痛剤や風邪薬などの常備薬、酔い止めや湿布や裁縫セットも入れてある。看護師なら誰もが車に救急箱を備えてるのだろうか─。
─あたふたしてたら希望君から着いたと連絡が着たので、私は車を後にし、福島空港に向かった。空港に入ると、スーツケースを持った希望君と、廉命君、明らかに体調が悪そうな夢玖ちゃんがいた。本当なら真っ先に希望君を抱き締めたいところだが、今は違う─。
「夢玖ちゃん!わ、凄い熱…」
「舞姫…急にごめん……俺達も頑張って如月を看てたんだけど…どうも熱が下がらなくて…」
「ありがとう…帰ってきて早々で悪いんだけど、とりあえずワクエリとかゼリーとか、必要なもの買ってきてくれる?」
「分かった!廉命、行くぞ」
「うっす」
「はぁ……はぁ…はぁっ!ま、舞姫……しゃん」
「意識はある…良かった。熱測るね」
「体温計……何処にあるねん……けほっ」
「看護師は離さず体温計持ってるんだよ?ほら、お熱測らせて」
─近くの売店で希望君と廉命君に必要なものを買ってきてもらい、私は夢玖ちゃんの状態を見た。熱を測ると四十度を超えていた。急な高熱となると感染症やインフルエンザの恐れもあるのだが、彼女をベンチに座らせ、抱き寄せながら彼女の頬を摩った。
「ぐす……舞姫、しゃん…ぐす」
「よしよし。頑張ったもんね……たこ焼き作ったんだけど、食べれそう……?」
「……今はダメや…」
「よく頑張ったよ……偉い偉い。あ、そうだ…スープたこ焼きどうかな?」
「うん……」
「舞姫さん、色々買ってきました」
「ありがとう…夢玖ちゃん、車まで頑張って移動しようか」
「俺が彼女を背負います」
「「え?」」
─意識はあるようで安心していた時に、希望君と廉命君が買い物から戻ってきたので、夢玖ちゃんを背負いながら車へ移動するつもりだったが、廉命君が夢玖ちゃんを背負うと申し出た。
「馬鹿!お前骨折してるだろ」
「……俺は決めた。どれだけ自分が辛くても、夢玖さんを守るって…だから俺が夢玖さんを車に乗せます」
「夢玖……さん?」
「別に…その………好きな人を下の名前で呼びたいのは、当たり前でしょ」
「ま、まぁ……夢玖ちゃんお家まで頑張ろうね〜!廉命君、お願い。行くよ」
「(頭がぼんやりして、夢の中におるみたい…でも腕の中の廉命さんの温かさに少し安心する…)」
─夢玖ちゃんを片腕と肩で器用に抱き寄せ、私達は福島空港を後にした。ひたすら苦しそうにしている夢玖ちゃんは、廉命君の腕の中で眠っていた。
「はぁ…はぁ……」
「如月、あと少し頑張れ」
「けほ……頭痛い……」
─何とかマンションに着き、エレベーターで私達の部屋まで来れた。希望君が部屋の鍵を開け、私のベッドに夢玖ちゃんを寝かせたついでに体温を測るとまた熱が上がっていた。カロナールを飲ませ、父て電話で事情を話した。
<舞姫…こんな時間にどうした?残務でもあったか?それとも私に会いたくなったか?それなら…>
「お父さん大変。夢玖ちゃんが講演中に凄い熱出して、今家で看病してるの」
<何だと……熱は何度だ?如月君は元々風邪を引いてたのか?>
「さっきは四十度だったけど、今測ったら四十二度……希望君に聞いたら急に高熱出たって…とりあえずカロナール飲ませて様子見てるけど、良くならなかったら病院連れてくね」
<いや、今すぐ連れてきなさい。体温が四十一度を超えると、体内のタンパク質が変性して、臓器の機能不全に陥る危険性があるんだ>
「そんな……!」
<だが応急処置としてはよくやった。日勤明けで悪いが、如月君を連れてきなさい。私が見よう>
「うん…!あ、さっきのでガソリンほぼ無くなってたんだった……」
<そうか…出張終わりの希望君も、日出君も運転が難しいだろう……よし、今彼を呼んだ。あと五分で着く>
─何と、今すぐ受診の必要があるようだったが、希望君達を迎えに行ってた時に、ガソリンスタンドに寄るのを忘れ、南北北病院まで向かえなくなった。ちなみに希望君の車は車検に出してるので近くに無く、それに出張終わりの希望君や、骨折してる廉命君も運転が厳しいことで困惑していた。が、父は誰かを向かわせてることを言い、通話を切った。
「舞姫、院長なんて?」
「それが…今の夢玖ちゃんは受診が今すぐ必要だから、南北北病院に来てって……それにね、希望君達のお迎えでガソリン切れちゃった…でもお父さん、誰かここに呼んだみたい」
「誰だよ……如月心配だなあ…」
─一通り希望君に話して、父が呼んだ人を待っていた。五分くらい経過した時、インターホンが鳴り、ドアを開けた。
「雷ちゃん、なした?」
「如月さんが危ないし、舞姫さんの車が燃料切れだから迎えに…って院長に頼まれたんですよ」
「雷磨さんすみません……今日の夕方から急な高熱四十度、今測ったら四十二度でした。カロナールは飲ませました」
「分かりました。それでは皆さん…行きましょう」
─雷磨さんだった。彼に簡単に夢玖ちゃんの病状を伝え、皆彼の車に乗り、南北北病院へ向かった。助手席には姉が座っていて、夢玖ちゃんの病状に驚いていた。
「夢玖ちゃん…見ても分かるくらい凄い熱なのね…何度なのよ?」
「それが…四十二度なの。お父さんに電話したら四十一度以上は危険って」
「what!!You're kidding... You won't die, right?」
「いや英語で話されても分かりませんよ!四十一度以上の高熱は危険です。臓器の機能不全に陥る危険性もありますから……」
「そんな……夢玖ちゃんの容態が変わったら私はお父さんに電話するわ。廉命君は夢玖ちゃんの擁護、舞姫と希望君は計温と意識の確認をお願い」
「いや、もしかしたら電話は繋げておいた方がいいかもしれません……行きましょう」
─運転席と助手席には雷磨さんと姉、二列目の座席は希望君と私、そして一番後ろの座席は廉命君と夢玖ちゃん─。安全運転で南北北病院に向かった。本来なら福島空港から南北北病院までは車で五十分ほど掛かるのにも関わらず、雷磨さんはそれでも車を飛ばしたのだ。
「意識はあるけど、酷い熱……夢玖ちゃん、寒くない?」
「いや…まだ寒い……けほっ」
「でも毛布がこれしか…いや……俺のコートも…どう寒くない?」
「うん…」
「廉命君ナイスです。それで暫く様子見ましょう」
「本当に身体が熱い……でも汗かいてる…」
「よし、それならこれ…廉命君手怪我してるから、保冷剤沢山持ってきたの!保冷剤を首や脇の下、太腿の付け根とかに当てて!」
─熱は少しだけ下がったのに、夢玖ちゃんの顔は真っ赤で、苦しそうだった。
「はい。夢玖さん…ちょっとごめんね」
「あ……んん……あんっ!」
「熱四十一度五分……かよ」
「もうすぐで病院、着きます」
─二十分後、その頃は四号線がガラ空きだった為、雷磨さんが違反ではない八十キロのスピードで車を走らせたため、二十分で着くことが出来た。そして廉命君が夢玖ちゃんを抱き上げ、病院へと急いだ。すぐに彼女は集中治療室へ運ばれ、五分後には点滴が打たれていた。
「えー、如月夢玖さん十九歳。急な高熱で緊急搬送…」
「点滴用意しろっ!」
「夢玖ちゃん…しっかり!」
「如月さん、聞こえますか?点滴打ちますからね、失礼します」
「うう……けほっ!」
「この状態だと…熱射病だろう……札幌は寒かったはずだが…?」
「多分…今日の会場は二重窓だったような…あと暖房も付けられてました」
「それが原因だと思われるな…西日本の冬は暖かいからな…北海道の寒さに体が適応出来なかったのだろう。しかし、如月君、よく頑張ったな」
「けほ……うう……」
「熱射病は熱中症の中でも最も重篤な病なんですよね?」
「あぁ。とりあえず点滴は打って、電解水や補給水で水分補給させているが……飯は食えるのか?」
「今の夢玖ちゃんは…ゼリーも厳しいかも……飲み物で栄養補給なら出来そうだけど…」
「なら、飲むヨーグルトとかが明確だな。よし、入院準備に移ってくれ」
「わかりました。では如月さん…病室に移動しますよ」
「(如月…俺達の為に体調悪いの黙ってたなんて……)」
「(夢玖ちゃん……お義姉ちゃんとして、治ったらよしよしするからねっ!)」
「如月さん、空調どうですか?」
「……かま…へん」
「点滴の位置、ナースコールの位置も変えますねー!」
─何と、熱中症で最も重篤と言われてる熱射病だった。先程よりは少し落ち着いてきたが、夢玖ちゃんはまだしんどそうだ。少しでも栄養を─と思ったが、飲むヨーグルトしか彼女は摂ることが出来なかった。
「まあ、今晩…いや、暫く入院して様子を見よう。暫く熱が続きそうだ」
「私、夢玖ちゃんの着替えとか化粧品とか充電器とか持ってくるわ!」
「僕は福吉さんや兄貴に電話します……希望君達は、如月さんの傍にいてあげてください」
「分かった……如月、お前……よく頑張ったな。飲むヨーグルト、置いとくからな」
─夢玖ちゃんは暫く入院することが決まった。父曰く大体一週間くらいらしい─。それに高熱なのか思うように体を動かせなく、姉が彼女に飲むヨーグルトを飲ませる。何とか栄養補給が出来て、胸を撫で下ろしていた。
「ん……」
「夢玖ちゃん…よく頑張ったわね…ぐすっ」
「…………」
─この入院で、夢玖ちゃんの新しい挑戦も始まる──。
……To be continued
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