沢山の"新しい"
この度は閲覧頂きましてありがとうございます!
※修正版です!
「んにゃあ〜!こんな美味いもん初めてや…こんな楽しいことあるんやなんて…知らなかってん」
「ご飯粒付いてる…遠慮なく沢山食えよ」
「ん〜!肉の脂、たまらへんっ!」
─昼にみたアックとはまた違う表情。目の前は、ただ肉を美味そうに頬張ってる如月さんなのに、彼女を見てるだけなのに─心臓がうるさいのは何故だろう。本当に俺は───いや─俺は認めたくない。初めて───女の人を好きになった自分を。
「いやぁ…久しぶりの飯美味かったな…如月君、これからもよろしくな」
「はい……初めての学校、アルバイト……不安で今日寝れへん…」
「大丈夫だよ。最初はキツイけど、慣れたらこっちのもんだ」
「そうそう。私のクラスに、廉命君の同級生もいるの!良かったら仲良くしてあげて」
「あぁ…夜海っていうんだけど…俺から話しておくから、明日…仲良くしてあげて」
「は、はい……」
「(廉命……如月と話すとめちゃくちゃ尻尾振ってる…。素直じゃねぇなぁ…顔真っ赤だし)」
「……廉命。俺は白血病で未来が見えない。廉命はケロイドだらけでも、未来を求めてる…もしもの時は…如月を頼んだ」
「………はい」
─俺なんかが如月さんを好きになってもいいのだろうか。
─傷だらけの自分が─彼女を幸せにしていいのか、俺には分からなかった。
――――――――――
「制服大きいよね…ごめん……ジャージも使ってね。私の靴…サイズ合わないけど、希望君が厳選して良いシューズ持ってきてくれるまで我慢してね」
「おおきに……舞姫さんの制服…ええ匂い」
「ふふっ。実は昨日…お姉ちゃんと話して、制服洗濯したの。乾いて良かったぁ…」
「……普通ってこんなに暖かいんやなぁ……ふふっ」
─次の日の朝。如月は少し早起きし、舞姫の高校の制服を着てみた。舞姫は身長百六十五センチ近くあるため、十センチほどの差がある如月にとっては大きかったらしい─。
「にしても制服姿かっわいい〜!」
「どうだ〜?制服は」
「……ダボダボ…でもええ匂い…」
「あ、お姉ちゃん迎えに来たみたい」
─如月が初めての制服に身を包み、驚いていると部屋のインターホンが鳴り、ドアを開けると、愛さんがいた。
「おはよう」
「おはようございます…今日は如月、お願いします」
「任せて。制服姿可愛すぎ……髪の毛も猫耳ある……かっわいい〜!」
「可愛すぎ〜!」
「(本当にこの二人は姉妹だなぁ……って!如月、二人の胸に潰されてるっ!)」
─昨日の話で、今日は愛さんが如月を迎えに行くことになっていた。しかし彼女は如月の制服姿を見た瞬間、如月に抱き着き、舞姫も如月を抱き締めた。
─愛されてる、と思ったのだが──如月の顔が真っ青になっていることに気付き、その原因も察した。愛さんと舞姫の、豊満な胸に顔を挟まれ、如月の息の根が止められそうになっていたのだ。
「う……二人とも……めちゃたわわ……」
「如月ー!昇天するなっ!」
「はっ…!愛…先生………よろしゅう」
「今日は転校手続きして、明日から学校が始まる流れになるわよ!」
「愛さん、お願いします」
─こうして、如月の新しい学校生活が始まるのだが、まずは転校手続きが必要なので、今日はその手続きと学校案内をして、俺の職場でアルバイトの説明。そして明日から本格的にアルバイトと学校生活が始まるという流れになった。俺達も仕事や大学に行き、如月のもう二つの"新しい"が始まった。
――――――――――
「緊張してる?」
「はい…」
「やっぱりそうよね……大阪の学校は…綺麗だった?」
「うーん……あまり変わらへんと思います…でも、神戸が近いからか野球は強かったです」
「やっぱり関西は違うわね〜!あ、そろそろ着くわ」
─生野さんと出会って二日くらい経過しただろうか。この日は愛先生の務める高校に行くことになった。車を運転する彼女の横顔を見て思う。舞姫さんに似て、近くにこんなに美しい女性がいるなんて想像出来やしないから。
─昨日、初めてアクドと焼肉を食べた。初めて制服を着た。初めて教師と近距離で話した。そして───初めてアルバイトに挑戦することになった。生野さんと出会ってから初めてのことばかりだ。そのせいで頭が追い付かない。まもなく学校に着き、私は愛先生の後に付いて学校に入った。
「荷物持って来るわね。ちょっと待ってて」
「はい」
─空いてる教室に通され、私は席に座らされた。久しぶりの教室に、私は辛い過去を思い出してしまった。
『うげぇ…オッドアイ…?キモいなぁ…』
『こいつ、バイ菌あるで〜』
『触んな、こっち見るなや!こん化け物っ!』
『………っ!』
『お前…将来犯罪者になるやろ…オッドアイやもん…』
「(この学校は……安全なんやろうか)」
「お待たせ。あら…?目、赤いわよ?」
「………実は…私、オッドアイで差別されてん……汚い近寄るな、化け物とか犯罪者になるやろ言われてん……」
「そう…よく一人で頑張ったわね。そうそう。まずは転校手続き。これはお父さんに書いてもらって、明日校長先生に提出しましょう。元の住所は──最後の施設の住所にしましょうか。どこの施設か覚えてる?」
「………天王寺…」
─泣きそうになっている時に、愛先生が教室に入り、私を慰めてくれた。簡単に転校手続きや学校の説明をしている時だった。
「ここは普通科がなくて、大きく工業科と商業科に分かれてるの。だからクラスの男女比率も大きく違うのよ。私のクラスは圧倒的に女子が多いわ。逆に工業科は男子が多めね」
「(机に…今朝のたわわが乗っかっとる…何カップなんやろ…)」
「……商業科だと電卓も必要になるし、教科書も必要ね……舞姫や希望君が持ってるから、お下がりだけど何とかなるわね」
─校則やテストのこと、部活や学校行事などについて説明を終えると、教室に二人の女子高生が入ってきた。一人は廉命さんの同級生、もう一人は同い年とは思えない、とても美人な生徒だった。
「あ、愛先生」
「愛先生〜!今日も可愛い〜!」
「もう今朝会ったばかりじゃない……夢玖ちゃん。この子は影食夜海…廉命君の同級生よ。そしてこの子は松寺仁愛………ちょっと大胆だけど、凄く優しいのよ」
「夢玖ちゃんかぁ…廉命君から話は聞いてるよ」
「可愛い〜!よろしくね〜!」
─透明感のある茶髪を下ろし、銀色の瞳を灯してる生徒は影食夜海。廉命さんの同級生とは聞いていたが、大人っぽく見えるので納得した。
─そしてもう一人、艶のある黒髪を低めの団子に纏め、異常に容姿と顔立ちが整ってる生徒は松寺仁愛。鎖骨には刺青があり、ピアスもバチバチに開けていた。
─また新しい人と会ったのか、私は威嚇してしまった。
「ふーっ!」
「もう…警戒しないの!この子は味方よ」
「ふー……ん、ゴロゴロ…」
「猫耳…これクセなのかな…てか髪サラサラ!猫みたーい。てかオッドアイめちゃくちゃ綺麗…」
「廉命君が夢玖ちゃんに惚れた理由…分かったかも」
「…私の目、変に見えへんの?」
─私のオッドアイを見ては、毛嫌いされるのに、彼女達は違う─むしろ私の瞳を見て綺麗とか、睫毛長いと言ってくれる。疑いたくないのか、私は恐る恐る聞いてみた。オッドアイが、変に見えないのかを。
「全然!寧ろ可愛いよ!まあ…私も夢玖ちゃんや仁愛ちゃんの二つ上なのに高校三年だもん…本当は今頃大学生なのに…全然変じゃないよ!」
「そうだよ!仁愛もほら…鎖骨に刺青入れてるし、ピアスもバチバチだし……よく周りに避けられるけど……仁愛、見た目で決め付けられてきたから、気持ちは凄く分かる。辛いよね…」
─どうやら、夜海や仁愛も、一部だけ普通ではなかった。どうやら、私だけが普通じゃないと思っていたのは、私だけだったらしい。
「夢玖ちゃん、警戒する気持ちは分かるわ。でも…二人はあなたを受け入れようとしてくれる。だから……仲良くしましょう?」
「……」
「夢玖ちゃん、大阪出身なんだよ〜?昨日廉命君から聞いて驚いた!それにね…廉命君が昨日、夢玖ちゃんのことで相談したきたよー」
「相談………?」
─愛先生の擁護により、私の威嚇は落ち着いた。確かに、彼女達はまだ私の敵と明確になったわけでもない。彼女達が私を受け入れようとしてる事実が怖くて、中々一歩が踏み出せないのだ。が、夜海が私に大阪出身なのか聞くと、自然に話せるようになった。
「あ〜、分かっちゃった…恋の話、ね」
「そうそうっ!いやぁ…廉命君がねぇ…」
「二人とも、何話してん?」
「ふふっ。内緒……仁愛大阪行ったことないんだよねぇ……串カツやたこ焼きくらいしか分からないや」
「大阪はええところやで。大阪城に通天閣、あべのハルカスに道頓堀…アメリカ村や梅田……色んなところがあるなぁ…大阪で食い倒れたことないんよね…」
「大阪…アクドとか…丸餅とか、ここじゃ全然違うよねぇ」
「せやなぁ……エスカレーターは右に立つし、おもろいおばちゃんもおるけどなぁ」
「へぇ…!大阪凄いわねぇ…学校案内もしないと!ほら授業遅れるわよ!」
「はーい、夢玖ちゃん。またね」
「バイバイ!」
─次の授業もあったので、夜海や仁愛とは別れ、私は愛先生に学校案内された。教室や保健室、化学実験室、音楽室や職員室などがある─一般校舎と、パソコン室や電子機械の実習室、総合実践室などがある─産業棟に大きく分けられていた。
「ここは体育館。私と舞姫、バスケ部だったのよ。意外でしょ?」
「意外です……(こんなたわわが揺れて、動きにくいのにバスケ……姉妹揃ってエグいな)」
「懐かしいなぁ……まあ学校案内はこんなところね…そろそろ……「愛先生じゃん」
─体育館も案内され、お開きにしようとした時、事件が起きた。何と─授業中に教室外を彷徨いていた男子生徒達と遭遇したのだ。
「あなた達…!授業中の出歩きは校則違反…それとネックレス、あとピアス……分かってると思うけど、生徒指導よ!」
「授業ないからって学校中彷徨いて何してんの?」
「ちょっと野暮用があって、この子に学校案内してるのよ。今なら見逃すから、今すぐ授業戻りなさい」
─あまりにも柄の悪い生徒達で、愛先生は怒っていた。昨日の優しい姿からは想像出来ないほど、怖かった。これで生徒指導も担当していることにも納得する─。
「やだぁ…てか愛先生今日の下着何色?放課後俺達とデートしない?」
「てかこいつオッドアイなんだけど…キモ」
「うわぁ…絶対変わり者アピールじゃん!こんな地味なやつ、友達になりたい奴いんのかよ!」
「おいっ!お前何か喋れよ…」
「(やっぱりこん高校……ヤンキーしかおらへん…?)」
「いい加減にしなさいっ!授業中の出歩き、そして教師へのわいせつな発言……転校生への誹謗中傷……地獄の生徒指導よ!ちょっとここで待ってなさい。夢玖ちゃん、行くわよ」
─更には私のことも悪く言われ、泣きそうになっていた。やっぱり、私はどこの高校でもこういう扱いなのだと─確信してしまった。しかし、愛先生の怒りは更に───熱を上げた。お陰でこの雰囲気は、地獄と化していた。
「ごめんなさいね…わざわざ来てくれたのに」
「いえ…悪いんはあの生徒達ですよ」
「そうね……とりあえず、反省文英語で十枚は書かせてるから大丈夫よ。安心して来てね。また明日」
「はい……その……おおきに」
─午前中という時間ではあったが、沢山の初めてを味わい、そして初めての友達が出来そうな時も味わった。最後は─初めての生徒指導を目にしたが─これから向かう、アルバイトの説明に不安と期待を募らせていた─。
……To be continued
――――――――――
<キャラクター紹介④>
名前 : 如月夢玖
血液型 : B型
誕生日 : 6月10日
身長、体重 : 150cm、43kg
MBTI : INFJ
好きなもの : 猫、大阪名物、コーヒー
嫌いなもの : オレンジ(猫は柑橘ダメやねん)
趣味・特技 : 木登り、テレパシー、パン作り
大阪・あいりん地区で生まれ育ち、訳あって希望と出会った18歳の女子高生。オッドアイが原因で周りから嫌悪されて関西の養護施設を転々としていたが、希望との出会いを通じて、"自分が生まれてきた理由"について、少しづつ外の世界について知るようになる。ツッコミは猫パンチの如く、信頼してる人にしか見せない一面もある。伝えたいことによりオッドアイの色は変わり、廉命からの好意には一切気付いてない……。
閲覧頂きありがとうございました!
コメント、いいね、感想お待ちしております!
次回作もお楽しみに!では。




