この気持ちの名前は
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「キモイんだよお前っ…!」
「痛っ…!」
「オッドアイとか…きっしょ…」
「おい、やめろっ!」
─某ハンバーガー店で飯を食っていた時、女の子が高校生に殴られてるのを見ていた。彼女を殴る生徒は、聖陵情報高校の生徒──つまり、俺の後輩でもある。その彼らが、容赦なく女の子─つまり弱者を虐めてるのを気に入らず、俺はただ飯を食っていた。しかし、彼女と目が合い、その紅い瞳に吸い込まれた。俺の紅い瞳とはまだ違う赤で、彼女の瞳から何かが見え、気付けば俺は、彼女を殴ってる男子高校生の腕を掴み、睨み付けた。
「大丈夫…?立てる……?」
─彼女を助け、手を差し伸べる。そういえば、自分から女の子を助けたのは初めてだろうか─。どうしても放っておけず、席を移動し、生野さん達と飯を食った。
「これが如月。この前話してた、黒猫の正体はこいつ!」
「にゃ…?」
「如月…さん」
「今朝こいつに引っ掻かれたんだ…痛かった」
─殴られてた彼女は、如月さんといった。生野さんには彼女の歳は俺の二つ下としか教えられなかったため、何かが変わる予感がした。
─もし聖陵情報高校に転校するとするなら、アイツと気が合いそうだから。俺と同級生で、訳あって高校三年生をしてる、アイツと。
――――――――――
「よし、南北北病院に到着……ちょっと電話するわ」
「あ……はい」
─廉命と別れてから俺は運転を続けた。南北北病院に着いたので駐車場に車を停め、俺は院長に電話をした。そう──院長は、舞姫の父親でもあるのだから。
「院長…着きました。これから連れてきます」
<分かった。17時ぐらいに愛も来ると連絡あったから色々用意しておいた。如月君はコーヒー派か?>
「はい。めちゃくちゃ警戒心強いんで…怪我しないように」
<あぁ。とりあえず、待ってるぞ>
─電話を終え、如月と南北北病院に入る。すると院長が出迎えてくれた。
「希望君、待ちくたびれたぞ」
「すみません…ちょっと腹減ってて…」
「まあいい。とりあえず院長室へ……ん?」
「ふーっ!ふしゃーっ!」
「如月っ!」
「大丈夫だぞ。せっかくだから茶でも飲んで話を聞こうじゃないか」
─彼は煌星癒─。四十五歳独身だが、愛さんと舞姫の父親だ。南北北病院の理事長兼院長で、俺が小さい頃から世話になっている。
─彼の案内で院長に入るのだが、如月は震えていたが、何とか院長が彼女を落ち着かせ、俺達は院長室に入った。
「コーヒー、ブラックで良かったか?」
「はい」
「ほう…大人じゃないか。私はキャラメルマキアートに角砂糖十個は入れないと飲めないのに…」
「へ………?」
「院長、大の甘党だから角砂糖やガムシロップないとコーヒー飲めないんだわ。そんで…この人が舞姫の父ちゃん。めちゃくちゃ腕の良い医者なんだぞ!」
「君が如月君だね……私は煌星癒。四十五歳独身だ。娘が二人いて、愛は英語教師、舞姫は看護学生なんだ。まあ…君達がどう出会ったか、まずは聞こうじゃないか」
─ソファに座り、院長が本題を話す。どうして俺達が出会ったことなどを。最初は驚いていたが、次第に納得をしてくれ、感動して涙を流したのか勢いなのか、院長はこう提案してくれた。
「辛かったな……よく頑張ったなぁ…ぐすっ」
「院長……」
「…ふーっ!」
「(泣いてる院長を威嚇……如月容赦ねぇ…)」
「如月、この人は、お前を助けようとしてるんだ!」
「……他の大人…怖いな」
「私は君の行動力に感動した…うちの子になろう!」
「えっ?うちの子って……?(養子縁組ってことか。でもまあ…両親を失ってる如月からしたら、今後の人生で色々助かるだろう…)」
─何と、うちの子になるかと如月に聞いてきた。確かに彼女は両親を失っているし、高校も卒業はしてないので、養子として引き取るのは丁度いいのかもしれない───。
─隣を見ると、如月の片方の瞳は赤かった。外の世界に、大人に警戒してるのだろう。
─養子縁組について調べたり、今後のことを話し合っていると、院長室のドアが勢いよく開いた。その人は煌星愛─。つまり舞姫の姉だった。彼女は院長の隣に腰掛け、こちらの話に加わった。
「愛……入る時はノックしろと言ってるだろう」
「だって…」
「だってもないだろ……とりあえずお前も座りなさい」
「ありがとう。それで希望君……この子が…」
「如月…如月夢玖っていうんです……大阪からやってきて、両親失ってで…色々大変で、昨日出会ったんです」
「そう。彼女は、高校何年生?」
「高校三年っす」
「あら…初めまして。私は煌星愛といいます。舞姫やお父さんから話は聞いてるわ。夢玖ちゃん、よろしくね」
「う………あ、う……ふーっ!」
「お父さん……予想以上ね。凄く警戒してるわ」
「猫以上に警戒心強いのではないか……?」
─しかし愛さんが加わっても如月の威嚇は収まらず、寧ろエスカレートしていた。外の大人が、やっぱり怖いのだろう。ひたすら威嚇する如月に頭を悩ませていた時、愛さんは席を立ち、如月を抱き締めた。
「……辛かったわよね…苦しかった…怖かったわよね……よく出来ました」
「えっ……?」
「舞姫から聞いたわ……あなた、大阪からここまで歩いてきたのね…よく出来ました」
「ぐすっ……うわあああんっ!」
「ふふっ」
「……愛、学校では生徒指導しまくってるのに、何だあの女神のような笑顔…」
「いやぁ……どうなんすかねぇ…」
─また如月は大泣きし、彼女の気持ちが落ち着いたタイミングで、話を戻した。この時点で決まってることは─如月は院長が養子として引き取り、如月は俺と舞姫で面倒を見ることだったが、愛さんが来たことにより、もう二つの決定事項があった。
「愛、高校のパンフレットはあるか?」
「ええ。持ってきたわ。夢命ちゃん、ちょっとこれ見て?私の勤めてる高校……転校しないかしら?」
「転校………?」
「そうよ。高校卒業しないと将来大変なの…高校卒業したら後は自由だから、せめて私の高校で高校卒業しましょう。あなたは私が守るから」
「………」
「ここに来たばかりだから、色々不安よね…」
「いや、転校……します。ここに…」
「決まりだな。制服は舞姫の着るとして……愛が担任なら、心強いな」
「(如月……少しずつ人を信用出来るようになってるな…ふふっ)」
「俺の職場でアルバイトもしてみるか〜?さっきいた廉命もいるし、大変だけど社会勉強にも金稼ぎにもなる…どうだ」
「………やり、ます」
「如月君、今夜は焼肉食べに行くぞ!今予約した…日出君も誘うか?」
「いいっすね〜」
─一つ目は聖陵情報高校に転校すること─愛さんが担任として如月の面倒を見てくれるとのことだし、新米教師だが生徒指導も担うので、もしもの時は安心だ。
─二つ目は、俺の職場でアルバイトをすること─如月には大人に慣れてもらいたい─という理由が一番だが、俺の職場で他に紹介したい人達も多いのだ。
─そして淡々と話は進み、あっという間に夜になり、俺達は焼肉店へ来ていた。大学終わりの舞姫は腹を空かせていて、バイト終わりの廉命は待ち合いの席で周りの女性にモテモテだった。
「いきなりで悪いな。昨日から焼肉を考えていたもんでな」
「大丈夫っす。また会えたね」
「え………」
「廉命君、夢玖ちゃんと会ったの?」
「はい…午後からバイトだったんで、アックで飯食ってたら、この子が高校生に殴られてたんで助けました」
「もう…明日生徒指導するわ。廉命君ありがとう」
「あ……うあ……」
「大丈夫。今日は如月が福島に来た…そしてこれからもよろしくっていうお祝いだから…好きなの頼め」
「大丈夫よ〜?久しぶりの焼肉、気合い入れないと損するわよっ!」
「あ〜、お姉ちゃん焼肉のことになると熱血教師になるけど、気にしないで沢山食べてね!」
「なんか…テニスやっとる例の人みたい…」
─だが、如月はまた震えていた。愛さんが大丈夫と言ってくれた。テーブル席に座り、メニュー表を眺める。今日の主役は如月なので、如月にメニュー表を渡すが───彼女は不思議そうに見ていた。中々決まらないので、大丈夫かと聞くが──これもまた驚きだった。何と、彼女は焼肉や寿司など─飲食チェーンに行ったことがないのだ。
「私……焼肉行くん初めてや……オッドアイが原因で…出禁にされてん………」
「(そういやさっき…アック初めてだったよな)」
「そうか…考慮出来ず済まなかった……だが、これも何かの縁だ……私達はビール頼む…希望君や日出君はどうする!」
「俺はメロンソーダかなぁ…如月はコーヒーフロート、廉命は?」
「ノンアルのカシオレで…」
「よし。如月君…初めての焼肉を楽しむとしよう。とりあえずハラミとロース、カルビにタン…あとはホルモンだな」
「食べ放題なんだから、沢山食べて楽しもう〜!」
─さすがに驚きは隠せなかったが、院長達は受け入れ、どんどん肉を頼んだ。肉を焼き、焼いた肉を如月の皿に渡す。
「お肉、美味しいよ!食べてみて〜」
「うわぁ……本当に、好きなだけ食べていいいん……?」
「食べ放題…つまり食べ放題のお金払えば決まった時間内に好きなだけ食べられるのよ!一口食べてみて」
「………んっ!っ!」
「ね?美味しいでしょ〜?ホルモンもいいわよ〜?」
「ついでにクッパと冷麺も頼むぞ…初めての焼肉はどうだ」
「ほんまに……美味ひい……ぐすっ。こんな楽しいこと、知らへんかった…」
「よしよし…海鮮焼にカプレーゼも頼もう」
「俺ご飯大盛りお願いします」
「日出君は食べるなぁ…如月君、どんどん食べてくれ!」
「……なら私、ソーセージと冷麺頼もか…猫舌やから冷たいもの食べます」
─最初は中々箸を動かなかった如月だが、舞姫さんや院長が盛り上げてくれたことにより、如月はどんどん食べた。そして─頬が緩み、喉をゴロゴロと鳴らした。安心して彼女の瞳を見ると、緑と蒼になっていた。嗚呼、やっと信用されたんだ─と安堵していた。
「んにゃあ〜!串カツ以外にも…こんな美味いもんあったんやなぁ…」
「お、如月君は大阪出身だったな…実は私も…九州出身なんだ……別府温泉の湯気で蒸す野菜や肉、魚は絶品だぞ」
「…院長、大分出身なん…?」
「あぁ。九州の飯は美味い。一番舞姫や愛の作る飯が宇宙一美味いんだがな」
「………生野さん、俺トイレ」
「お、おう……」
─舞姫達が盛り上がる中、廉命だけ如月に見ず、ひたすらモリモリと白米と肉を平らげていた。暫くすると、廉命がトイレに行ったので、俺は気になり、こっそりついていった。しかし、彼と目が合うと、耳まで真っ赤になっていることが分かった。
「……」
『んにゃあ〜!こんな美味いもん初めてや〜!』
「(何あの表情…可愛すぎだろ……っ!いやいや…別に俺は…)」
「んや……廉命」
「…はっ!い、生野さん…?生野さんもトイレすか?」
「なわけないだろ…さっきからお前…如月のこと全然見てねぇなぁって…顔赤いし、あれだろ?」
「はっ?な、なんの事すか?」
「当てるわ……お前は…如月に恋をした!」
「は、はぁ…っ!た、確かに…可愛いなって思ったけど…」
「へ〜?如月、昨日舞姫と風呂入ったんだぞ?」
「おいっ!はぁ……もう顔見れねぇっす。可愛すぎて」
「おー、言うねぇ」
「はぁっ!べ、別に…あの子のこと好きではないんで」
─トイレの洗面台でひたすら頭を抱えていたのだ。自然に声を掛けると、やっぱり顔が赤かった。どうやら、美味そうに肉や飯を頬張る如月が可愛かったそうだ。
─一目で分かった。今日─廉命は、如月に恋をしたことが。まあ頑張れと彼を励まし、一緒に席に戻ったのだ。廉命の今の気持ちに名前を付けるのなら、恋一択だ。
─年齢関係なく、青いなぁ─と思う瞬間が、これから増えていくのだろう。その日は焼肉を堪能し、後日如月は─正式に煌星院長の養子となった。
─普通を失った俺が、誰かに"普通"を繋いだ夜。そして、誰かが如月に恋をした夜。この先に待つ物語を、俺はまだ知らない。
……To be continued
――――――――――
<キャラクター紹介③>
名前 : 日出廉命
血液型 : O型
誕生日 : 3月11日
身長、体重 : 182cm、72kg(20歳の時)、195cm、98kg(21歳の時)
MBTI : ISTP
好きなもの : カシス、肉、夢玖
嫌いなもの : こんにゃく(あれ食べる意味ある?)
趣味・特技 : ゲーム、力仕事、ジム(夢玖と出会ってから)
顔や身体に遺るケロイドが目立つ、二十歳のフリーター。希望とは一つ年下だが、友人のように仲が良い。夜海とは同級生で、夢玖との恋模様のことでからかわれることが多い。過去に東大受験に失敗し、両親に捨てられた。元の顔立ちは整ってるので、メロメロになる女子は多いが、廉命自身は夢玖に好意を寄せている。某スポーツ用具店で働いており、希望を支えている。
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次回作もお楽しみに!では。




