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普通を失った俺が、世に希望を与えるまで。  作者: 速府左 めろ
<第二章>地を踏む一歩が、希望な意図となる。〜日本列島出張編〜
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でっかいどう

この度は閲覧頂きましてありがとうございます!

「よし…ってあれ?如月…?」

「あー、如月さんあっち。青森のアップルパイ買ってるよ……しかもなんか困ってるみたい」

「どおりでいないと思ってたけど…本当だ。何してんだべ」


─翌朝。俺達は新青森駅の中で新幹線を待つ間に、お土産屋の周りでお土産を調達していた。黒にんにく煎餅や青森りんごのお菓子なども買っていた。廉命に関しては、味噌カレー牛乳ラーメンや煮干しラーメンの袋麺やカップ麺も買っていたのだ。どんだけ食べるんだ─この大柄な男は。

─が、その向こうにはレジ前で揉めてる如月が見え、俺達は近付いた。


「わ……なば、好ぎだっ!嫁ざ…なっでぐれ!」

「嫌です…私には心に決めた人が居るんです…」

「いやぁ…白くで細いこごつじゃ…めんこいのお…」

「やめてください……そんにゃ…触らんで」


─何と、レジを担っていた男が、如月に一目惚れし、大勢の人がいるにも関わらず、如月に告白してきたのだという─。流石に如月は告白に断ったが、それでも男はしつこく如月に好意を示している。この場面を、俺達は見過ごせずにいたのだ。特に廉命が────。


「やめろよっ!困ってるべした!」

「おめにゃなんもね…下がれ、ほんずなし」

「っ…!」

「俺らより年上だからっておだつなでっ!このおなごは俺のもんだっ!俺の嫁さんに近付くなでこの…あんぽんたんが…」

「廉命…さん…」

「このおなごさ触れたの見てた…俺許さねぇ…表さ出ろ…くらすけっぞ」


─その後、レジの男は事務所に通され、めちゃくちゃ叱られたらしい。その代わり、青森のアップルパイの代金は無料になった。

─というか今思ったのだが───廉命が福島弁話すのは、壊滅的に似合っていなさ過ぎた。院長の次くらいに─。廉命の圧に周りは静まっていたが、数分したら再び賑わいが戻った。


「ほら嬢ちゃん…これも持っていきな」

「何や…?りんごジュース…?」

「青森のりんごジュースはうんと濃厚なんだ」

「よく見るりんごジュースとは桁違いや…思った以上に濃厚や…」

「青森はりんごだけじゃないんだ。煮干しラーメンに味噌カレー牛乳ラーメンも、大間まぐろも八戸前サバもホタテもヒラメも最高だよっ!」

「にゃああああ……青森の海鮮…想像しただけで頬が落ちそうやわ…ゴロゴロ」

「流石東北の最北端……新幹線までまだ時間あるし、せっかくだからラーメンか魚でも食うか?」

「それなら!ぬえって店がおすすめだよっ!新鮮な海鮮料理もラーメンもあるんだっ!」


─俺達は青森のお土産を大量に調達し、新幹線口付近にある、青森名物の飲食店へと向かった。

─俺はホタテカレー、如月はホタテの貝焼みそ定食、廉命は桜鍋定食と煮干しラーメン大盛りを頼んだ。


「短い時間しかいれなかったけど、青森楽しかったな」

「ね。流石にあのクソジジイにはムカついたけど、色々食べれて良かったよ。特に桜鍋…また食いたい」

「廉命って…意外と魚嫌いだよな」

「だって骨が舌とか喉に刺さって痛いんだもん」

「だからって……如月、あれ?」


─飯を食べ、俺達は新幹線の改札を切ろうとしていたところに、途中まで一緒に歩いていた如月がいなく、振り返ると、あるものに夢中でその場から動いてない如月がいたので、俺達は彼女の手を引こうとした。


「如月…あ、これねぶただべ」

「これねぶた言うんか?どんな感じなん?祭りなん?」

「んだ。元々夏の疲労や睡魔を追い払う眠り流しという伝統行事から発展したもので、津軽弁の眠いを表す言葉と結びついてねぶたって名付けられたんだ」

「へぇ……お神輿で担ぐん…肩壊れそうやな」

「ねぶた祭りは毎年八月にやるんだ。東北三大祭りの一つだよ」


─そう。新幹線改札内に展示されたねぶただった。ねぶた祭りは、仙台七夕祭り、秋田竿燈祭りに並ぶ、東北三大祭りの一つとも言われている。

─俺も高校生の時、煌星一家と青森旅行に行った時に初めてねぶた祭りを見たのだが、あの時見た景色や衝動は今でも忘れられない。

─と言っても、その時の俺は車酔いで気分が良くなく、ベンチに座って見てた。それと帰りの車にて、数十メートル進んでは車を停め、吐いての繰り返し─そして、我慢出来ず院長の車で吐いてしまい、車も舞姫の服も汚してしまい、院長は車を買い替える羽目になった。


「よし、写真撮ってから、青森とお別れだ」


─俺達は、ねぶたの前で写真を撮り、北海道行きの新幹線に乗り、青森を後にした。


「ついに…日本の最北端に行くんやな…私達」

「あぁ。しかも新函館北斗からまた札幌まで二時間くらい掛かるんだ」

「嘘やろっ!北海道とか北東北って…ほんまに田舎やん…大阪から神戸も京都も快速ですぐ行けるのに…でも、本場の海鮮は忘れられへん!あのおじさんは嫌やったけど、青森の海鮮とりんご、ほんまに美味い!」

「まあまあ…そういえば北海道新幹線よく予約出来たよなぁ…福吉さんすげぇ」

「だな…札幌着いたら電話してみようぜ。とにかく乗るぞ」


─新幹線が動いて三十分ほど、青森の最北端を通過し、北海道─つまりアイヌの土地へと俺達は移動していた。


「北海道といえばジンギスカン…あとソフトクリームやじゃがいも…あとチーズもラーメンも美味いよ」

「うにゃああああっ!もう想像しただけで涎が…」

「汚ねえな…気持ちは分かるけど、俺達は遊びで来てるわけじゃないことを忘れるな…まあ、牛乳だけで作ったソフトクリーム、あれば俺も食いたいよ」


─かれこれ北海道の食べ物について語り合うとあっという間に新函館北斗に着いた。何とか在来線に乗り換え、札幌まで辿り着けた。ホテルにチェックインし、部屋に入ると俺達は即座にベッドに飛び込んだ。


「ふぅ…疲れた……腹減った…」

「よし、ジンギスカン食いに行くべ」

「ジンギスカン……って何や?」

「羊だよ。北海道でジンギスカンは有名なんだ。柔らかいし、食べやすいよ」

「よしっ!行くべっ!」


─何とか体を奮い立たせ、ジンギスカンを食べにホテルを後にした。そこは札幌では眠らない街と言われている、すすきの通りに位置していた。そこは札幌でいう、眠らない街だった。その時の空は闇に染まっていたので、仕事終わりのサラリーマンやOL、学生も多かったが、キャバ嬢やバニーガールの格好をした女性も多かった。


「うわぁ…今までにないほど、カオスだな」

「札幌ビールの看板も…てかあの建物自体光り過ぎてて眩しい…札幌も、呑み屋多いな…」

「Boogleマップによると…ここだ。てか近いな」

「エレベーターで来る感じか…羊のお肉食べたことなかってん…緊張しとる」

「猫も羊食うのかなぁ…?まあ、俺も食えなくはないから、行くべ」


─何とか暗い街に溶け込み、店まで辿り着いた。その日は平日だったので、かなり空いていたのでスムーズに座ることが出来た。メニュー表を見てすぐに廉命は涎を垂らしていた。めちゃくちゃ汚かった。


「ラム肉もある……マトンも……っ!」

「へぇ…ラムは子羊…マトンは大人の羊の肉なんや……マトンの方が歯応えも独特な獣臭も強いんやな」

「俺羊食ったことねぇよ……焼肉のタレで食うか。よし頼むぞ」

「なあ生野さん!見てや!焼肉の網が…丸いでっ!」

「それは肉の脂を鍋の外周に落として野菜の味付けに利用するためなんです。ジンギスカンは、一緒に合う野菜を食べることで、更に美味しくなります!」

「へー…さすが北海道……そうだ。俺達、明日講演あって札幌コンサートホールってところに行きたいんすけど…」

「それなら!札幌駅から歩いて、南北線に乗って中嶋公園駅まで移動して、徒歩で移動したら着きます!」


─店に来たのはいいものの、俺達はジンギスカンにて知識が乏しかったのか、本場ならではの食べ方が分からずにいた。注文しようとしたら、店員がジンギスカンや網について教えてくれ、さすが北海道だと分からされた。

─ジンギスカンは、かぼちゃや玉ねぎ、ピーマンやもやし、キャベツ、きのこ類と相性が良く、鍋の中心から落ちた肉の脂が野菜と絡み合って、臭みもなくなって美味しいのだとか。

─ついでに俺は聞いてみた。明日の講演会の会場への行き方を。


「ホテルからも近い……あざますっ!」

「いえいえ……私、明日友達と講演会行くので!」

「ほんと……?」

「はいっ!生野さんが頑張って病と向き合いながら、沢山の人に生きる希望を与えてるって……」

「っ!」

「ふふっ。ほんまに有名人やなぁ」

「あとは…あなた達の過酷な過去も知って、更に生野さんが届ける、生きる希望が引き立つの」

「………ありがとう。明日、楽しみに」


─彼女曰く、札幌駅から歩いて南北線で中嶋公園駅まで行き、そこから徒歩九分程で着くらしい。改めて礼を言うと、彼女も明日の公園に行くと話してきたので、嬉しくなった。


「んにゃあ〜!ジンギスカン…美味いわぁ」

「(可愛い…)」

「あのジジイ……ほら、如月さん。米粒付いてるよ」

「えっ?」

「なぁあのオッドアイの子めちゃくちゃ可愛くね?あの表情唆るわ…」

「だからっ!あんな子彼女になったら幾らでも食わせたくなるよなぁ…」

「んにゃあ〜!ジンギスカン……やっぱり野菜とも相性ええにゃあ〜!」


─その嬉しさに浸ってはいたかったものの、ジンギスカンを頬張る如月を見ては可愛いという男の客も多かった。ジンギスカンと米をひたすらかき込むと、如月の口周りに一粒の米がついていた。

それでいて廉命は耐えきれず、彼女の口元についた米粒を指で拭おうとしたが、それよりも先に顔を近付けては────。

─ちゅ、と弱い粘膜音が響き、俺と店員はその一場面を見てしまった。如月の口元についた米粒を、廉命がキスをするように唇で拭ったのだ。あまりの展開に、如月は箸を落とし、顔を赤くした。


「にゃ、な……な、何してんねんっ!」

「ごめん……でもさ、俺の"彼女"だって分からせないと」

「も、もう………責任取ってやぁ……」

「……本当にごめん。如月さん…ただでさえ可愛くて綺麗で、外に出るだけで何人もの男が振り向いたりナンパしたりするんだから。こうでもしないと俺のものだって分からせてやらないと…」

「狡いねん……ううう」

「廉命…日に日に独占欲強くなってるな…重症だぞ…」

「うおおおおぉ!一途なイケメン!しかもこの子めちゃくちゃ可愛い!」

「まあまあ…せっかく北海道さ来たんだ。めいっぱい食おうぜ」


─嗚呼やっとか、と口にしたいところではあったが、網で焼いてたジンギスカンが焦げそうだったため、急いでトングで皿に取り分けた。お陰で二人の顔は赤く、如月は片目の瞳をピンクにしていた。その夜はジンギスカンを堪能し、明日の講演会に備えるのであった。




……To be continued

閲覧頂きありがとうございました!

コメント、いいね、感想お待ちしております!

次回作もお楽しみに!では。

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