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旅立ちの日に



 数年後、ラングドシャ王城広場にて。



 口元におしゃぶりを咥えた海のように澄み渡る青色の瞳に、アメジストのような深みのある紫色の長髪を風になびかせる女性。


 そして、その身に子を宿したラングドシャ王国王女が会話をしていた。


「もう行くのですか?」


「うん、行くよ! まだ広い世界の一端しか見ていないしね」


「そう……かずっちなら、白銀の騎士団に無条件で入れるのですよ?」


「いやいや、私が入ったら無茶苦茶になっちゃうからね!」


「ふふっ、それはそうかもしれませんね! レベル80、ステータス8000オーバーでスキル数十持ちの貴女が入団してしまったら、コンラッド様が即位して、やーっとガイアス様の番になったのに色々と気の毒ですもの……」


「そうそう、私の目標は保有スキル【神化】を持つって言われる最強のエンシェントドラゴンだっけ? それを倒したら、戻ってきてここに永住するだからさ。興味ないの!」


「真理の山にいるドラゴンでしたっけ? あれ、神話で語られるほどの存在ですよ? いや……ですが、かずっちならすぐに討伐してしまいそうですね」


「ふふーん、最強ですから、私は!」


「うふふ♪ かずっち、腰に手を当てると子供っぽいよ! けどま、間違いなく最強でしょうし、そんな感じもらしいね」


「へへっ、らしいでしょ! てか、ルーミー口調が私につられているよ!」


「あ、ついつい昔を思い出してしまいました」


「思い出しちゃった? ま、私的にはそっちの口調の方が親しみやすくていいんだけどね」


「そうですか……でしたら、ちょっと頑張ってみます! えーっと! まじで、らしいです!」


「あははー! 顔真っ赤じゃん! 頑張らなくて大丈夫だよ! 今のルーミーはラングドシャ王国の王女様なんだからね!」


 「むぅ……なぜでしょうか……少し悔しい気持ちです。あ、そういえば、どれくらいでこの国へと戻ってくる予定なのですか?」


「うーん。どうだろう? ルーミーの子供が見たいから、数年後くらい? あ、あと! そん時はこの体じゃなくておしゃぶりだからよろしくね!」


「えっ!? おしゃぶりに戻るのですか? その体、スキル【擬態】と【分身】の応用でしたよね……確か、ずっとその状態でも過ごせるとか言ってませんでしたっけ?」


「うん、いれるけど戻るよ! 私には夢があるからね。ちゃーんとおしゃぶり生を満喫したらママ味溢れる神様にでもなるとか?」


「うふふ、また意味のわからないことをいうのですね。 ですが、叶えるような気もします」


「ふふっ、いいの! いいの! 叶えちゃうし、そう全ては――」


「Don't Think. Feel! ですものね!」


「やば、お株取られちゃった!」


「うふふ♪ とってやりました! では、お気をつけて! かずっち」


「ふふっ! うん、じゃあまたね! ルーミー」


「ぷひぃー、あるじさーん! お待ちをー!」


 おしゃぶりを咥えた女性をテクテクと追いかけるのは、執事服を着た精霊豚エレメンタルピッグだ。


 その蹄には、舟のような紙の容器にソースとマヨネーズ、青のりがたっぷりかけられた、たこ焼きも持っている。


「おお! たこ焼きー! ありがとー! みーとん!」


「いえいえです、ぷひぃ!」


 おしゃぶりを咥えた女性は、精霊豚を抱き締めたり、頬擦りしたりしている。


 王女は少し先で楽しそうにしている1人と1匹を見て微笑む。


 そして、「幸せそうで良かった……」とひとりでに呟いた。


 すると、ポンッ! というコミカルな音が響く。


《あるじー、さみしくない?》


 何も無い空間から出てきたのは、真っ白な毛色、澄み渡る空のような瞳を持つモフモフした存在である、精霊猫エレメンタルキャッツ1匹。


 精霊猫は、身軽な動きで地面に降り立つと王女を心配そうな目で見つめている。


「大丈夫ですよ! 私は1人じゃないんですから」


 王女はにっこりと笑みを浮かべて、精霊猫と自身の腹部を優しく撫でる。


 そして、小さくなっていく彼らに声を掛けることはなく、王城の方にクルリと方向を変えた。

 

 王女の視線の先には、自身が過ごしている部屋から、手を振る特徴的な白銀の髪でローブを纏った新国王がいた。


 その姿を見た王女は小さく「やっぱ推ししか勝たん」と呟き王城へと帰っていった。


 また、1人と1匹も何かを察してか振り返ることなく、熱々のたこ焼きを頬張りながら、王城をあとにした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 目標がドラゴンを倒して【神化】……和世さんはいったいどこまで強くなってしまうのでしょう……(*'ω'*) それでも、戻ってきたらシャルルさんとコンラッド様の子供におしゃぶりとして使ってもら…
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