門出
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今作より第二期が始まります!
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「廉命スーツ似合ってんぞ!目立つな」
「それは…これだけバチバチにされたらこうなるでしょ…」
「夢玖ちゃんも雰囲気違うねぇ…すっごい可愛い!」
「皆いつもと雰囲気違うから、ビシッとしてる感じね。私もう…教え子が…大学生なんてぇ…!」
「愛…気持ちは分かるが、教え子の前ではよせ。如月君、日出君、紡木君、影食君、松寺君…大学入学、おめでとう」
「ありがとうございます!」
─この日は大学の入学式で、それぞれ学部は違う為、俺と如月さんは同じ学部の座席に座っていた。新しい大学生は俺達よりも圧倒的に多く、その数なんと七千人弱で、もう既に仲良いグループが出来てるところもあるが、俺達には関係なかった。でも───
「この子っ!めちゃくちゃ可愛いオッドアイの子」
「うわぁめちゃくちゃ可愛いっ!惚れたわ…ねぇ連絡先交換しない?てかこの後ご飯行かない?」
「え……えと…悪いねんけど、他の約束があるから、ごめんな」
「訛りが…もしかして、関西出身なのっ!」
「そやけど…」
「じゃあアックじゃなくて、アクドとかいうよね?」
「顔もめちゃくちゃ可愛い…小柄なのにスタイル抜群、関西出身ねぇ……名前は?」
─隣で如月さんが新入生に声を掛けられていたのだ。どうやら、俺はこの四年間─彼女を守らないといけないのは事実だった。
─如月さんが別の男に声を掛けられている─これは嫉妬なのは分かっている─。でも─
「やめとけ。この子は俺の……」
「(にゃっ!廉命さん……ずるいでそれ…)」
「え、もしかして…二人付き合ってる?」
「いや…この子は後輩で……その…とにかく、彼女に触れたら次はねぇぞ」
「顔真っ赤!しかもガタイ良過ぎだろ……そういうことなら、仕方ねぇな!」
─如月さんが他の男と付き合うとなると、凄くイラつく。しかし独占欲を言葉にだすと、如月さんは顔を赤くして俯いていた。
「ぐるるるるる……」
「わ、悪かったよ……図体に合わず番犬みたいだな…」
「わんっ!とにかく…彼女には……あまり触れないでくれ」
「へ〜。二人とも、名前なんていうの?」
「日出廉命。彼女は如月さん」
「如月夢玖やで。よろしゅう」
「うわぁ…猫被ってなくても可愛すぎる!」
─大学の入学式が終わった後、俺達は福島駅のレストランに集まった。凪優、夜海、仁愛が俺達を出迎えてくれた。
「お疲れ様。どうだった?」
「いや…俺は何とも。でも如月さんが沢山男に声掛けられてた……許せねぇ」
「まあまあ…夢玖、この一年ですっごく色っぽく大人っぽくなったからね」
「うんうん。まだまだ成長するね…廉命君、良かったね」
「まあ、な。てか夜海、もしかして……」
「あ、お酒飲んでるんです。しかも廉命さんが来るまで、夜海ちゃん一人でこのお店のワインや焼酎、ハイボール、ビールの在庫切らしたんです……仁愛と凪優ちゃんで謝りました」
「そうそうっ!夢玖ちゃんと廉命君の今後の妄想をツマミに飲んでたら、無くなっちゃった」
「無くなっちゃった、やないやろ…高校の卒業式に飲んどったもん。そん時愛先生泥酔してて大変やったんやから」
─テーブルには空になった酒の瓶が大量に置かれていて、それは夜海一人で全て飲んだ酒のようだった。同級生である以上、代わりに謝ってくれた凪優や仁愛に対し申し訳なくなったが、仁愛が上手く仕切ってくれたことにより、俺達は雰囲気を取り戻した。
「いやあ…仁愛も大学生かぁ…あまり実感ないなぁ」
「ね!私バイト探さなきゃ」
「仁愛も…」
「なんか、福祉学部の方で、ラウンジ嬢とかキャバのバイトしようとか、女子達が話してたなぁ」
「っ!きゃ、キャバ嬢……かぁ。うーん」
「仁愛ちゃん?凪優、冗談はおもろないで。仁愛ちゃんはキャバ嬢やモデルに負けないくらい綺麗や」
「それもそうだよね…あ、このケーキ屋さんのバイトの求人…良いかも」
「それなら私、お店行きたい!」
「私も」
「お、俺もっ!カシスの何か、あるといいなぁ」
─一瞬だけアルバイトの話になったが、凪優が冗談を言ったことで仁愛は気まずそうにしていた。そういえば彼女は水商売関係の言葉を聞くと、顔を青ざめることがあるのだが、それと彼女が何か関係してるのだろうか。刺青やピアスを見る限り、仁愛に何かありそうだと感じた。
─如月さんが雰囲気を立て直してくれた。
「へ〜、抹茶のオペラ…あれ美味しかった!」
「ね!あのカシスタルトも最高やったなぁ…なんか、廉命さんが喜ぶ想像しとったなぁ……あ」
「え」
─アルバイトの話が、ケーキの話になり、あれが美味しかっただのと話になるが、如月さんがカシスタルトの話をすると、それで俺が喜ぶ姿を想像してたことを話し、俺と目が合うと、顔を赤く染めた。俺も顔を赤らめるが、その瞬間を、夜海達が見逃すことはなかった。
「へ〜?夢玖ちゃんも意外と…」
「や、べ…別に…なんとも思っとらん!照れさせんといて」
「言葉は嘘でも…瞳は正直…緑とピンク…夢玖は意外と素直だよね」
「あ、そういえば二人とも、同じ部屋で暮らしてるんだよね?それって同棲じゃない?」
「「っ!」」
─如月さんは確かに、ポーカーフェイスを保ってるつもりが、変わる変わるオッドアイの色が正直になる。その瞳の色が、伝えたいことや表情をこちらに伝えるのだ。
─しかも、俺と如月さんがこの春から一緒に暮らすようになってることがバレてしまった。そう。実はこの春、大学進学と俺の賃貸契約が終わるタイミングが重なり、希望さんの隣の部屋で一緒に暮らすようになったのだ。
「めちゃくちゃ食ったなぁ…如月さん、先お風呂入ってきなよ」
「いやぁ…廉命さん先どうぞ」
「俺はすぐ終わるから、如月さん先にお風呂行きなよ。疲れたべ」
「それじゃ…お言葉に甘えて…」
─マンションに帰宅し、如月さんが先に入浴してる時。俺はベッドに横になり、携帯を見ていた。
如月さんが入浴してるのを自然に想像してしまう。別に官能的な妄想ではないのだが、どうしてもモヤモヤとしてしまう。一方で如月さんはというと───
「(如月さん…逆上せてないかな)」
「………お風呂、熱ない?」
─大学の入学式後に、皆で福島駅のレストランでご飯を食べて帰宅し、今はお風呂に浸かっているのだが───廉命さんの私物が意外過ぎたのだ。
─プチプラだがカシスとハーブの香りがするボディソープ、ベリーの香りがするシャンプーと洗顔料─。これらが普段の彼とは思えない美意識を引き立たせる。
「ヘアオイルもベリー系の香りやし……あん人、どんだけカシス好きなんや……ぶくぶく」
─一方で私はというと、季節限定の桜の香りがする猫っ毛向けのシャントリに、サボンの香りがするボディソープ、舞姫さんがプレゼントしてくれた、マカダミアナッツの香りがするボディスクラブ、他にも色々ある。
「…少しだけ、廉命さんの使ってみようかな…後で髪乾かせば怒らへんやろ」
「ええ香り……今まで気付かんかったけど、廉命さんも…男なんやな……」
「甘酸っぱいカシスの香りが凄い……廉命さんもこれで体を洗ってるとなると………っ!」
「ってあかんあかん…変な妄想しとんのやめや!」
─シャンプーで髪を洗い、トリートメントを乳化させてる間にボディソープで体を洗う。思っていた以上にカシスの良い香りがして、それで廉命さんも体を洗ってるとなると───凄く恥ずかしくなった。妄想を止め、体を洗うことに集中する。
「……そういえば、胸…こんなに育ってたんやな…舞姫さんみたいにたわわではないけど、そろそろ下着きつなってきたなぁ…」
「んっ…今お風呂から出たらあかんね…」
─次第にいけない妄想に入ってしまい、泡だらけになった自分の胸に両手を添えた。一年前の私の胸は本当に壁のように平らだった。でも今は─廉命さんと出会ってからは───物凄い勢いで成長し、小柄な身長に見合わない豊満なものとなった。
「今じゃ……Eやねんな……んっ」
「(男の人と住むんは……こういうこともあるやねんなぁ……?)」
「廉命さんも…男の人、なんやな……」
─少しだけ揉み、先端を指で弾く。すると夜海にされてたお触りと同じ快感がしたが、今のは大きな快感だった。多分─廉命さんが私の胸を弄る妄想をしながら自分の胸を触ったからだろう。男の人と住むということは────
「…ふぅ…さっぱりした」
「あ、廉命さん……おかえりなさい」
「す、すやぁ…っ」
「ちょっ……お風呂上がりの犬みたいにブルブルせんといて!」
「ん、ああ…癖なんだよね」
「髪、乾かします」
─その答えが見い出せず、私はドライヤーで廉命さんの髪を乾かしていた。大柄な体格にも関わらず、髪がふわふわで柔らかい。まるでゴールデンレトリバーをブラッシングしてるみたいだ。しかも同じシャンプーを使ったはずなのに、また違う香りがする。次第に髪の毛を乾かし終えり、私もソファの隣に座ると、廉命さんはあることに察し顔を赤らめたが、それに何を意図してるのか、私には分からなかった。
「おやすみ如月さ…」
「すう……すう…」
「ふふっ。なんか気持ち良さそう…俺も寝よ…おやすみ。如月さん」
─この二人暮らしと生野さんの存在が、私達の今後を左右することをまだ誰も知らないまま、私達の大学生活が始まったのだ─。
……To be continued
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