聖夜の仕業
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「廉命さん、ここの問題は…」
「ここはね、この法則を使うと…ほら、解けた」
「ほんまやっ!廉命さん、おおきに!」
「(………俺は今、凄い状況に囚われている…何故なら……)」
「(如月さんと、二人きりだからだっ!)」
─如月さん達が冬休みに入った。冬のイベントといえばクリスマスやバレンタインがメインではあるのだが、まさかのまさかで─こんな風になるとは思ってもいなかった。
─クリスマスの二日前、俺は夜海と仁愛に、冰山駅のフタバに呼び出された。用件はクリスマスプレゼントを渡したかったそうなのだが、この時は今の展開になるとは思いもしなかった。
『この前皆でクリパしたんだけど、廉命君にもプレゼントあげる』
『おう…ありがとう』
『ふふっ。開けてみてください』
『う、うん……(この二人がこの為だけに呼び出してるわけじゃないよなぁ?お……?)』
『コレ……これは…』
『まあ…廉命さんには夢玖ちゃんをプレゼントしたいんですけど…その補助として!』
『ぶふっ!』
─二人から小さな紙袋を渡され、開けてみると─まずはメンズ用の洗顔とヘアワックスが入っていて、アダルトグッズが入っていたのだ。あまりの衝撃に飲んでたホワイトモカを吹き出しそうになった。
『本当は夢玖ちゃんとのデートをプレゼントしても良かったんだけど、仁愛ちゃんがお泊まりにしちゃう?って提案してきてさぁ…丁度いいと思ったの!』
『うんうん!二人きりにすることで進展も知りたいし…この際に夢玖ちゃんは、廉命さんの男らしさも意識出来るかなって……お泊まりに…』
『何だと…?』
『ちなみにその大人のグッズはぁ…仁愛が選んだんです…♡』
『仁愛ちゃんが……マジか』
『ふふっ。男女二人でお泊まり…いいなぁ。仁愛も福吉さんとお泊まりした〜い♡』
『仁愛ちゃんも大胆だね……廉命君、いい報告待ってるよ』
「(いやいや無理やり二人きりの状況作りやがって…!)」
─それで今に至るわけだ。如月さんが俺のマンションに来て一時間─。もう理性が限界である。温かい飲み物、温かいこたつ─そして隣には、如月さん。これだけでオーバーヒートしそうだった。
─この後も何とか理性を抑え、如月さんに勉強を教えて三時間勉強した。少し休憩することになり、俺達は話をした。
「(如月さん…今日は一段と可愛い…髪の毛も巻いてて、艶っぽい唇……そして、赤く塗られたアイシャドウが色っぽい…)」
「廉命さんほんまに日本史凄いんやなぁ…」
「ま、まあね……(目のやり場に困る!顔じゃなくてええと…確か胸元を見れ……ば?いや、なんて俺は馬鹿なんだっ!)」
「れ、廉命さんっ!どないしてん?」
「いや…その……(近い…キスしちゃいそう)」
─今日の如月さんは一段と可愛い。猫っ毛な黒髪を外巻きにして下ろしていて、全体的に艶っぽい化粧をしている。それに服装は、華奢な体を引き立たせるワンピース姿だった。
─しかしあまりにも距離が近くて、キスも出来そうな距離だった。それからまた勉強を再開し、気付けば夜の五時半になっていた。
─俺は一度席を立ち、台所に行って冷蔵庫の中身を確認した。しかし─手作りのカシスジャムしかなく、全体的にスッカラカンだった。それなら嫌でも食材を買いに行くしかないと思っていたところに如月さんも近くにいた。
「……ご飯、どないするんです?」
「あ、ええと…冷蔵庫ガラガラだし、流石に食材買いに行こうと思うんだけど、その……如月さんも行く?」
「ええんです!行きます!今日クリスマスやし、クリスマスっぽいもの作りません?」
「そうだね。よし、行こう」
「(廉命さん…めちゃくちゃ尻尾振っとる)」
─そして彼女も付いていくことになり、近くの丸紅に来た。その頃にはローストチキンやローストビーフ─そしてケーキの予約で売上が多く、いつも以上に客が多かった。
─流石にこの時間帯で、多くのものが既に売り切れていた。
「(ローストビーフも売り切れかよ…一から作るしかないのか…?でも俺…作ったことない…)」
「………どうせならピザとかケーキとか、一から作りません?」
「え?」
「………廉命さんとクリスマス過ごせるんやし、その…二人で食べたいからですよ…ほな、買わへんと!」
「(まあ…如月さんが楽しそうならいいか)」
─それぞれカゴに入れ、レジで会計して、丸紅を後にした。車に乗って帰ろうとすると─あるものが目に入った。大きなイルミネーションだった。その景色に雪が掛かり、冬の寒さを強調させた。去年はあまり雪が降らなかったのに、今年はかなり雪が降っていた。静かに、ただ白く降り積もっていた。
─雪が舞い、吐息も白く染まる。そして─手が触れそうで触れられなかった。初めてのイルミネーションに目を輝かせる如月を見て、気付けば口が動いていた。その後に隣を見ると、寒さのせいか如月さんは耳まで真っ赤にしていて、目も逸らしていた。
「わぁ…廉命さん見てや!イルミネーション…あるで」
「…本当だ。綺麗だ」
「これが……ホワイトクリスマス…」
「(……綺麗なのは、君だけどね)」
「見てや〜!雪も綺麗…」
「如月さんが一番綺麗だよ」
「えっ…?」
─そして家に帰り、早速夕飯作りが始まった。まずはローストビーフ用の湯を沸かし、強火で両面を焼き、ジップロックに入れて空気を抜き、湯煎でそのまま放置。これなら俺も出来そうと思った。一方で如月さんはスポンジケーキを作っていた。希望さんに教えられたレシピの通り作っていて、オーブンで焼き上げていた。
「………ふふっ。いつもは舞姫さんと作るから、何だか新鮮」
「そっか…」
─スポンジケーキが焼き上がったあとはピザを作った。俺はトマトソースを煮詰めている間に、如月さんはピザ生地を作っていたのだが──生地を捏ねる手がとても可愛かった。その手はまるで、子猫が母猫のお腹をふみふみしてるのと同じだった。
「にゃ……っ…にゃ…」
「(ふみふみ…可愛い…)」
─大体二時間は掛かったと思うが、一通り料理が完成した。ローストビーフ丼にケーキ、そしてピザにサラダが出来上がった。
「(如月さん、めちゃくちゃ手際良かったなぁ……うわぁ嫁にしてぇっ!てか!自然に共同作業しちまったよ…!)」
「廉命さん…は飲み物何にするん?」
「俺は炭酸水にカシスシロップ割って飲むけど、如月さんは…?」
「私もそれにします……てか廉命さん、お酒飲まないんです?」
「飲まないよ。俺こう見えて酒にめちゃくちゃ弱いからさ…」
「以外です…大人になったら夜海ちゃんぐらい飲むのが正解なんかなって思ってました」
「あいつの飲酒量は異常だから…まあ、冷めないうちに食おうよ」
「はい」
─如月さんの手際もものすごく良かったものの、自然と共同作業してることに後で気付き、恥ずかしくなってしまった。
─恥ずかしさを誤魔化すように料理に食いつくが、とても美味かった。愛する人と作る料理は、こんなに美味いのだろうか。
「美味……如月さん、料理上手なんだね」
「…まあ。お、おおきに…」
「……ケーキもフルーツ色々入ってる。ほら」
「ん。うみゃ〜!」
「(か、可愛……てか俺自然に関節キスさせちゃった…!恥ず…っ!)」
「ん〜!廉命さんのケーキ、キウイ入っとる…!私のは苺…食べや」
「っ!(食べさせられた……可愛い…っ!)」
「ふふっ。ローストビーフやケーキに合わせて作ったカシスのソースやカシスのジャム…ほんまに美味いなぁ…んにゃ〜!」
「…もっとゆっくり食べなよ」
─食事に夢中になっている如月さんに見惚れていた。彼女の笑顔を見る度に思う─俺はこの笑顔を守らなくてはならないと。
─ガツガツと料理を頬張ってる如月さんに見て気付いた。口元にケーキのクリームが付いてることを─指摘すればいい話だったのに、体が勝手に動いて、指で如月さんの口元に付いたクリームを拭っていた。
「如月さん」
「にゃ…?」
「クリーム、付いてる」
「……あ、おおきに…気付かんかったです…美味しくてつい…」
「いや、いいんだ(何してんだ俺はっ!手も繋いだことないのにっ!触れちゃったけどやっぱり……)」
─気付けば如月さんの口元に触れていた。心では紳士な男を演じるつもりだったものの、体は正直だ。だって、無意識に如月さんに触れていたから。もしそうなら─俺が如月さんに触れたいと、ずっと思っていたのかもしれない─。
─彼女の口元は、白い肌でもちもちしていた。その白に、艶やかな黒髪に、オッドアイに、塗られた口紅が映えていた。
─飯を食べ終わり、俺は風呂を沸かし、如月さんを風呂へと案内した。彼女が湯に浸かってる間に俺は皿洗いをしていた。夜になったということは─とうとうあれの出番ってことなのだろうか。
─いや、彼女はまだ十八歳で、高校を卒業したばかりだ。でも…いつか使いたい。
「今日の如月さん……凄く楽しそうだったなぁ」
「………今の彼女はお風呂…着替えも持ってきてる……あれ?」
「(如月さんが俺ん家の風呂に…ってかシャンプーやボディソープとか……俺の使ってる…てか今日一緒に飯作ったよなぁ?同棲してるみたいじゃねぇか…!)」
「俺は…如月さんに…そんな趣味などないっ!これはケジメだ…筋トレせねば…っ!」
─何となく彼女が湯船に浸かったり、体を洗う姿を想像してしまい、妄想でフリーズしてしまった。
「お風呂…廉命さんが使うてるシャンプーもリンスも、ボディソープも…入浴剤もベリー系の香り……ほんまにベリー好きなんやなぁ…」
「……これが、男の人の家、なんやなぁ…」
「ふう…あ、下着も着替えも忘れてもうたっ!」
─大体三十分くらいは経過しただろうか。その頃には腹筋百回、背筋八十回、そして、腕立て伏せ百回が終わろうとしていた。
─そう。これは罰だ──如月さんという愛しい人で官能的な妄想をしていたことに対しての罰だ。如月さんを守る男としてら乱れる彼女を妄想しては、罰として筋トレをするようにしていた。
─しかし、彼女が洗面所から慌てて飛び出してきたので、何事かと思って見ると、裸体にバスタオルを巻いた如月さんがいたのだ。男にその姿を見せたらどうなるか、分かってるはずなのに、彼女は分かっていない──。
─でも、遅かった。何故なら──
「ふう…着替え着替え…どこに…」
「え、如月さんっ?」
「あ……着替え洗面所に持って行くん忘れ……」
「如月さ……」
「「………」」
「……見たやろ?」
「いや…その……ええと、答えはCMの後!(俺は何を見せられてるんだ…っ!)」
「〜!廉命さんの変態っ!」
─如月さんの裸体に巻いてたバスタオルが緩み、床に落ちた─と思ったら、如月さんが急いで巻き直し、肝心なところは見えなかったが──小柄な体からは想像出来ないぐらい、胸が豊満だった。
─当然如月さんからはビンタされ、気付けば俺は風呂に入っていた。
「デカかったなぁ……」
「(…谷間も出来てたし、デコルテも綺麗だった…)」
「でもお風呂上がりの姿も…可愛い…」
─風呂から上がり、ドライヤーで髪を乾かし、リビングに戻ると、如月さんはソファで眠っていた。
「如月さん……こたつで丸くなって寝てる…」
「……ゴロゴロ…」
「猫か……ここは俺がソファで寝て、如月さんにはベッドで寝てもらうしか……ごめんね如月さん、ベッドに移すよ」
「んん…にゃあ……」
─俺は如月さんをベッドに移し、ソファで寝ようとしていた。しかし途中で如月さんがくしゃみをしたり、寒そうにしていたので、仕方なく俺もベッドに入り、如月さんを抱えるように、眠った。
─この日をプレゼントしてくれた夜海や仁愛には感謝しかない。元はといえば希望さんが、如月さんと会わせてくれたことから、この恋は始まった。
─そういえば、生野さんにも渡すクリスマスプレゼントがあったことを思い出し、如月さんを抱き締めながら寝ていた。彼女の体温が、心の中まで温めていく─。
─すっかり夢の中にいたのか、如月さんの寝言は聞こえなかった。
「廉命さん……大…好、き…」
─翌朝、俺は彼女の寝顔を見て────
……To be continued
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