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普通を失った俺が、世に希望を与えるまで。  作者: 速府左 めろ
<第一章>希望とは。〜集われた意図編〜
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守りたい子

この度は閲覧頂きましてありがとうございます!

※修正版です!

「ああ?黒猫の正体が女子高生…?」

「そうなんだよ。なんか大阪からここまで歩いてきたんだとよ…信頼されるのにかなり気力を使ったよ……見てこれ。引っ掻かれた」

「(こん人…顔怖い……両脚にサポーターもしとる……)」

「そりゃお前チビだからな」

「えぇ…加堂さん冷たいなぁ…」


─如月の転校手続きや学校案内が終わり、如月は俺の職場に来た。院長に携帯を買ってもらったことにより、彼女と連絡が取れるようになったのだ。店に入ると俺は休憩室に通し、店長が来るまで如月と話していた。

─加堂さんが通り掛かり、一通り話す。彼にはまず例の黒猫が如月だった事を話さないといけなかったので、丁寧に話した。相変わらず悪人面だった。


「(顔は良いのに悪人面って……この人もったいねぇ…てかお前が悪人面だから如月泣きそうだぞっ!)」

「確かに猫っぽいな。名前何?」

「如月…如月夢玖だよ。高三で、今聖陵の説明会と転校手続き進めてきたんだわ」

「ふーん。ここに来たってことは…ここでバイトすんのか?」

「うん。如月には高校卒業して、社会に出た後に苦労して欲しくないからね……店長もオッケーしてくれたし」

「……まじかよ」


─如月は加堂さんの悪人面に怖がっていたのか、顔を真っ青にしていた。どうにか雰囲気を─と思ってると、福吉さんが現れた。事前に話していたからか、スムーズに対応してくれ胸を撫で下ろしていた。暫く話をしていると、遅れて店長が入ってきた。


「お、生野……この子は?妹?」

「違うよ。この前加堂さんが話してた、黒猫の正体はこいつだったの!」

「黒猫じゃないのか…加堂、怯えてるから悪人面はやめろ。名前は何だ?幾つだ?」

「如月夢玖…いいます。今年で十八になります」

「高校生か…実はここにも高校生の子いるから、仲良くしてあげな」

「ごめん遅くなったー!」


─彼の名は盾澤鳳斗。二十四歳という若さで、このスポーツ用具店の店長を担っている。雷磨の兄で、脳筋ではあるが運動神経は人並み外れて凄まじい。しかし平等に優しく、困ってる人に手を差し伸べる──運動神経抜群で優しい人だ。俺は彼をとても尊敬しており、彼にも事前に如月のことを話すと、会ってみたい、一緒に働きたいと言ってくれたので、連れてきたというわけだ。

─彼も休憩室に入り、話が始まった。


「初めまして如月さん!俺はここの店長…盾澤鳳斗。ちなみに二十四歳で弟もここでバイトしてるんだ〜」

「……若い…私は如月夢玖いいます……大阪出身です…たまたま生野さんと出会ってます」

「大阪出身かぁ…こことはだいぶ分化も違うから、この地に慣れるのに大変かもしれないけど、君は一人じゃない。安心してよ」

「………」

「鳳兄見てくださいよ……今朝こいつに引っ掻かれたんです。めちゃくちゃ痛いです…昨日めちゃくちゃ俺達のこと、警戒してたんです」

「そっか……オッドアイで結構辛い思いをしたんだってね…でも大丈夫。君のオッドアイは個性だ。とても綺麗……ここにいる人達は君を傷付けたりしない……ここで、アルバイトしてみない?」


─お互いの自己紹介、そしてアルバイトの説明だった。店長─いや、鳳兄とは中学時代からの付き合いでもあるが、その真っ直ぐな桜色の瞳は変わっていない。アルバイトをしてみないか、という質問を如月に投げたが─如月は黙っていた。アルバイトは接客もするのだから、大人に慣れてない如月には少し早過ぎるだろうと思っていた。そして、答えが出た。


「………やり、ます」

「ありがとう。アルバイト初めてなんだって?最初は怖いかもしれないけど、大丈夫。俺達が、何度でもサポートするから」

「……はい」

「よし!決まりだね」

「(レジの音怖い…うち、ちゃんと出来るんかな)」

「良かったなぁ……そうだ、せっかくだし如月の歓迎会しません?」

「いいね!予定合わせてやろうか……如月さん、焼肉と寿司と言ったらどっちが好きかな?」


─初めてのアルバイトに挑むことを、口に出して話してくれた。俺と鳳兄は嬉しくなり、ハイタッチをした。そのついでに如月の歓迎会を開こうと提案し、店も決まった。本当なら回転寿司にしたかったが、どうせなら如月の好きなものを食わせたいと思ったのか鳳兄が聞いてくれたので、スムーズに決まった。

─しかしほとんどの飲食店に行ったことがなかったので、鳳兄に如月にとって昨日の焼肉が初めてだったことを言うと、彼は驚いていた。


「……あの、私…焼肉行ったん昨日が初めてなんです」

「マジか!」

「しかもアックも初めてとか昨日言ってました…」

「嘘……よし、如月さん…何が食べたい?」

「お好み焼き……麺が入ってないやつ…です」

「関西人だから、やっぱりたこ焼きとかお好み焼き大好きだよねぇ…分かった!予約しよう」

「おおきに……ここの人達、よう見たらイケメン多いし、優しい人も沢山おる…怖いなぁ」

「まあね…初めて、かぁ……これからもっと楽しい初めてが沢山あるからね。ここは君の居場所になる…」


─その日はアルバイトの説明や、如月のことを話し、そろそろ帰ろうとしてた時、廉命が来て彼の仕事が始まったのだが──挨拶がてら休憩室に入ってきたのだが──如月を見た瞬間、すぐに出ていき、慌てて売り場に行った。


「ふわぁ…おはようございま……えっ、ちょっ…き、如月さん? !」

「おう廉命。実は明日から新しく彼女がアルバイトとして入るから、色々力になってくれ」

「…………」

「おい…こいつ顔真っ赤だぞ?」

「(制服姿も可愛すぎ…っ!何だこの守りたくなるような気持ちは……っ!いや別に俺は…)」

「昨日の焼肉で、如月のことが…」

「なるほど。いやぁ…甘酸っぱいねぇ」

「と、とら、とりあえず俺…売り場行くんで!」


─昨日から廉命は、如月を見ると顔が真っ赤になり凄く戸惑うようになる。これも恋の症状の一つかもしれない。だが、如月にはそれが分からないようで、俺達に聞いてきた。


「廉命さん…顔真っ赤やってんけど…」

「まあ…恋だよ。恋」

「恋…?魚のことやんな?」

「そっちじゃないよ。まあ如月さんにはまだ早いんじゃないかなぁ?あの廉命が恋かぁ……あいつ超絶イケメンだしお似合いだと思う」

「………」


─恋についても分からず、如月はひたすら頭を悩ませていた。そうか─初めての恋。まあ、今は学校とアルバイトに慣れさせなくては─そう思った。

─その日の夕食は、関西風のきつねうどんだった。如月は猫のように喉をゴロゴロと鳴らしながら、美味しそうにうどんを頬張った。


「関西風のうどん作ってみたけど…どうかな?煮干しと昆布、鰹節もいるんだね…あとサバ節も必要だったけど……なかったから鯖も茹でて出汁を取ってみたの!どうかな?」

「………ええ匂い…懐かしい味や」

「ふふっ。食べてみて……他にもね、夢玖ちゃんに教えたいことも沢山あるの…だからあなたは……私達にあなたのことを教えて…ふふっ」

「……はいっ!」


――――――――――


「ふぅ……あの子、明日から新しく入る…のか」

「それならほぼ毎日会える…」

「………本当に俺、あの子のことが好きに……いや、俺はやっと解放されたんだ。あの地獄から」


─バイトから帰ってきて、シャワーを浴びてドライヤーで髪を乾かしながら思う。本当に俺は、如月さんのことが気になって気になって仕方ないことを。

─昨日あの笑顔を見たんだ─そりゃあ惚れない理由もない。恋って認めたくないのに、昨日からずっと頭の中は如月さんのことばかり。

─でも信じられない。あの地獄を経た俺が恋するなんて───


『父さん、俺学年一位だったよ!』

『あ?全教科満点じゃねぇじゃん…ふざけてんのか?』

『違うよ……今回のテスト難しかったんだよ』

『ふざけるな!お前は東大に行くんだから、全教科満点じゃないと意味が無いんだよっ!』

『いい?順位よりも全教科満点じゃないと東大に入れないわよっ!部屋に戻って勉強しなさいっ!出来損ないが…っ!』


─俺は日出家の長男として生まれ、物心つく前から勉強させられた。朝昼晩問わず、休む時間もなく勉強させられた。テストで満点を採らないと暴力暴言を受け、九十点代を採ると家から追い出されていた。そう。全ては両親の望む東大に入るため。

─俺の両親は学歴主義で、東大卒で県内の大手企業に勤めているが、プライドや歪んだ学歴主義により、パワハラが続いたため、中小企業に職場を移されたのだ。俺の学力を上げる為なら手段を選ばず、俺から自由を奪っていった。


『部活辞めさせるなよ…ふざけんな!』

『あら…感謝しなさい。勉強する時間が増えたんだから』

『そうだぞ。お前は生まれてまだ一回も満点を採ったこともないからな……いいか?お前は日出家の長男…東大に入って医師を目指すんだ。いいな?』

『ただいま…』

『おう翼……テストを見せなさい。満点じゃないと…分かってるな…?』

『…………はい』

『ちょっと!満点じゃない……なんでこの問題も分からないのっ!満点じゃないと意味が無い…この出来損ないがっ!死ねっ!』

『危ないっ!』


─そして高校三年生のある日、俺は学校、トイレや風呂以外の移動は許されず、ひたすら勉強させられた。分からない問題があると暴力暴言を受け、何時からか心はボロボロだった。

─でもある日、一人目の弟がテストで満点を採れなく、怒った母が包丁を取り、切り裂こうとした時、俺は弟を庇ったことで、顔に大きな傷が出来たのだ。それ以降も弟達を両親から庇い続け、心だけではなく、体にまで傷が出来てしまった。


『あの…お母さん?廉命君は体育学部を…』

『いいえ。うちの息子が望んでることです。東大受験させます』

『…ふざけるな!俺は東大になんか入りたくないっ!』

『日出……』

『いや…あなたは日出家の長男……東大受験に失敗したら…分かるわね?』


─月日は流れ、そして東大受験が終わり、合格発表もあった。当然俺の番号はなかった。後で知った話だが、学力検査は合格だった─しかしこのケロイドや傷が遺ってる顔が、大学の雰囲気を悪くする、心配という理由で、俺は東大受験に落ちたらしい。

─その頃には何も考えてなく、重い足取りで帰宅した。帰宅すると玄関に両親が仁王立ちしていて、父は俺を殴った。当然、怒っていた。


『東大受験に失敗した……死ねっ!』

『出来損ないが……お前は日出家の人間ではないっ!勘当だ』

『(もう…全部どうでもいいや…)』

『…兄貴…っ!』

『兄ちゃん……っ!』

『(そういえば…今日まで何でこのクソみたいな時間に耐えられたのか分かった……翼や龍がいたから、か……)』

『もうあんたの顔見たくない……!』


─親が望んだ東大受験に失敗し、俺は両親と勘当することになった。それと同時に、自分にはもう生きる理由がないと思い、受験が終わり、年が明けたある日、俺は高校の屋上にいた。そこに影食夜海がいたが、俺は変わらず屋上の柵に脚を掛けていた。この先に行けば─俺はこの地獄から解放されるのだから。


『廉命君…?何してんの…?』

『夜海、もう俺は……死ぬよ。もう辛いんだ』

『そんな……っ!』

『担任の先生には…世話になったことを伝えてくれ』


─嗚呼、自分は生まれてこなかった方が良かった─そう思い、俺は屋上から飛び降りおうとした。しかし─俺の自殺を止める人がいた。


『ふん〜っ!ちょっと君も手伝って!』

『はいっ!』

『はあ……はあ……お前ら…何でっ!』


─死ねなかったことに怒り、その彼に怒った。何故死なせてくれないのか─もう俺には生きる理由もないのに─そう彼に問い詰めると、彼は俺に平手打ちをした。そして、俺を抱き締めてくれた。


『馬鹿なのかよお前……っ!あ、お前…廉命?』

『誰あんた……いてて…』

『俺は生野希望…去年卒業したOBだよ。屋上で昼寝しようとしたら、たまたまお前が飛び飲むのを見たから、放っておけなくて助けたんだよ…その、辛かったな』


─その瞬間に、十八年間抱えてた過酷な勉強の時間、そして俺だけが見てきた地獄を、全て泣きながら彼に話した。話し終わる頃には、顔や心が、涙でぐちゃぐちゃだった。それからのことは覚えていない。彼に出会って─今こうして、初めて好きになった子がいるのだから──。


「……如月さん、かぁ…制服姿も可愛かったなぁ……」

「…生野さん、あんたのお陰で俺は…大切な人に出会えた……ありがと」

<お疲れ〜。どうしたの?>

「夜海…如月さんどうだった?」

<めちゃくちゃ可愛い子だった……大阪出身で関西弁も似合ってて…>

「だよな……なんかさ、その子と距離近付けたいなって…」

<もしかして恋しちゃった?ふふっ…これから忙しくなりそう…仁愛ちゃん、恋愛相談のプロだし今度話してみなよ>


─如月さんからどうしても目が離せない。出会ってからずっと彼女のことで頭がいっぱい─この衝動を抑えたく、俺は夜海に電話をした。


「べ、別に如月さんのこと好きではないし……その、なんとなく一緒にいたいなって…」

<付き合うは別として、もしかして廉命君のマンションに呼びたいとか考えてない?>

「はぁ、ば…いや、その……別に二人きりになりたいとかじゃねぇし…あの子、めちゃくちゃいい匂いもするし…」

<めちゃくちゃ大好きじゃん…>

「別に、その…目が離せないだけだよっ!まだ好きじゃねえし…」

<よし、とりあえず明日…夢玖ちゃんの写真送るから>


─その後色々弄られ、彼女との通話を終えた。歯磨きもしてベッドに飛び込む。もし─如月さんが隣で寝てるとするなら──とか、彼女が風呂に入っているのを想像してしまう────。嫌だ、この気持ち─知らない。知りたくない。

─でも一つ思うことがある。二人の弟を守るために傷とケロイドだらけだった俺が、今度は守りたい子に出会ったのだから。あの日、希望さんが俺を救ったんだ─だから今度は、好きになったあの子も守らなきゃいけないのだから。



……To be continued

閲覧頂きありがとうございました!

コメント、いいね、感想お待ちしております!

次回作もお楽しみに!では。

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