自覚症状
この度は閲覧頂きましてありがとうございます!
「明後日、バイトの給料が出るのか…」
「ゲーム買おうと思うけど、他には…」
『うみゃ〜!こんな美味しいもん初めてや!』
「あの子に花でも…買おうかな……いや、俺はまだそんなんじゃ…」
「いいじゃん花っ!さては如月さんにプレゼントするんだ?」
「いや別に俺は………」
─如月さんと出会ってから二ヶ月が経過した。この頃の彼女は中間テストのため、一ヶ月ぐらい、アルバイトに入っていなかった。この前、アルバイトの給料が入った日、如月さんは希望さんや舞姫さん、院長にプレゼントを買っていた。
─俺も横で彼女を見て、何かを買ってあげたくなり、バイトの休憩中に如月さんに合う花を調べていた。冰山駅の花屋で買おうとしていたのだ。
「ふーん?何の花送るの?」
「……バラとか?」
「バラ……重過ぎるよ…」
「そういや飯買いに昼休憩に丸紅行ったけど、花売ってたよ」
「そういえば近くにダイヨーエイトあるじゃんっ!」
「そっか……よし決めた。明後日の昼休憩、花買います」
「なんか廉命、最近シャキッとしてるね。この前まで暗かったのに」
「恋をすると人って変わるんだな……そういえば廉命、お前最近ジムに通い始めたんだって?」
─如月さんに贈る花を決めていた際に、店長と福吉さんも休憩に入り、店長は俺の携帯を覗いては聞いてきた。彼女に何の花を贈るのか─俺は薔薇と答えたが、重過ぎると却下された。
─言葉に出来ない分、花で気持ちを伝えたく花言葉に合わせて花を探していたが、色んな花があり過ぎて迷っていた。しかし花選びに苦戦していると、福吉さんが最近俺がジムに通ってるだろと聞いてきたので、それに答えていた。
「そうなんだよ。なんか俺に体を鍛えさせて下さいっ!って土下座してきてね…試しにジム連れてきたら通ってたなんて…」
『お願いします。俺に筋肉の付け方教えて下さい』
『いきなりどうしたの』
『どうしても筋肉付けたいんすよ。お願いします』
『……仕方ないなぁ…ついてきて』
「って感じで聞かなくてね……まあジムを勧めたから俺からすれば嬉しいけど」
─そういえば俺は最近ジムに通ってるのだ。自分から盾澤店長に土下座して筋肉の付け方を教えて欲しいとお願いし、無理やりジムに連れてもらったのだが、気付けば一ヶ月近くは通っており、少しずつ筋肉も付いて、服もキツくなっていた。
「……お前が如月にどれだけ真剣なのか伝わってき過ぎるわ。てかお前…背伸びてね?」
「そういえば最近服キツいと思ってたんすよ…多分今、百九十はありますね」
「お前なぁ…容姿はめちゃくちゃ良いんだから、自信持てよ」
「……いや…別に俺はそんなんじゃ…っ!」
「甘いな廉命、男を見せろ。如月は恋を知らないはずだから、効果あると思うぞ」
─こうして、明後日に向けて準備を始めていった。この日の夜もジムに行き、体を鍛えていた。
鍛え終わり、鏡で自分の上半身を確かめていた。
「ふぅ……だいぶ体デカくなったな…肩周りや腹筋…背中も腕も筋肉付いてきたな……」
「花も決めたし……そうだ」
─そして、給料日当日がやってきた。花も無事に買えた─。あとは如月さんが来るのを待つだけなのだが─緊張のあまり、手が震えていた。
「落ち着け廉命……凪優ちゃんで練習したろ」
「そうですよ……夢玖に渡さないと意味がないですよ」
「わ、わ…わ、分かってるよ!」
「いつもの廉命じゃねぇっ!」
「まあまあ……お前なら大丈夫だから、な?」
─何とか仕事をし、如月さんが来る時間になった。タイムカードを押し、制服に身を包んだ如月さんは当たり前だが凄く可愛い──のだが、この日は違った。
「夢玖やっほー。あれ、今日何か雰囲気違うね」
「分かる〜?今日やっとテスト終わってな、午前中で学校終わってんから、夜海ちゃんや仁愛ちゃんに化粧してもらったんよ」
「へぇ…めちゃくちゃ可愛いっ!」
「いいじゃん如月……な、廉命」
「……こ、高校生が化粧とか……モテたいのかよっ!べ、別にめちゃくちゃ可愛いとか、似合ってるとか……全然思ってねぇからなっ!」
「廉命さん…?」
「あー…こいつ今日変だけど、気にすんな」
「(化粧してるだと……しかも髪の毛…ポニーテール…項が無防備だろうがっ!)」
─何と、化粧をしてたのだ。テスト最終日だったため、午前中に学校が終わり、皆で昼飯を食べた後に、夜海や仁愛が如月さんに化粧をしたのだとか。ちなみに愛さんにはバレず、生徒指導されることはなかったらしいが──。生野さんの指示により、彼女は売り場に行った。俺もついていった。生野さんと店長の指示で如月さんが上手く接客出来てるかを見守ってるのだ。しかし、この日はやっぱり違った。年齢関係なく男性客が多かったのだ。
「いらっしゃいませー」
「すみません…このシューズを探してるんですけど……」
「はいっ!このシューズはこちらに……」
「(あのジジイ…如月さんをやらしい目でっ!)」
「お姉さんは、どのシューズが好き?」
「私はその…こっちの方が好きですね…反発性もあるから疲れにくいですし」
「ほう…ならこれ貰うよ。ありがとねぇ」
「はいっ!おおきに」
「すみませんっ!あの……一目惚れしましたっ!これ、僕の連絡先ですっ!」
「…へっ?」
─しかも、如月さんに関わってる男性客は皆、如月さんをいやらしい目で見ていて、しかもナンパまでしてきたのだ。如月さんは当然困っていたが──更に危ないことが起きた。ナンパされてる如月さんの後ろに、またもやガタイの良い高校生がいて、如月さんの尻を触ろうとしていた。
─あまりにもムカつき、俺は先に動き、彼の腕を掴んだ。その時に、嗚呼─また彼女を守ってしまったと思った。そりゃそうだ。だって─好きな人を守るのは、男として当然なのだから。
「おい、彼女に触るな…」
「ひいっ!」
「俺はその…この子の胸に…ぐへへ」
「……お前ら…失せろ」
「廉命……さん?」
─またあの時みたいに、全力で睨み付け、俺はまた如月さんを守った。俺はまだ如月さんとまともに話せてないし連絡先も知らない─そもそも、彼女のことをまだまだ知らないでいるのに、コイツらは軽々しく如月さんをいやらしい目で見て、更には連絡先を交換しようとしている─。
─あまりにも腹が立ち、俺は彼らを全力で睨み付けた。すると彼らは逃げていき、シューズコーナーに平和が戻った。
「……あ、あわわ……」
「如月さん、大丈夫?」
「…は、はい……」
「俺の方が好きなのに…」
「えっ?なんて?」
「何でもないよ……てか接客のし方、良くなってきてるね」
「あ、おおきに…」
「(待って俺…今ボソッと言ってたかっ!馬鹿か俺はっ!てか、距離近い…っ!)」
─冷静になった時、近くに如月さんがいて、驚いてしまった。何だろう─如月さんが凄く可愛く見える─。いや、俺は如月さんを後輩として見ているだけで、異性として見ていないのに、胸がドキドキとうるさいのは何故だろう。気持ちが落ち着かず、トイレに駆け込んだ。
「クソ…あの野郎…よくも如月さんを…」
「さっきの大丈夫だったのか?防犯カメラに映ってたけど、高校生だったとはな…可哀想だけど院長に話しておくよ」
「あざっす……てか、なんで院長なんすか?」
「実はな…院長が如月を養子として引き取った…だからだよ」
「……そういえば院長言ってたっすね…」
「結婚の挨拶も、院長にしないとな」
「はぁっ!べ、別に…結婚なんか考えてないっすよ!」
「冗談だよ。今夜如月に花渡すんだろ?ついでに連絡先交換しろよ」
「別に俺はそんなんじゃ……」
「嘘つけ。まあ…とにかく如月に花を渡せ」
─用を足し気持ちを落ち着かせ、手を洗っていると生野さんもトイレに入ってきて、先ほどのことを聞いてきた。男子生徒が如月さんにナンパしたこと、胸や尻を触ろうとしたことが、許せなかった。
─そして間もなく店は閉店し、閉店作業も終礼も終わり、気持ちを切り替えた。その為に服を脱いで別の服に着替えてる時に─彼女に見られてしまった。
「(いよいよ来た…ダメだ心臓がうるさいっ!)」
「ふぅ…(とりあえず着替えて気持ち切り替えよう…)」
「凪優、忘れ物あるから待っとって……や?」
「「あ」」
「……ご、ごめん……っ!すぐ着るからっ!」
「(廉命さん……思ったより筋肉ムキムキやな)」
「(待ってフリーズしてる…早くっ!)」
「ごめん……如月さん。入っていいよ」
「はい…」
─まだまだ鍛え足りない、俺の上半身が。あまりにも気まずく、すぐに服を着て何事もなかったかのようにしたかった。急いで彼女はロッカーの荷物を取ったが、如月さんの横顔を見ると、チークのせいか暑いのか、頬が赤らんでいた。
─しかし俺は気付いた。今の休憩室は俺と如月さんしかおらず、今しかチャンスがないことに─。─一か八かだが、俺は勇気を出した。
「如月さん……その、あのね…」
「えっ?」
「……やるよ、似合いそうだったから」
─どうか、三本のこの花に込めた─あなたを愛してますという意味が、彼女に知られませんようにと、願っていた。
「向日葵……舞姫さんが好きな花やあ!初めて花を見た……綺麗やなぁ…」
「(化粧してるあなたがねっ!)」
「勘違いするなよ…へ、べ…別に君を想ってこの花を選んだわけじゃ…ねぇからっ!」
「ふふっ…廉命さん、おおきに!」
「(この向日葵が枯れてる頃には…俺達どうなってるんだろう)」
「お、おう……あのさぁ……連絡先、交換しない?」
「えっ?(何か今日の廉命さん、変や。普通を知らへん私に花をくれたんや。また一つ、普通の思い出が増えた…でも、それを全部抱え切れる日は来るんやろうか……)」
─とりあえず花は渡せた。そして勢いに任せ、彼女とさに連絡先を交換して欲しいと伝えた。少し黙ったが、如月さんは喜んで交換してくれた─。
─三本の向日葵を見て、花言葉も知らずに向日葵のように笑う彼女を見て、俺の心の何処かで震えていた─。この笑顔を守りたいと思った一瞬が、永遠に続く保証なんて、何処にもないと思ったから。
今すぐガッツポーズしたかったが、そこは耐えた。従業員出入口から出ようとした時、店長や福吉さん、加堂さんや雷磨さん、凪優が俺を待っていた。
「おい…どうだった〜?」
「花、渡せました。あと連絡先交換もしました」
「よしっ!やれば出来るじゃんっ!」
「ふぅ…よくやった。よし俺の奢りでラーメン行くぞ」
「福吉さん太っ腹ー!廉命、良かったね」
「はいっ!」
─その後皆でラーメンを食べ、解散し、帰宅してシャワーと歯磨きを済ませ、携帯を見ると、夜海からメッセージが来ていた。
<廉命君…夢玖ちゃんと連絡先交換したの本当?>
「夜海からか……本当だよ」
<お花もプレゼントしたんだってー?生野さんから聞いたよー?>
「マジかあの人……」
<良かったね!後で連絡してみなよ!>
「なんでだよ…」
─何と、今日のことは生野さんが既に彼女にLINEで話していたのか、その確認のLINEらしい。確かに花を如月さんに贈ったのも、如月さんと連絡先交換したのも事実だったので、否定する理由もなかった。
─今夜は、如月さんのいい匂いを感じながら夜を明かしたのだ。
─翌朝、彼女から届いた写真。そこに映る向日葵は、まだ真っ直ぐに空を仰いでいた。
「守るって…こういうことなんだな…」
そう呟いた瞬間、胸の奥でようやく気づいた。——俺は、彼女が好きなんだ。
……To be continued
――――――――――
<キャラクター紹介⑦>
名前 : 目白 福吉
血液型 : B型
誕生日 : 10月10日
身長、体重 : 168cm、65kg
MBTI : INTJ
好きなもの : 煙草、メロンパン、仁愛、医療
嫌いなもの : 砂肝(見た目が無理。そもそも食べれる人の気持ちがわからん)
趣味・特技 : 煙草、手当、喫煙
某スポーツ用具店でメガネを担う、29歳。
医大を首席で卒業後、研修医をしていたものの、母が他界したり当時付き合ってた恋人とも破局し、鬱病だった過去を持つ。その為、研修医を休職しており、煌星を尊敬していて、彼の背中を見て今も医師を目指している。細身の割には大食いで、働くメンバーで最年長のため、加堂や希望を可愛がる一面も。鳳斗の補佐役兼ヘビースモーカーで、最近は一日に三箱以上の煙草を吸っている。夢玖を通じて仁愛といい感じになるが、実は仁愛だけが持っている秘密を、彼はまだ知らない…。
閲覧頂きありがとうございました!
コメント、いいね、感想お待ちしております!
次回作もお楽しみに!では。




