呑もうよ
この度は閲覧頂きましてありがとうございます!
─今夜も、私は呑む。
「ぷはぁ……やっぱビールだよねぇ」
「夜海ちゃん…今日は宅飲みだからいいけど、居酒屋だと私責任取れないからね?」
「えぇ…ほら、愛先生も」
「私そこまでお酒に強くないわよ?」
「ほらほらー。とりあえず唐揚げと餃子と、枝豆と……やっぱり愛先生と舞姫さんの手料理美味しいっ!」
「ありがと。それにしても、缶ビール五本飲んだのに全然酔わないのね」
「あとワインにハイボール、ジントニックにカシオレ、発泡酒に焼酎、ウイスキーも…」
─今夜は愛先生の住むマンションで、舞姫さんと空亜ちゃんと呑んでいる。
─本来なら夢玖ちゃんや仁愛ちゃん、凪優ちゃんも誘いたかったけど、年齢的にアウトで誘うのも申し訳ないと思い、やめた。
「愛先生…いいお嫁さんになれますよっ!」
「やめてよ…即席なんだから」
「そういえばお姉ちゃん……あれから進展してる?」
「あっ!雷磨先輩とはどうなんですか〜?」
「別に…何もないわよ……っ!」
「そういえばこの前、愛さんがバイト先に来て先輩と喋ってましたよね…めちゃくちゃいい雰囲気でしたよ?」
─愛先生と舞姫さんが作ってくれた唐揚げや即席のおつまみ、枝豆を片手に酒を喉に流し込んでいく。これがまた至高の時。
─私はどれだけ呑んでも酔わない。なんなら二日酔いという言葉を知らない。
─空亜ちゃんはチャミスル、愛先生は微量のアルコールが含まれた、ほぼジュースともいえる酒、舞姫さんもそれを飲んでいて、私はウイスキーやワイン、ジントニック、焼酎などとにかく強い酒ばかり飲んでいる。
「夜海ちゃん、お水も飲んでね」
「いや、べ……別に……あの人とは何もないわよ…………でも、今度二人で飲む約束はしたわ」
「「「えっ!」」」
「色々話したいから二人で飲もうって…聞かなくて…その……ヒック」
「愛先生もう酔ってる〜。顔真っ赤で可愛い」
「それで、何時からなの?どこのお店?」
「教えるわけないでしょっ!」
─ゼロに近いアルコールの量にも関わらず、愛先生は酔ってしまい、少し頬が赤く染まっていた。
─それに、今度─雷磨さんと二人で飲みに行く約束をしたと聞いた。それを聞いて何かを閃いた。
「服装はどんな感じにするんですかっ!」
「それは……こういうのかしら?」
「いつものニットじゃん……せっかくのデートなんだから、もっと可愛い服にしなよ…」
「ちょっと!クローゼットゴソゴソしないのっ!」
「愛さんの服……凄いいい匂いするし、持ってる服皆可愛い」
「居酒屋ということは…夜なんでしょ?どれどれ……あ、あった!このオフショル…凄くいいと思う!」
「ええ……下は長めのスカートにスリット入ってるのがいいですね!」
─後から聞いた話によると、その飲みは仕事終わりの夜に行くらしい。
─なので、それに合った服を探した結果─淡いピンクのオフショルダーのニットに白くてスリットの入った白いロングスカートに決まった。
─それらを愛先生が着ているだけで、どれほど周りの男は彼女に釘付けになるのだろう。
「確かこの服は…舞姫と色違いで買ったものね…これ、舞姫と双子コーデした時の写真」
「うっ…………尊死…」
「空亜ちゃんっ!」
「尊過ぎて……空からお迎えが…っ!」
「ちょっと!帰ってきなさいっ!」
「空亜ちゃん〜?」
「はっ………ま、待ち合わせはどんな感じにするんですか?」
「そうね……雷磨さんが車で迎えに来るみたいなの…あの人もそんなにお酒飲まないって言ってたし」
─愛先生が舞姫さんとの双子コーデの写真をスマホで見せてきたが、あまりにも可愛過ぎて、破壊力があった。それにより、空亜ちゃんが尊死しそうになったが、私には彼女の元に天使が見えたような気がした。
─何とか彼女を現実に戻し、話は戻った。
─結局、その日はその飲みの作戦を立てたのであった。次の日の学校にて───
――――――――――
「(愛先生、緊張してるかな〜)」
「…夜海ちゃん、なんか楽しそうやね」
「酒臭っ…昨日お酒飲んだからじゃない?仁愛だったら二日酔いになるもん…」
「おはよう…皆……ふわぁ」
「愛先生…って、今日も髪下ろしとるんやね」
「うーん…髪型が決まらなくて……」
「髪型…?あ、先生もしかしてデート?」
「実はね…そうなのよ。仕事終わったら、雷磨さんと二人で飲みに行くの」
─愛先生は髪を下ろした状態で出勤していた。この時の彼女の服装はいつもの服装ではあったが、今日の仕事が終わったら帰宅してから例の服に着替えたり、ヘアセットや化粧直しもするらしい。
─夢玖ちゃんや仁愛ちゃんも、愛先生の髪や肌も、いつもより艶々でいい匂いがしたのか、事情を聞くと、今夜のことについて目を丸くさせていた。
「ほんまなんっ!だから最近の雷磨さん……変やったのか……愛先生の教え子ってこともあって、私によく愛先生のこと聞いてたで」
「愛先生〜、すっごく可愛い…」
「愛先生、どれどれ……」
「ちょっ……」
─仁愛ちゃんや夢玖ちゃんがその事に驚いて愛先生に問い詰めると、彼女は少し頬を赤く染めて、少し焦っていた。
─それで私は気になることがあり、周りを確認してから、愛先生の服の首元をチラッと捲った。
「勝負下着じゃないんだ……」
「なんの事よっ!勝負下着……一度着たことあるけど、胸がキツくてダメだったわ」
「ふふっ。愛先生、スクラブもヘアマスクもネイルも全部やってたんですよね!」
「そうよ…だって、なんか……変な気持ちじゃない?」
「モジモジしてる〜!めちゃくちゃ可愛いっ!」
「とりあえず、メイクは少し変えて…髪の毛は希望君にやってもらおうかしら…舞姫には話を通してもらってるし」
─勝負下着ではなく、通常の下着だった。
─彼女曰く、勝負下着を着た時はあったものの、どうしてもバストがキツくて諦めたらしい。確かに動く度に揺れてるそれは───
「では……教科書開いて…今日は不定詞やるわよ」
「愛先生〜、今日なんか変だよ〜?」
「あ、ええと……」
「デート、絶対デートじゃんっ!なるほど…今日の下着は水色かぁ…てかまた胸大きくなった?」
「あっ…ダメ……」
「可愛いなぁ…俺らとデートしようよ」
─思っていた以上に豊満で、とても暖かい。
─いつもの授業が始まり、愛先生は教科書を開き、今日は少し挙動不審になっていた。
─それに気付いた男子生徒が席を立ち愛先生を囲んだことで、彼女は少し小さくなっていた。
「ダメよ。約束があるんだから」
「俺達のアイドルじゃん。彼氏いなくて寂しくないの?担任なのに色気出していいの?」
「……………」
「違うよ愛先生…俺らと飯行った方が楽しいからさ…ねぇいいで「いい加減にしなさいっ!」
─毎日見て思う。愛先生は男から、都合のいい女だと。
─愛先生は、ツンデレな一面もあり、誰よりも妹思いで、すごく可愛くて───何よりもスタイルが良く、胸がすごい大きい。
─この前、彼女の部屋に泊まりに行った時に、こっそりと愛先生のブラを見てみたが、そのカップ数はなんと──Jカップだった。
─その大きさと顔の可愛さを見れば─男は皆猿と化す。
─私より二個下とはいえ、あまりにも幼稚で何よりも──幼な過ぎる。見てられなかったのか、夢玖ちゃんは席を立ち、男子生徒達に抗議した。
「もうやめへん…?やってること、あまりにも幼稚やで?」
「んだとチビっ!」
「受験やのに…愛先生、こんなん気にせんで授業を……っ!」
─すると彼らは逆ギレし、夢玖ちゃんの頬を叩き落とした。
「ん……」
「あなた達、いい加減にしてっ!もうあなた達のクラスの担任、辞めるわっ!」
「ちょっ…!愛先生っ!」
─男子生徒達は全く悪びれることなく、むしろ夢玖ちゃんや愛先生を罵倒していた。
─そこで愛先生の中で、プツンと何かが切れたことで、彼女は怒鳴ってしまい、教室から飛び出してしまった。
─自動的に授業は止まり、私と夢玖ちゃんと仁愛ちゃんは愛先生を追いかけた。
「ぐすっ……!ヒック…雷磨さん、助けて…」
「(勢いで…あの子達の担任辞めるって…言っちゃった……あの子達、気持ち悪かった……雷磨さん……助けて……っ!震える指でスマホを見て、でも掛けられない…)」
「……愛先生?落ち着いた?」
「………もうあなた達の担任は辞めると言ったはずよ?」
「そんなこと言わへんの…あ、もしもし院長?」
─愛先生は学校の産進棟のトイレの個室に駆け込み、凄い泣いていた。
─これはきっと、毎日生徒のことを考え、教師としてのプレッシャーと疲労、ストレスが溜まって、限界が来たのだろう。
─迷わず私達は愛先生が入ってるであろうトイレの個室のドアをノックし、彼女を無理やり人気のないところに連れた。
─いつも目の下にクマがあるのに、今日は目の周りは赤い。私達は愛先生を抱き締めたことで、彼女は少し落ち着いた。
「……実はさっき、過去の彼氏達のこと思い出して」
「彼氏……?」
「………私、今まで付き合ってた彼氏全員に…体だけ求められて、別れたのよ」
「え……っ?」
「ヤリ捨てよ…だから彼氏は作らないようにしてたの…その……ベッドに横たわる度に怖かったのよ…」
「愛先生……院長…?聞こえてますー?」
─なんと、先程の男子生徒達によるセクハラ発言で、過去の彼氏達を思い出してしまったらしい。それは思い出というよりはフラッシュバックの方で、過去の彼氏は皆愛先生をヤリ捨てしたらしい。
─それを察した夢玖ちゃんは、スマホで誰かに電話を掛けたようで、その声の正体は院長だった。
<なんだ如月君……とりあえず、愛は大丈夫なのか?>
「お父さん…大丈夫…よっ……ぐすっ!」
<私達に隠れて無理をして、隠れて泣いてるのは子どもの時から変わってないな……さては、男子生徒達がセクハラ発言をするんだろう?>
「えぇ……それで、過去の彼氏達思い出して…」
<娘をヤリ捨てして、余裕で娘を傷付ける男など要らないぞ…それより、今夜は雷磨君と約束があるんだろ?大丈夫なのか?>
「夢玖ちゃん……なんで……?」
「そりゃあ…この目で読み取ったからや。愛先生…雷磨さんに…よしよししてもらってください」
「………夢玖ちゃん…ぐすっ!」
「にゃーもうっ!猫吸い…して、落ち着こか?」
─夢玖ちゃんは、愛先生が男子生徒達に囲まれてる時点で隠れてスマホで院長に連絡してたらしく、院長も事情を把握済みだった。そして何より─院長は、次の診察まで時間があるらしく─それが幸いしていた。
─すると夢玖ちゃんは、愛先生の頭を─自身の胸に抱き寄せた。十分に膨らんだ胸に、愛先生の顔が埋まり、暫くその状態が続くと、愛先生はやっと落ち着いた。
「愛先生〜、目の周り真っ赤やで?」
「いつもは目の下にクマがあるのに……院長、わざわざありがとうございます」
<いや、いいんだ。娘の安全を見届けるのが父親として当然だからな………影食君、松寺君、如月君…これからも、娘をよろしく頼む>
─その後、皆で教室に戻り、愛先生は先ほどのことを謝罪した。
─新米の教師でも、クラスを受け持つのは難しい。いつもなら生徒指導と口癖を言うが、その日は言わなかった。
「先ほどは……ごめんなさい。ついカッとなって …」
「愛先生、顔上げて」
「……ええ…」
――――――――――
「乾杯っ!」
「ぷはぁ!ビール美味しいっ!」
「相変わらず影食君はよく飲む。酔わないのか?」
「あー、この子全然酔わないみたいで…」
「飲みすぎには気を付けるんだな。というか…愛はまだなのか?」
「お父さん…お姉ちゃんももうすぐだし、お父さんも久しぶりの定時なんだから楽しもうよ」
「女三人と飲むからって俺達も呼んだのか…」
「そりゃあ寂しくてな……喫煙所もあるし」
「それはそうですけど……あ、福吉さんいない…」
─冰山駅前のイタリアンバーにて。
─ついに、愛先生と雷磨さんの飲みに行く約束がきた。店は舞姫さんがその店を探し、席は離れて座って、二人の様子を見ている。
─位置としてはこうだ─。一番喫煙所近くの席に私達が座っていて、入口付近の席に愛先生や雷磨さんが座るという─。つまり遠くからでも仕切りの陰からでも見放題ということだ。
─空亜ちゃんに舞姫さん、福吉さん、盾澤店長、院長、そして私だ。本来なら男性陣は院長だけだったが、男一人じゃ寂しかったらしく、福吉さんも盾澤店長も呼んだらしい。
─まぁ、この二人は雷磨さんと関係が近いから、呼んでもおかしくはない。愛先生と彼が来る前に席に座り、乾杯をした。
「にしても雷磨君……よく愛の好みを考えてこの店を選んだものだ」
「愛ちゃん、お洒落なイタリアンな居酒屋が好きなんだ。雷磨がガチガチに固まるのが分かる」
「店長、お酒飲まないんですか?」
「飲まないよ。味は好みだけどたんぱく質ゼロだし、筋肉に悪いし……プロテインないかな」
「あるわけないだろ。愛ちゃん達はまだ?」
「店長…筋肉の話ばっかりですね…」
「(空亜ちゃん…双眼鏡持ってるんだ…)」
「あ、今目が合った!尊……ぐへへ」
「師茶鍋…さん?」
─空亜ちゃんが店長に、お酒は飲まないのかを聞くと店長は飲まないのとその理由について話した。確かに、アルコールには筋肉の成長を妨げてしまう効果があるから、彼には合わない。
─暫く談笑していると、愛先生と雷磨さんが店に入ってきた。
「ここ、は、初めてなんですよね」
「わぁ…私の好みに近いかも……」
「ふふっ。寒いので中に入りましょう」
─ゆるっとした淡いピンク色のオフショルダーのニット、スリットの入った白いロングスカート─愛先生の身を包んでいるのは─ラベンダー色のロングコートだった。それに特別な夜を感じさせる紺色とシルバーのネイル、そして髪型も違っていた。
─店員にテーブルを案内され、座るのだが、雷磨さんの椅子を引く手がぎこちなく、水を頼む時にグラスを落としそうになっていた─。
「(………いや愛さん……めっちゃくちゃ可愛いっ!)」
「………」
「ご予約の二名様ですね!こちらにどうぞ!」
「あ、愛さん…先に座ってください。お仕事終わりでお疲れでしょ?」
「ありがとう。優しいのね」
「……今日は色々聞きますよ。僕でよければ」
「I've worked so hard for this day...」
「(……なんて言ったんだろう。でも…愛さん、耳まで真っ赤だ…しかも笑顔…可愛いなぁ)」
「…この日の為に色々頑張ったって意味よ…もう」
─今宵は、酒を片手に─身近な人の甘酸っぱい夜をツマミにしていくのであった────。
─しかしその夜の行方は、まだ誰も知らない。
……To be continued
閲覧頂きありがとうございました!
コメント、いいね、感想お待ちしております!
次回作もお楽しみに!では。




