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普通を失った俺が、世に希望を与えるまで。  作者: 速府左 めろ
<第二章>地を踏む一歩が、希望な意図となる。〜日本列島出張編〜
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あなたという旅路

この度は閲覧頂きましてありがとうございます!

「よし、今日は私も舞姫も博多に用事がある。希望君達も用事があるが…愛はどうする?」

「私は皆の用事が終わるまで…映画とか行こうかしら」

「そうか。今夜は博多駅で合流して、呑みに行こう。あとは中洲で麺でも食うぞ」

「よっしゃ…博多ラーメン食える!希望さん、早く行きましょう」

「待てよ…流石旅館の飯……美味い!」

「だろ?日田や別府、大分で採れた野菜とかを使ってるからな」


─別府温泉の旅館で朝食を摂っている時、院長が予定を話し出した。あとから聞いた話だが、舞姫と院長は医療チームの応援として出張のために九州に来たらしく、愛先生は有給を使って付き添いをしてる感じらしい。

─さすが日本三大温泉─別府。地元の野菜や魚を使ったおかずが美味い。特にちりめんじゃこが、俺は好きだった。


「愛、気を付けてな」

「えぇ。皆も気を付けてね」


─この日は俺達は博多での講演、院長と舞姫は医療チームの応援として用事があったため、別府温泉で解散した。特急で博多駅に向かい、そこからタクシーで会場に足を運んだ。


「よし…軽く打ち合わせしよう」

「うす」

「今日は命と繋がりについて話す。如月はプリント配り、廉命はパワーポイント操作を頼む」

「はい」

「うす」

「ここまで来れたんだ。今日も最高にしよう」


─軽く打ち合わせをし、用意された弁当を食べ、休憩してその後、講演が始まった。その日は平日だったが、小学生の子どもや中学生も多かった。でも構わず俺は、マイクに話した─。


「俺は最初、白血病により幼稚園や学校に通うことも困難で、孤独でした……そして、見舞いに来てた両親も蒸発し、天涯孤独だと思ってました」

「……」

「ですがある日……俺の闘病生活に転機が訪れました…それは中学…いや、小学一年の春、東日本大震災により、ある女の子に、一目惚れしてしまいました」

「……………」

「何と、担当医の娘であることを知り、中学で再会し、高校で付き合うようになり、気付けば似たような境遇の仲間も出来てました。そして婚約してる今に至りますっ!」

「……」

「なので…どんなに辛かろうと、必ず手を差し伸べてくれる人は現れます…もしまだいなかったら…俺が皆さんに手を、差し伸べますっ!命はお金では買えません……。どうか皆さん、命を大事に」

「ぉぉぉぉっ!」

「ぐすっ……ヒック…」

「(子供たち多い……にしても、繋がりって凄いよなぁ)」


─講演会は大好評だった。少しの打ち合わせを終え、会場を後にする。博多駅に向かおうとすると、俺を待っていた子どもが俺に抱き着いてきた。


「おっ……さっきの講演、見てた子?」

「もう見つけた…いやぁ…さっきの講演めちゃくちゃ良かと…この子、お兄ちゃんみたいになりたいって言ったとね」

「……そう、すか。なれるよ。俺みたいに」


─俺はその子どもの頭を撫で、その親子と別れた。携帯のマップを見ながら院長の話してた待ち合わせ場所に向かった。舞姫が俺の姿を見ると俺を抱き締めてきた。


「希望君…お疲れ様。夢玖ちゃんも廉命君もお疲れ様」

「おう希望君…講演会良かったぞ」

「うん…ぐすっ……嬉しかった…」

「ええっ!聞いてたんすか…」

「実は早めに終わってな…せっかくだから内緒で見てこうとなったんだ」

「希望君凄かったわよ〜!お疲れ様。お父さん、お店…予約してあるのよね?」

「あぁ。福岡はラーメンや明太子、うどんだけではないぞ……まあついてきなさい」


─どうやら早めに用事が終わったらしく、こっそり俺達の講演を見ていたらしい。だが、舞姫に想いが届いて良かったとも思えた。舞姫が俺の手を繋ぎ、皆で院長の後についていった。


─着いた場所は、店の外観が金色でとても目立っていた。院長が店員に話し掛け、俺達は個室に通された。


「博多は呑み屋が多いんだ。それに福岡は焼き鳥も有名だ。私がおすすめする居酒屋で呑もうじゃないか」

「それなら私、まずはハイボール頼むわ。舞姫はお酒飲む?」

「うん…私は、ウーロンハイかな」

「私は生ビール。見ろ…居酒屋にはない珍しいメニューだらけだ…もつ鍋もいるか?」

「おぉ…馬肉の肉寿司に牛タンハンバーグ…タコの炙りにんにく添え……どれも美味そう…」

「よし、遠慮なく楽しんでくれ」


─その夜は皆で呑み、楽しんだ。

─店のメニューはどれも美味く、絶品だった。

─中でも、舞姫が食べさせてくれたもつ鍋が、美味かった。


「馬肉…美味い……ズリやもも、あと野菜巻きも…」

「日出君は相変わらず美味そうに食うな…如月君、飯の用意大変だろう」

「はい…でも、幸せです。なんか、奥さんみたいで…」

「ふふっ。二人もそろそろ付き合うのね…」

「二十歳になってからの約束なんで…まだ……」

「つくねも美味し〜!ん〜♡」

「舞姫、口にタレ付いてる」

「ん…あ、ありがとう」


─個室で良かったと思えた─。俺の気も知らないで、舞姫が凄く美味そうに食べるから─。その顔を他の男に見られたくないと思ったから─。

─彼女で白い口元に付いてるソースを、親指で拭った。すると彼女は少し顔を染め、ウーロンハイを一口含んだ。


「……愛先生、お酒って飲むとどんな感じなん?」

「大人の気分になるのよ。でもお酒弱い人は顔が真っ赤になったり、あとは酔って可愛くなったりもするわね…ふふっ」

「二十歳になったら、皆で酒を飲もう」


─小さな一口で焼き鳥を頬張る舞姫。一口飲み込むと、俺の手を掴み───そして、俺は凄く柔らかいものを掴んでしまった。むにゅという音が聞こえるくらいに、そして片手では掴みきれないボリュームだった。恐る恐る目を開けてみると、舞姫が俺の手を、自分の豊満な胸に押し付けてたのだ。


「………希望君」

「はっ!(え、ちょっ…舞姫っ!てか…柔らか……デッカ……)」

「ふふっ。つーかまえた♡」

「舞姫…もしかして…」

「酔っちゃった……ふふっ」


─手を重ねられ、俺の手が舞姫の胸を揉んでいる。凄く柔らかい─これが、H─いや、Iカップ。片手から溢れる胸、そして酔って頬を赤く染めた舞姫。この状況から俺はどうすれば良いか分からずにいた。


「私ね……最近Iカップになったの…」

「………」

「舞姫…茄子の野菜巻きも来たわよ!あと水飲んで…」

「お姉ちゃん……ふふっ。可愛い♡」

「舞姫さん…酔うとこんな感じなんや……」

「うん……舞姫の場合、お酒飲むと甘えん坊になるの」

「舞姫…やめないか……希望君鼻血出てるぞ」


─この後のことはあまり覚えてなかったが、院長が選んでくれた店の料理は皆美味しかった。舞姫はまだ酔いが冷めてないままだが、俺達は博多ラーメンを食べるために、中洲へと向かった。

─中洲は博多の繁華街とも言われてるが、院長の案内によりスムーズにラーメンを食べることが出来た。


「ここが中洲…繁華街でもあるが、屋台も多い。屋台で食うラーメンは一味違う」

「ん〜!やっぱり本場は最高ね〜!」

「そういや院長……地元の九州にいるのに方言話してないっすね」

「そういえばそうだったな…どうだ、九州は?どの飯も美味かばい…懐かしいたい…舞姫が中学三年の夏に来た時、希望君と舞姫が人混みで逸れたとって…帰りにここでラーメン食べたことを…思い出したばい…」


─その日は院長が方言で思い出を語りながら、ラーメンや博多うどんを堪能し、別府温泉に戻り、夜を明かした。

─こうして今、廉命も如月もいることで、俺達のかけがえのない記憶は上書きされていった。


――――――――――


「ふわぁ……おはよう。皆」

「おはよう…お父さん…」

「おはようございます…院長」

「おはよう。今夜は佐世保に集合たい。長崎の夜景も見て、佐世保バーガー食べよかと……愛が提案したったい」

「そうよ……効率的に九州を楽しむ…お父さんと話したのよ」


─翌朝、俺達は旅館で朝食を摂り、別府温泉でまた解散した─つもりだった。


「希望君…実は明日の熊本で……私達は福島に帰るたい。言いそびれてたったい…済まない」

「いえ…その……ありがとうございます。院長のお陰でここまで来れたんですから…」

「そうか……ありがとう」

「となると明日はどう動く感じすか?」

「そうたい……今日は佐世保で医療チームの応…そして明日は熊本で水俣病の勉強会に入るばい…つまり、明日の夜、熊本で私達はお別ればい」

「…………院長」


─何と、院長とは明日の熊本でお別れだと告られた。そして俺達はまた──別府温泉で解散した。

─別府駅から博多駅に向かい、そこから特急みどりで佐世保に向かった。


「ここが佐世保……空気が美味い」

「せやな…目の前に港ある…神戸とはまたちゃうなぁ…」

「ここが長崎……か。信じられない…俺達がここで講演するのを」


─移動して三時間だろうか、ようやく佐世保駅に着き、中央口を出ると、目の前には海が広がっていた。ネットでは佐世保駅は海の見える駅、で有名らしい。

─昼にちゃんぽんを食べてから、タクシーを使い、俺達は佐世保文化会館へと向かった。


「俺がシューフィッターを選んだ理由…それは…誰かにバトンを繋げるためです。ランニングシューズには……」

「……ぐすっ」

「足裏の怪我で走りたくても走るのを諦めた方も…いると思います。でも…インソールと、走りたい気持ちがあれば大丈夫…挫けたとしても、必ず仲間が繋いでくれます…」

「……………」

「(……希望さんの言葉は…誰かを救うな…)」

「小さなことでも意味があります。その小さな一つ一つが、誰かを繋ぐのだから…」


─その日の講演も終え、俺達はタクシーで佐世保駅に向かった。タクシーの窓から見て思うのだが、長崎はあまりにも坂が多い───。

─だがやり切れたという事実を胸に、院長の元へ向かった。


「おう。お疲れ様たい…せっかくやけん…佐世保バーガーを食べてから電車で稲左山に行こう…大体二時間くらい掛かるとね」

「……腹減った…」

「空腹は最高のスパイスたい。行くばい」


─この頃はすっかり夜で、俺達は佐世保バーガーを食べた。写真よりボリュームがあり、何処から食べて良いか分からなかった。


「院長…佐世保バーガーって…何処から食えばいいっすか?」

「上から食うか下から食うか…」

「花火みたいにいうなや…偉い大きない?」

「アメリカのハンバーガーよりボリュームあるわね…」

「大人しくしとんね…最初は佐世保バーガー何処から食べたら良かとね…ってなるたい…少し押し潰して豪快にいくたい。ばり美味いけん」

「ん…っ!う、美味い!」

「良かと」


─そして俺達は、佐世保バーガーを堪能し、電車で長崎市へと向かった。駅を降りてロープウェイで稲左山へ向かった。展望台で見ると─広大な景色が広がっていた。


「うわあああっ!綺麗…」

「舞姫の方が綺麗だけどな」

「もうっ!」

「ここが…長崎……原爆落とされたとは思えへん…」

「この夜景は…日本三大でもあるんだ…目に焼き付けると良い」

「ふふっ。後で夜海ちゃん達に写真送ろう」


─この夜景を目に焼き付けるように見渡した。近くには大切な人も、家族みたいな人もいて、その人達のお陰で俺は、全国を旅するようになった─。

─いや、元はと言えば如月との出会いが、この旅を呼び起こしたのかもしれない。昨晩、舞姫が言っていた意味が分かった気がした─。


「……希望君の言葉って…人を救うよね」

「そうかもな……昨日の舞姫の言ったこと…分かった気がする」

「……うん」

「確かに、希望君がいなかったら、舞姫は生きる希望を失っていた…愛は将来のゆめを見つけられなかった…日出君は大切な人と生きる希望を見つけられなかった…如月君は未だにオッドアイで苦しんでたんだ…そして私も、医師を続ける理由も見つけられなかった……」

「……院長」

「もし希望さんが愛さんに教師勧めてなかったら、夜海は自宅監禁に苦しんでた…仁愛ちゃんも刺青やピアスに縛り続けられてた…凪優ちゃんも友達が出来ずにいた…まあ、希望さんがいなかったら、俺らはこうして出会えてなかったんだよ」

「廉命……」


─つまり、俺がいなかったら─皆それぞれが出会うことがなかったということだ。

─俺が如月と出会ってから、舞姫に誓ってから、愛さんに教師を勧めてなかったら──その末路はとても想像出来なかった。

─次第に舞姫が近付き、俺の頬に手を添え、口付けをした。


「……舞姫」

「希望君……やっぱりあなたは、希望だよね。皆の」

「…そう、かもな」

「……これからもずっと一緒にいようね、私達」

「あぁ。今世も来世でも、俺は舞姫の傍にいる」


─昨日講演したとおり、やっぱり人との繋がりは大事だと分からされた。

─院長に呼ばれ、俺達は稲左山を後にし、長崎駅付近で夕飯を食べた。


「院長…長崎って、佐世保バーガーとカステラ以外何が有名なんすか?」

「よくぞ聞いてくれたばい…レモンステーキやトルコライス、角煮まんじゅうや皿うどんばい」

「トルコライス…ピラフにカレー、とんかつやナポリタンが合体したもの…廉命君にピッタリね」

「レモンステーキ……」

「どれも美味そうだな…帰りにカステラ買ってくべ」


─俺達は長崎の名物を堪能し、その日は佐世保で一泊した。

─この旅が、俺の一つ一つ─存在を教えてくれた。長崎のあの夜景で、舞姫の黄緑のような瞳の色を─見つけた。

─明日で舞姫達とは別れるが、それでも俺は前を向く─堂々と胸張ってただいまというために、俺は舞姫の髪にキスをしてから寝た。




……To be continued

閲覧頂きありがとうございました!

コメント、いいね、感想お待ちしております!

次回作もお楽しみに!では。

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