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普通を失った俺が、世に希望を与えるまで。  作者: 速府左 めろ
<第一章>希望とは。〜集われた意図編〜
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進路希望調査

この度は閲覧頂きましてありがとうございます!

「普通を与えるほど、俺がいなくなった後の喪失は大きくなる……それでも、出会えてよかった。救えたと思えた。それだけで、十分だった」


─余命宣告から翌日─俺は一人ベッドで目を覚ました。起きた瞬間から天井を眺めているわけだが、思うことは一つ─。あと何日、この景色とお別れするのだろうか。そして─如月にはあと、どれだけの普通を教えられるのか。そして─如月が俺の現状を見てどう思うのか。不安で仕方なかった。

─それに一つ、心当たりがあった。如月が高校を卒業したら、何をするのかが。



――――――――――


「えー。今日は進路を決めていくために、パソコンで興味のある進路・職業について調べてもらいます」

「じゃあここの教師になって愛先生と…」

「静かに。それでは…始めて頂戴」


─二学期が始まった。夏の暑さはまだ続いていて、暑さに耐えるのに必死だった。この頃になると三年生の皆は進みたい進路に向けて準備をしていくのだが、私はまだ─自分のやりたいことが決まっていなかった。


「仁愛ちゃん決めたー?」

「うん…仁愛はカウンセラー」

「私もカウンセラー目指してるんだ。奇遇だね…夢玖ちゃんは?」

「えぇっ…その、実は私…進路について迷っとるんよ」

「公務員とか?」

「大学かな……国公立探しとるけど、やりたいことがあまりないんよ」

「うーん…」


─結局その授業だけでは将来のこととか分からず、帰りのホームルームで進路希望調査が渡された。どれだけ調べても、舞姫さんに相談しても、決まらず、提出期限が明日になっていた。何と─提出出来てないのは私だけらしく、焦ってしまった。


「夢玖ちゃん、進路希望調査出てないのあなただけだけど、何か迷ってるの?」

「実は大学考えてんけど、やりたいことがあやふやで…」

「そう。夜海ちゃんも仁愛ちゃんも福島大学に決まってるのよね……お父さんに相談した方がいいわね。今日お父さん早上がりだから、夕飯食べさせてもらいなさい。その方が話しやすいと思うわ」

「……うん」


─愛先生の提案により、その日は院長が早上がりのため、相談に乗ってくれるそうだったので、今日の放課後、院長が迎えに来てくれた。彼の車に乗り、彼の家に向かった。


「如月君、卒業後の進路に迷ってるらしいじゃないか」

「はい…」

「確かに、大学を出ることに越したことはないが……決めるのは私ではない…君次第なんだ。給料ややり甲斐だけに目を向けると失敗する…だから、よく考えて欲しいんだ」

「はぁ…」

「着いたぞ。とりあえず上がってくれ」

「お邪魔します……?」

「何故疑問形なんだ……?」


─ようやく到着し、彼の家に入った。二階建ての一軒家で、物凄く綺麗だった。ソファに座り、院長はお茶の準備をしに台所へと向かった。もてなされてる側としてただ座ってるのに申し訳なく、私は院長の手伝いをした。


「院長…私も手伝います」

「そうか……それならこの紅茶を運んでくれ」

「はい」


─紅茶を入れ、ケーキの箱をテーブルに置くと、院長がケーキの箱からあるものを取り出したが、それを見た瞬間、私は心が踊った。それは───私の大好きな銅島ロールだったからだ。


「銅島ロール…」

「あぁ。本当なら博多あまおうのチーズケーキにしたかったが、如月君がリラックスして話しやすいように、銅島ロールを取り寄せたんだ」

「おおきに…(院長とケーキ……似合っとるようなそうではないような……)」

「四十五のおじさんでも、甘いものは食いたくなるもんだ……如月君、皿を近付けてくれ」

「はい(しかも二切れ分…)」

「まあ私も食べたかったからな…早速本題に入るが…大学進学は決めてるものの、如月君はどれに迷ってるんだ?」


─そしてケーキを分け、そこから話は始まった。今後の進路をどうするか。仁愛や夜海が望んでる福島大学には─色んな学部がある。ざっくり言うと理工学に農学、人間発達文化学、人文社会学に分けられている。その学部から色んなコースがあるのだが、どれに進んでいいのか分からなかった。

─分からないと素直に答えてみる。すると院長の目つきが変わり、こう話してきた。生野さんが、再入院することになったことを。


「……分かりません」

「…そうか。本当はもう少し話すのを先延ばしにしたかったが、これは仕方ない……。如月君、実は希望君……再入院するようになったんだ」

「………え」


─正直夢であって欲しかった。生野さんが再入院─。数日前まで、彼は元気だったのに─そして、院長が二枚の写真を見せてきた。


「如月君、これを見ろ。これは…彼が倒れる直前まで持っていた写真だ…希望君の顔が血が垂れて乾いて見えなくなっている……つまり、舞姫を思って、そして君の笑顔を壊したくなくて、彼はずっと一人で我慢してたんだ…」

「嘘…やろ?」

「じゃなかったら今日ここには連れてこない…。しかし彼は言っていたんだ。如月君は、最高のスポーツトレーナーになれるってな…スポーツ大会の練習で分かってたらしい…」

「院長……ぐすっ!」

「医師も看護師も教師も…シューフィッターも…どの職業でも必ず辛いことはある。でもいつか…やって良かったと思える日が来るんだ。どうだ?」


─院長の見せる、写真には生野さんの顔だけ、血で滲んで見えなかった。生野さんから出た血が写真に垂れて固まって、まるで最初から存在していなかったかのように血で彼の顔が見えなかった。─それでも彼は─私に希望を託してくれた─。私なら最高のスポーツトレーナーになれると。その言葉で、私の進路は決まった。福島大学の人間発達文化学の、スポーツ健康科学コースに進むと。


「私、福島大学の…スポーツ健康科学コースに進みます……」

「そうか…分かった。彼には報告するよ。腹減っただろ…ケーキ食べて落ち着きなさい」


─進路希望調査も書き終え、生野さんの現状に驚きながら銅島ロールを食べた。久しぶりに味わった故郷の味─そして、生野さんが繋げてくれた希望に、私は涙が止まらなかった。院長は私を暖かく見守り、覚めた紅茶に何個もガムシロップを加えていた。


「院長…ガムシロップ入れすぎです…」

「私は酒以外甘々じゃないとダメなんだ…しかも銅島ロール、美味いな…」

「……にしても、生野さんって凄いですよね」

「あぁ…実は舞姫は……中学時代虐めに遭っていたんだ」

「えぇっ?」

「その時の私は大事な手術があって…中々家に帰れなくて、当時の舞姫に寄り添えなかった……でも希望君が舞姫を虐めから助けてくれた…だから今の舞姫がある。彼が…舞姫の笑顔を守ってるんだ」

「……希望を与えとったの、私だけやと思ってました」

「あの子は、希望を繋げる為に生まれてきたと言ってもいい……私は彼になら舞姫を任せられる自信がある」


─その後、色々話し──あっという間に夕飯になった。この日の献立は院長特製の、だんご汁ととり天、りゅうきゅうという海鮮丼だった。これは皆、院長の生まれである大分の料理らしい。私も何を思ったのか、院長を─義父を手伝った。


「如月君は料理するのか?」

「はいっ……舞姫さんと一緒に料理するんです。舞姫さんの料理めちゃ美味いです…特に茄子りょうりが」

「愛の作る中華も美味いぞ……まあ私は大分料理や九州の有名な料理しか作れんがな」

「私もたこ焼きとかお好み焼きくらいしか作れへんですよ…?」

「やはり地元の名物作れるのか…それだけは似てるな」

「はい…」


─まもなく夕飯は出来て、院長と食べた。さすが大分出身─本場の味がより重なって美味しい─。というよりも─義理の親になってくれた人と食べてるから心が暖かくなったからより一層美味しいと思ったのだろう。ご飯や皿洗いを済ませ、院長が風呂を沸かしてくれた。


「今日…如月君の着替えも持ってきてるから、今日は泊まってきなさい」

「ええんですか…?」

「何言ってるんだ?私達は義理の親子なんだ…娘なんだから、とことん甘えなさい」

「ありがとう…ございます」

「ちなみにだが、入浴剤は別府温泉のにしたから、ゆっくり浸かってきなさい」


─そしてその日は院長の家に泊まり、翌朝を迎えた。朝になると院長は既に起きていて新聞を読んでいた。


「おはようございます」

「おはよう…朝飯作るから顔洗ってうがいして着替えてきなさい」

「はい…ふわぁ…」


─私は院長に言われるまま顔を洗って歯磨きもし、制服にも着替えた。そしてソファに座り、朝食を食べた。一生懸命頬張る私を見て、院長はこう話し掛けた。


「如月君は美味そうに食うんだな。どうだ。家族と飯食った感想は…?」

「家族………」

「そう。私も愛も舞姫も…そして君も、煌星家の家族だ。私は…一人だった君に家族という存在をプレゼントしたかった…私は君の行動力に驚いたからな」

「……あの…家族、凄い温いです。今までずっと独りやったので。家族って温いんが普通なんですね」

「そうだ。ほら、おかわりもあるぞ」


─家族とご飯を食べた感想はどうかと聞いてきたのだ。幾ら院長が私を養子として引き取ったとはいえ、煌星家の邪魔者だと思っていたが、そうでなかった─むしろ私も、煌星家の一員だった。そして─こうして新たな家族でいられるのも、あの時生野さんが繋げてくれた希望のお陰だと思った。


「…如月さん聞いたよ。福島大学行くんだってね」

「はい。私は生野さんが繋いでくれた希望を、無駄にしたないんで…」

「そっか。実は俺も…福島大学受けようと思ってるんだ…スポーツ健康科学をね」

「…それって…もし受かったら、私達同級生ってことですよね…?」

「……はぁっ!俺はスポーツがやりたかったんだよっ!別に……べ、別に君と同じ大学に行きたいとかじゃないからっ!」

「分かっとります…お互い頑張りましょう」

「おう…ちなみに如月さん、分かんないとこあれば俺に聞いて……まあ別に一緒に勉強したいとかじゃねえけど…」


─愛先生に進路希望調査を提出すると、彼女は凄く喜んでいたが、仁愛や夜海も非常に喜んでいた。身近に同じ大学を目指す人がいるのだから。

─しかも、何と廉命さんも福島大学を受けるそうで、私と同じスポーツ健康科学科を受験するらしいとのことである。

─私は、生野さんが繋いでくれた希望を胸に、大学受験の準備を進めていくのだった。




……To be continued




――――――――――


<キャラクター紹介⑨>


名前 : 煌星(きらぼし) (まな)

血液型 : O型

誕生日 : 10月5日

身長、体重 : 160cm、51kg

MBTI : ENTJ

好きなもの : フルーツ(特に桃)、美容、英語、舞姫

嫌いなもの : わさび(辛過ぎて食べれないわよ!)

趣味・特技 : 英語、生徒指導、美容


聖陵情報高校の新米教師をしてる美人な22歳。

本来副担任になるはずが、元の担任が離任したため、夢玖のクラスの担任になる。英語を担当しており、大学時代はアメリカやイギリス、オーストラリアで留学をしていたため、TOEICは990点を一発で取る程英語力がずば抜けて強い。校則にも生徒にも厳しく、「生徒指導」が口癖で、新米教師ながら生徒指導室にも籍を置いている。舞姫の姉で、彼女と似てとても美人で豊満なバストの持ち主なため、男子生徒からのセクハラが日頃の悩み。夢玖を猫のように可愛がっている。


閲覧頂きありがとうございました!

コメント、いいね、感想お待ちしております!

次回作もお楽しみに!では。

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