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普通を失った俺が、世に希望を与えるまで。  作者: 速府左 めろ
<第一章>希望とは。〜集われた意図編〜
32/85

繋ぐ希望の日を。

この度は閲覧頂きましてありがとうございます!


「ふう……よし。休憩しようやあ…お腹空いてん」

「そうだね…仁愛お腹空いた……イブンで何か買ってこうかな…」

「私も……皆で行こうよ」

「だね………」


─冬休みに入る前、私達は大学受験に向けて必死に頑張ってきた。ちなみに今は二学期の期末テストが終わり、そのまま受験勉強へと励んでいるわけだが、テスト勉強にも力を入れていたことで腹が減り、学校を出て途中のコンビニに行くことになった。


「仁愛おにぎりと砂糖不使用のカフェラテと…サンドイッチと……あとは…」

「仁愛ちゃん食べ過ぎ…」

「勉強で頭使うからね…あ、そうだ!肉まんも食べよ〜!」

「夢玖ちゃんは何にするの?」

「せやなぁ…イブイレのお気に入り…胡麻鮭のおにぎりに飲むカフェオレゼリーやなぁ。あとハッシュドポテト」

「いいね〜。私はアイスにドーナツ、あとルイボスティーにしよ」


─受験シーズンに限らず感じたこと─それは学校で居残り勉強していて、小腹が空いては近くのコンビニで買い食いしてるのだが、背徳感が凄いことと、普通の高校生らしい青春を感じられること。大切な友達と買い食いしてることがとても楽しいのだ。

─お揃いでおでんも買い、食べ歩きしながら校舎へ戻る。冬の風が肌を指し、容赦なく私達の体を冷やした。


「コロッケも買って…仁愛ちゃん本当よく食べるね」

「まあ食べたものが胸にいくからね…もぐもぐ」

「全部胸に……仁愛ちゃん、何カップなん?」

「受験シーズンで太っちゃってさ…下着がキツくなってきて昨日測ったらね、Gカップだった」

「「(想像以上のメロン…っ!)」」

「と、とりあえず…寒い時に食べるおでんって最高だよね〜!」

「おでん…ずっとコンビニのおでんに憧れてん…高校生がおでんって…ほんまはホットコーヒーにしよか迷ったけど、おでんの誘惑に負けてもうた…」


─私達は校舎に戻り、教室で休憩しようと思ってた時、複数の女子生徒達が教室内におり、私達は気にせず休憩しようと思ったのだが─


「ねぇアンタが来てからうちらの高校生活めちゃくちゃなんだけど…」

「………えっ?」

「アンタのせいで成績落ちて、アンタが可愛いからって彼氏にも振られて…どうしてくれるのっ!うざいんだよっ!」

「……何の、事やねん」

「その刺青女と、歳上女といて毎日楽しそうで…最初は大阪から来た化け物だったのにさ……所詮は嫌われ者だったのに」

「「「っ!」」」


─複数の女子生徒が私達に迫ってきた。私のせいで高校生活めちゃくちゃだと、ひたすら強く当たってきたのだ。どうやら私がスポーツ大会で活躍したり、毎回のテストで学年トップの成績を取り、文化祭で廉命さんに姫抱きされたり、大学受験で校長推薦されたのが、面白くなかったらしい。明らかに嫉妬してきてるのは分かるが、彼女達は容赦なく仁愛や夜海のことも悪く言ってきた。


「ちょっとやめなよ!仁愛達…皆に何かした?」

「アンタは黙ってて……うちの彼氏を容赦なく奪ったこの…淫乱刺青女っ!」

「えぇ…仁愛何もしてない…」

「てかアンタも、あの傷だらけのイケメンと同級生なんだって…?うちらの二つ上とか、ババアだよ…ババア」

「……二人の事も悪く言うんも大概にせぇやっ!私らアンタらに何もしてへんで?成績落ちたんはアンタらが悪いんやで?」

「はぁっ!そのオッドアイもムカつくんだよっ!このチビっ!何も知らない癖にっ!」

「ちょっ…やめやっ!痛…」


─ひたすら私達に悪く言ってきた。オッドアイがうざい─アンタのせいで───。それと同時にまた思い出してしまった。過去のフラッシュバックを─それにより腰が抜けて動けなくなっていた。そして持っていた水を頭から掛けられ、制服や下着までびしょびしょになってしまった。

─しかも今は師走で水の冷たさが強くなっていて、余計に寒く震えていた私を、女子生徒達は皆笑っていて、更に暴言を吐いてきた。

─濡れた髪から滴る見ずが垂れてるのか、それとも涙が出ているのか分からなかった。


「「夢玖ちゃん……っ!」」

「ほんと目障り。受験落ちればいいのに」

「嫌、嫌やっ!」


─やっと出願出来たのに─もしかしたら今日の件でそれは白紙に戻るかもしれない─その恐怖に苛まれていた時、愛先生が現れた。彼女はテストの採点と残りの仕事を終え、帰ろうとしたのか私を迎えに来たようだった。


「今日の仕事終わっ………あら?この状況は何かしら?」

「愛先生……この人達、夢玖ちゃんに嫉妬で頭から水掛けられたんです」

「震えてるじゃない………あなた達、何のつもりでやったの。聞くまで帰らせないわ。夜海ちゃん達は夢玖ちゃんを温めて頂戴……」

「はぁっ!こいつがスポーツ大会で活躍して、成績優秀で、大学受験で校長推薦もされて、しかもあのイケメンといい感じだし……ムカつくんだよっ!」

「あら……それは夢玖ちゃんがあなた達に傷付けられてもずっと頑張ってきたから、結果が付いてきただけなのよ。嫉妬も時間の無駄。ここは私が相手になるわ……覚悟なさい?」


─普段は愛らしい声が低く鋭くなり、彼女の背後に黒いオーラが募った。愛先生は怒り、私は夜海と仁愛に保健室に連れられた。湯たんぽで温まり、その後愛先生に送られた。

─あとから聞いた話だが、愛先生が怒ったことで女子生徒達の進路は全て白紙になったらしい─。

─愛先生の生徒指導が終わり、私は舞姫さんのマンションへ送られた。


「ただいまぁ…」

「おかえ……夢玖ちゃんっ!なんでびしょびしょなのっ!」

「舞姫…実は今日、クラスの女子生徒達に水掛けられたのよ…だから明日、全員の親呼んで立ち向かうつもりだわ」

「お姉ちゃん…夢玖ちゃんの為に無茶を…っ!」

「…無茶はしてない……私は何かしら?」

「……教師で、夢玖ちゃんの教え子」

「違うわ。それ以前に…私は舞姫と夢玖ちゃんの姉よ。だから、妹を守る為に当然のことをするのよ」

「お姉ちゃん……」

「もし夢玖ちゃんが熱を出したら、私が面倒見るから、あなた達は自分のやるべき事に集中して」


─例え人に傷付けられようが、私は受験勉強に、舞姫さんは看護師国家試験に向けてひたすら努力した。気付けば冬休みに入り、クリスマスにもなって──廉命さんのマンションで泊まりながら勉強もして───


「舞姫さん、ただいま…」

「お帰りー。お泊まりどうだった?」

「濃ゆいクリスマスやった…もちろん楽しかったで」

「良かったぁ…私は昨日希望君のお見舞い行ってクリスマスの思い出話して、帰りにお父さんとお姉ちゃんとご飯食べてきた!」

「うわぁ…せや。舞姫さんこれ…ケーキとローストビーフ、廉命さんと一緒に作ってん」

「わ、わぁっ!あ、ありがと〜!昨日ケーキ食べ損ねちゃったから丁度良かった…」


─初めて、普通のクリスマスを過ごした。翌朝起きて、作ったケーキとローストビーフが余り、廉命さんに相談して舞姫さんにプレゼントをした。

─お泊まりした後に帰宅すると、目の下にクマを作った舞姫さんが出迎えてくれた。それだけ勉強しているのがよく分かる。

─家には生野さんはおらず、私と舞姫さんだけ─。それにお互い受験生なので、ここは息を合わせ、お互いの進む方向に向けて猛勉強した。

─気付けばカレンダーを見る頃には、大晦日になっていた。


――――――――――


「大晦日かぁ……勉強どうしよう…」

「…舞姫、確かに看護師の国試は難易度が高い。根詰め過ぎるのは良くないぞ。というかお前は学年トップで看護模試もA判定だろう」

「だって…不安なんだもん……」

「まあ気持ちは分かるわよ。舞姫も夢玖ちゃんも、今日までずっと勉強頑張ってきたんだもん…一日リフレッシュしないと、後から辛いわよ!」

「そこまで言うなら……夢玖ちゃん、大晦日の楽しさ、教えるよー!」

「やったー!」


─そう。一年間の最後の日─つまり年を締め、新しく年を迎える日とも言える。スポーツ用具店では初売りの準備で皆忙しそうだった。

─私は院長や愛先生、舞姫さんと丸紅で買い物をしていたのだ。どうやら普通の大晦日には蟹や寿司、すき焼きやピザといった、一年を締めくくる豪華な食事をして、カウントダウンや紅白歌合戦を見て楽しむのだとか。

─携帯で、年越しについて調べていたが、売り場を見るとあることが気になった。どうしても─年越しそばが食べたかったのだ。他にもすき焼きや蟹も食べると聞いていたので、初めての蟹に喉をゴロゴロと鳴らしていた。

─カートを押しながらカゴに次々と食材を入れていくが、野菜コーナーで必要な野菜をカゴに入れている時、院長はあるミスを隠していたのだ。


「院長、私……年越しそば食べたい…」

「年越しそばか……よし、食うか。ついでにあまおうに寿司も買おう。蟹しゃぶも美味いからな」

「にゃ〜!美味しそ……ゴロゴロ」

「「(蟹で喉ゴロゴロしてる夢玖ちゃん…可愛い〜!猫みたいっ!)」」

「あとすき焼きも食べるんでしょ…?白菜としらたきとえのきと人参に椎茸…はい」

「いや、それじゃ全く足りんぞ」

「え?お肉も買わないと」

「……その肉なんだが……豊後牛一キロを取り寄せるはずが……間違って五キロも取り寄せてしまって…」

「嘘でしょっ!」

「ちなみに間違って佐賀牛も五キロ、竹崎蟹も十キロ取り寄せてしまった…」

「馬鹿っ!何してるのよ…私達の家の冷凍庫もギリギリだし……どうするのよ!」

「落ち着きなさい…実はちゃんと理由があるんだ」


─それは肉や蟹を、誤った量を取り寄せていたことだった。しかもその内訳は豊後牛五キロ、佐賀牛五キロ、竹崎蟹十キロで、とても四人で食べ切れる量ではなかった。ちなみに総額十万円はしたらしい─。

─愛先生と舞姫さんが院長に問い詰めていると、院長はゆっくりと事情を話した。


「確かに、誤った量を取り寄せたのは事実だ…だが、希望君に安心してもらうため、この後福吉君達にも家に来てもらうことになったんだ」

「えぇっ!」

「あと福吉君経由で松寺君や影食君達も来てくれるからなっ!」

「お父さん…大晦日だからって幾らなんでも、張り切り過ぎじゃない?」

「いや……元々、希望君がいなかったら、皆それぞれが出会うこともなかったんだ。この繋がりが、沢山の人を救って、如月君に希望を与えた……だから、今度は私達が彼に希望を繋げたいんだよ」

「お父さん……そうだよね。希望君がいなかったら夜海ちゃんや凪優ちゃんにも出会えてないもん……」

「そうね…希望君が夢玖ちゃんと会わせてくれたから私は教師を頑張れた…だから、せめて今夜は楽しんで、希望君に想いを届けないとね」


─なんと、生野さんが自分のせいで皆に迷惑を掛けていると悩んでるのを気に掛け、今夜のことを思い出に残して、彼に安心してもらうため─と話したのだ。

─そして私達は、彼に希望を届ける為にと誓い、煌星家に帰り、食事の準備をした。分担はこうだ─。おせちは舞姫さんと愛先生、すき焼きは私、蟹しゃぶや白米は院長だ。


「すき焼きの発祥は関西だから、如月君に任せたい…いいか?」

「はいっ!初めてのお正月楽しみやなぁ…絶対寝えへんでっ!」

「無茶はダメよ?あ、お雑煮なんだけど、夢玖ちゃんは丸餅よね?」

「せやね…関西のお雑煮は丸餅で、味は昆布だしの白味噌仕立てで…雑煮大根や金時人参が入ってます」

「よぉし!張り切って食べるぞー!」

「……家族って…こんな温いんやなぁ」

「いやぁ…うちの三女も天使だな…」


─初めて家族揃っての買い物や料理をし、夜の九時になると、店長達も煌星家に来た。さすがに鍋が足りなかったので、店長や福吉さん、釜淵さんが鍋やガスコンロを持ってきてくれた。

─総勢十五人といっただろうか─。初めて感じる人口密度に驚いた。


「いやぁ…流石に無料で飯を頂くのはあれなので……ホールケーキ買ってきました」

「俺はフォーティーワンのアイスケーキを…」

「僕はロールケーキを…」

「ありがとう。さぁ、今夜は皆で楽しんで、希望君に希望を繋げよう!ちなみに今日のすき焼きは…如月君に任せるっ!」

「おう…確かすき焼きとかお雑煮って関東と関西って違うんだよね?」

「関西のすき焼きかぁ…!」

「関西のすき焼き…めちゃくちゃ美味そう…!」

「夢玖ちゃん…テスト終わりのあの時、凄い泣いてたのに…今日は皆で鍋を囲んでるのか、凄い楽しそう」

「(うち…今楽しいんやなぁ…)」


─そして私は皆の前で関西風のすき焼きを振舞った。豊後牛や佐賀牛との相性が抜群だったのか、それとも皆と一緒に食べたのか、この世の中で一番美味しかった。そして皆で年が明けるのを待ち、解散した。


「あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします」

「こちらこそ…今年もよろしく」

「今年もよろしく。あけましておめでとう」

「……あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします」

「よし…初詣に行こう。開聖山神社でお御籤も引こう」


─年が明けた─。それと同時に生野さんと出会ってからの思い出が脳内で逆再生され、改めて生野さんとの繋がり、彼から教えてもらった沢山の普通─そして、生きる希望の大切さを実感した。

─そしてその足で開聖山神社に行き、皆で初詣をした。初めての作動はスマホで事前学習してたものの、実際に前に出ると難しかった。手が震えて賽銭を落としそうになった。

─それでも私はお祈りをした。どうか生野さんを救って下さいと。彼の余命はあと二ヶ月弱─それでも、どうか生野さんの命を延びますようにとひたすら強くお祈りをした。

─神社でお祈りをすると、その足でお守りもお御籤も買った。開けてみると大吉で、その願い事には、願い事は高確率で叶うでしょと、書いてあった。





……To be continued


閲覧頂きありがとうございました!

コメント、いいね、感想お待ちしております!

次回作もお楽しみに!では。


<※お知らせ>

少しずつ28話以降の内容を変更してます。

お楽しみに。

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