表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編総まとめ【恋愛】

私は貴方を愛していた

作者: Rion

「あなたの病室で」「心底憎いといった表情で」「キスをした」という3点をテーマに短編練習をかねて、友達と120分で書き上げました。

最初に思いついた展開と書いている内に変わってしまった点もありますが、なんとか形にはなったかなと思います。


大雑把にですが血の表現はある為、念の為に残酷描写ありとさせて頂いております。


私は貴方が嫌い。


すやすや眠る幼く見える顔。


貴方越しに見える花瓶の花。


貴方も花も憎い。


だけど、離れられない。離れたくない。




好きだから。


そんな気持ちを胸に抱きながら、眠る貴方にキスをしたの・・・。





私には高校から付き合っている彼氏がいる。

3年生の時の文化祭、クラスの打ち上げのファミレスの帰り道で、皆から少し遅れて後ろにいた私達。


「なぁ、俺達さ付き合っちゃおうか?」


ロマンチックでも何でもない告白。だけど嬉しかった、私も好きだったから。

私の返事はもちろんOKだと伝えた。


「だよな!お前も俺のこと好きだと思った!」


サッカー少年らしく、爽やかで明るい笑顔を浮かべた人なつっこい彼。

自信はあったと笑うその姿は今でも記憶にある。

それに、私の反対側の手が強く握りしめすぎていたのか震えていたのも。


それからも順調に交際は続いた。

どんどん増えていく楽しい思い出、もちろんたくさんケンカもあったけど。


私達、きっとずっと一緒にいるんだろうな・・・。

そう思っていた。

貴方が傍にいない未来なんて想像できなかったから。



彼は県外の大学へ。私は地元で就職した。

社会人1年目は本当に忙しくて、余裕もなくて彼と会う時間は減ってしまった。

彼も本格的なサークルでサッカーを真剣にやっていたから、中々こちらに帰ってくることはなかった。


だけど連絡は取り合っていたし、たまにテレビ通話をしたりもして、ちゃんと恋人だった。

長期休みでもサッカーの練習で帰れない彼も年末やお盆では帰ってきてくれたから、その少ししか会えない時間が大切だったし、余計に好きだなと思った。


会社の同僚や先輩、友達からは


「彼氏県外の大学?それ絶対つづかないよ。私の友達なんてね・・・」」


とたくさんの別れた話を聞かされた。それでも私は別れるつもりなんてなかった。


もちろん不安はある、彼は素敵な人だから。

付き合った頃はまだ少しだけ私より高い位だった身長もグングン伸びた。

サッカーで鍛えられた体は、ごつくなく細身だけど筋肉もちゃんとある。

レギュラーに選ばれる位には運動もできる。


頭は少し悪い方、テストの度に苦い顔をしていた。

だけど、明るく誰にでも分け隔てない彼の性格はクラスの皆に好かれた。


大学にもなれば、可愛くて垢抜けてて、私よりもいい人なんてたくさんいる。

そんな人達と張り合える程私は可愛くない。



だけど、だけどね、貴方に愛されている自信だけはちゃんとあったの。


言葉を多く伝えてくれる貴方じゃない。

告白もちゃんと好きだとは言われていない。

だけど手をつなぐ度、抱きしめ合う度、キスをする度に愛を感じた。


初めて体を重ねた時、ずっと労ってくれた。

会社が辛くて泣き言をはいた私の話を親身に聞いてくれた。

誕生日のプレゼントはいつも、何気なく話した私が欲しかったモノ。


将来の話もたくさんした。

最初はアパートに2人で住んで、お金を貯めたら子供を産んで。

そしたら家を建てよう。ペットも飼いたいね。

そんな楽しい未来を2人で想像した。


そんな幸せばっかり願っていたからなのかな?

こんな風に貴方を嫌いになるなんて思わなかった。




大学を卒業して彼も地元に帰ってきて就職した。

私の1年目と同じように、日々の生活に一生懸命で忙しい彼。


だけど余裕ができて、彼に合わせられるようになった私。

だから2人で同棲を始めた。

家のことを私がやって、彼をサポートした。


「いつも色々やってもらってごめん。本当ありがとう、お前がいてくれて良かった。」


愛の言葉を口にするのは苦手な彼だけど、大事な時はちゃんと言ってくれる。


「そろそろ一緒に住まない?」

「親に挨拶行こうか。」

「お前の料理が1番好き。」

「俺が悪かった、ごめん。」

「おはよう。」

「ただいま。」

「ありがとう。」


貴方の全部が大好きだった。










あの日、部屋に帰るまでは。










仕事で遅くなると連絡したあの日、急激な天候の変化で大雨が降った。

上司が全員に帰れと言い、全員が帰宅することになった。


今から帰るね。

それだけ連絡を入れて電車に乗った。

既読が着かないから寝ちゃっているのかな?と思ってとりあえず急いで帰った。


傘もないから駅からは走って、びしょ濡れになりながら部屋に着いた。

寝ているだろうから、開いていないと思って鍵を取り出そうと鞄に手を入れたところで彼の声が聞こえた。


起きているの?なら開いてるかな?と、ドアノブに手を伸ばしたところで会話が聞こえた。

「もう帰って。」

「いやです!先輩が話を聞いてくれるまで帰りません!」

「はぁ。もうアイツも帰ってくるから、本当に帰って。」


え?なんで女の子の声がするの?


「彼女さんは関係ないです!私はまだ先輩といたいんです。」

「家まで押しかけてこないでくれ、迷惑だ。」

「勝手に家に来たのはすみません・・・。でもこの間の夜のお礼もしたかったですし・・・。」


夜のお礼ってなに・・・。

この間?先週の金曜の夜は帰ってくるのが遅かった。その時?

この声の女の子といたの?


私が混乱して止まっていると、ドアが反対側から開かれた。


「帰ってくれって言って・・・、由美?」


ドアを開けた彼と目が合う。見開かれたその顔はとても驚いている。


「帰って・・・ってどうしたんだ、その格好!風邪引く・・・」


私の姿に驚きつつ私に手を伸ばそうとした彼。だが後ろに体が引かれた。


「先輩!私、先輩が好きなんです。あの日の夜、先輩に慰めてもらったおかげで立ち直れたんです。この間みたいにまた私を愛して下さい。」


「は?何言って・・・」


「先輩の手って大きくて固くて、男の人・・・って感じがしてとっても安らぐんです。それに低い優しい声も全部好きなんです。」


彼の腕に絡みつく女の子。

彼が見せてくれた今年の入社式の写真にいた子だ。

可愛い子。

彼が以前好きだといった芸能人に似てるよねって話した女の子。


好き?愛してくれた?

男の人・・・?

理解できない。理解したくない。

浮気?


そんな言葉が頭をよぎる。


違う。

信じたい。

私だけを愛してるって言った。


聞きたいことが多すぎて頭が追いつかない。

そんな私から出た声は小さくて、浮気・・・?と聞くことしかできなかった。


「ちがっ!浮気な訳・・・」

「違います!先輩と私が恋人なんです。貴方の方が浮気なんです。」


私が浮気?

彼にとって私は浮気だったの?


その後も彼女が色々と言っていたけど耳に入らなくて、元からぬれていた顔が更に濡れた。

目から涙が止まらなくて。

もう彼の顔が見ていられなくてその場から走って逃げた。

「由美!!!」


足の速い彼、アパートの階段を下って、反対の道に出ようとしたところで手を捕まれた。


「待って、誤解なんだ。」


手を振り払おうとするが離れなくて泣きながら唇を噛みしめた。

すると彼は私を抱きしめた。


「聞いてくれ、彼女は会社の後輩で・・・」


聞きたくない!という思いで彼の肩を押すけど離れなくて、叫ぶように声を出そうとした瞬間、視界が光った。


なに?と思った瞬間、彼から突き飛ばされた。

道路に転がって、手のひらの痛みに顔をしかめながら、やっぱり私のこと・・・、と言おうと彼の方を振りかえると彼はいなくて、車がいた。


なにが起こったの?と言おうとして、アパートの上の階段から女の子の悲鳴が聞こえた。

その子が見る先を見ると真っ赤な水に倒れた彼がいた。


顎が震えて閉まらない口のまま、手で体を支えて真っ赤な水たまりに近づく。

その中央にいる彼。

その瞳は閉じられていて、口も動かない。


起きて?そう思って体をゆするけど動かない彼。

運転手だろうか?男の人が真っ青な顔で電話している。

事故で、人を轢いてしまって、血が。救急車を・・・


色んな単語が聞こえるけど理解したくない。

さっきまで彼は抱きしめてくれていたもの。

そんな訳ない。

彼が車に轢かれて、この真っ赤な水が血だなんて・・・




その後、彼は救急車で病院へ運ばれた。

幸い、命に別状はなかったが、まだ目覚めない彼。

そんな彼の病室に毎日私は通っている。


事故の現場を見てしまった後輩の女の子には謝られた。

あの時言ったことは嘘もあるが、色々と誤解させる為に言ったこと。

仕事のミスで落ちこんでいた所を会社のみんなで慰めてくれただけだったこと。

自分は告白して彼女がいる、と振られたこと。

泣きながら謝られた。


私はその時、許すとは言えなかった。

この子が嘘をつかなければ、あんなことにはならずに、彼は元気だったのに。

彼と私は今日も普通な1日を過ごしているはずだったのに。


彼の病室で毎日、そんなことを考えてしまう。





だけど、花瓶にいけた昨日の私が持ってきた花を見て、

鏡に映った自分の顔を見ると醜く歪んでいた。


私は私が憎い。

彼を信じ切れなかった自分が。

彼の話も聞かずににげた自分が。

それでも健気に彼を想う恋人のように毎日通う自分が。


だけどもう1度、彼と話したくて、彼に愛してもらいたくて。

だから私は今日も起きない貴方にキスをする。


物語のように・・・愛する人のキスで目覚めるのを願って。


ァンタジー感強めの話を思いつくことが多いので、あえて現実での恋愛で考えてみました。交通事故ってあるとはいうけど、ここまでの重傷は中々なくて現実感ないかな・・・とは思いますがご了承下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 後輩女を憎むのも分かるし、信じなかった自分を憎むのも分かるけど なんで彼氏を憎いとかこんなに嫌いになるなんて思わなかったとか言ってるの? すやすや眠る顔って書いてるから、彼氏じゃなくて自分…
[一言] 後日談があってほしいところです。ハッピーになってほしいと切に願う。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ